中国フライホイール蓄電技術の先駆者、新たに20億円の資金調達 EVの急速充電にも照準

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中国フライホイール蓄電技術の先駆者、新たに20億円の資金調達 EVの急速充電にも照準

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フライホイール蓄電システムの研究・開発を手がける中国企業「貝肯新能源(Beacon New Energy)」が、シリーズAで衆行資本(MultiGo Capital)から約1億元(約20億円)を調達した。資金はフライホイール蓄電設備の生産能力向上や活用シーンの拡大に用いられる。

2017年12月に設立された貝肯新能源は、フライホイール蓄電技術の開発や設備製造、プロジェクト実施、産業化に注力している。特に電力市場向けに大容量・高出力のフライホイール蓄電システムを製造し、次世代の電力系統を支える周波数調整ソリューションを提供する。

フライホイール蓄電システムは、充電時にはモーターでフライホイール(弾み車)を高速回転させて、電力を回転エネルギーとして保存し、発電時にはその回転エネルギーを使って発電機を回し電力を供給する。充放電のスピードが速く、長寿命で環境にもやさしい。化学反応を伴わないため、頻繁に充放電を繰り返しても電池性能の劣化はみられず、高出力の充放電が頻繁に必要とされる場面に最適な蓄電システムと言える。

フライホイール蓄電システム(画像提供:貝肯新能源)

貝肯新能源で会長補佐を務める王欣氏によると、フライホイール蓄電技術は海外市場で早くから活用されており、周波数調整などで電力品質を維持する「アンシラリーサービス」を提供する点で、他の蓄電技術よりも経済的メリットが大きいのだという。ただ、電力系統の周波数調整は技術的なハードルが高く、高速回転するフライホイールローターの安全性確保や温度制御、複数のシステムを連結した際の制御技術など解決すべき課題は多い。

貝肯新能源は、構造設計や材料選定、生産工程の刷新などを進め、20万時間(25年)の稼働に耐えるフライホイールローターの開発に成功した。また、真空液冷技術を採用することで、モーターに大電流が流れる際に発生する熱の排出を可能にした。

フライホイール蓄電システムで難しいのは蓄電容量の拡大だと、同社で投融資を統括する高鵬宇氏は話す。フライホイール蓄電を手がける海外企業のうち、周波数調整サービスの事業化を実現できたのは米Beacon PowerとカナダTemporal Powerの2社しかない。貝肯新能源は技術買収と特許ライセンス契約を通じて、この2社の成熟した技術やエンジニアリングの経験を取り入れてきた。その結果、スチール製ローターと炭素繊維複合材料ローターを利用した電力系統向け周波数調整技術を確立し、100%国産のフライホイール蓄電システムを実現した。

同社では現在、さまざまなシーンでアンシラリーサービスを提供できるよう、出力の異なる3タイプのフライホイール蓄電ユニットを展開している。

山西省のフライホイール蓄電施設の完成予想図(画像提供:貝肯新能源)

山西省長治市で建設中の電力系統用フライホイール蓄電施設にフライホイール蓄電システムを提供している。システムはすでに設置済みとのことで、完成すれば世界最大かつ中国初の独立した周波数調整用フライホイール蓄電施設となり、中国のフライホイール蓄電技術の大規模な商用化に弾みがつくことが期待できる。

中国で世界最大のフライホイール蓄電施設が建設中、送電網の安定化に期待

貝肯新能源は今後、フライホイール蓄電設備を製造するスマート生産ラインを1本増設し、中国各地の周波数調整用フライホイール蓄電施設での需要に対応していく。また、フライホイール蓄電の特性を生かして、電気自動車(EV)などの新エネルギー車(NEV)の急速充電など新たな市場の開拓も進めるという。

*2024年3月14日のレート(1元=約20円)で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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