中国で世界最大のフライホイール蓄電施設が建設中、送電網の安定化に期待

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中国、世界最大のフライホイール蓄電施設が建設中 送電網の安定化に期待

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リチウムイオン電池などの化学電池を利用した蓄電システムがますます注目を集めるなか、電気を物理エネルギーに変換して貯蔵する物理電池の分野でも産業への応用が進んでいる。

物理エネルギーを利用した「フライホイール蓄電システム」は、電力を高速回転体の運動エネルギーとして保存し、必要時にはフライホイール(弾み車)の回転数を制御することで電気エネルギーに変換して取り出せるようにしたものだ。

中国山西省長治市では、6月に中国初の電力系統用フライホイール蓄電施設プロジェクトが起工した。深圳能源集団(Shenzhen Energy Group)が中心となって出資しており、メインのフライホイール蓄電システムには先進的な蓄電技術を開発するスタートアップ「貝肯新能源(BC New Energy)」の製品が採用されている。

同プロジェクトは今年12月に稼働を始める予定で、山西省の送電網と連携し、電力網の需給バランスの調整などを行う。完成すれば中国初、また世界最大の独立したフライホイール蓄電施設となる。

貝肯新能源は2017年12月に設立され、電力市場向けに大容量フライホイール蓄電技術の開発、製造、プロジェクト実施、産業化を進めている。

フライホイール蓄電システムは充電時にモーターでフライホイールを高速回転させ、電気を物理エネルギーに変換して蓄える。そして放電時には回転数を落としてモーターを発電機に切り替え、物理エネルギーを電力に変換し、パワーコンディショナーを通じて外部に供給するという仕組みだ。

他の蓄電技術に比べ、フライホイール蓄電技術はエネルギー変換効率が高く、耐用年数が長いほか、充放電スピードが速く、過充電・過放電の危険がなく安全に運用できるなどの利点がある。一般的なフライホイール蓄電システムの充放電効率は80%以上で、磁気軸受を使用したシステムでは85%以上に達する。100万回以上の充放電が可能で、耐用年数は25年に上る。

フライホイール蓄電システム(画像は貝肯新能源)

貝肯新能源で会長補佐を務める王欣氏によると、フライホイール蓄電システムは急速充放電が可能な技術特性により、短時間の高出力や高速応答を必要とするシーンに適しているため、送電網の周波数制御の適役なのだという。

高効率で専門的なアンシラリーサービス(電力の品質を維持する電力系統運用サービス)を提供するフライホイール蓄電施設は、大規模な商用化を実現するまでは多額の投資が必要となる。とはいえ、フライホイール蓄電システムは25年連続で運用でき、セルの交換も不要なため、ライフサイクル全体で見たコストとしては周波数制御サービスの最適解と言える。現在フライホイール蓄電施設は中国国内のアンシラリーサービス市場での取引に参加しており、投資回収期間は5~7年を見込んでいる。

ただフライホイール蓄電システムはまだ新しい蓄電技術の部類に入る。中関村エネルギー貯蔵産業技術連盟(CNESA)によると、中国ですでに稼働している新型蓄電システムの設備容量13.1GWのうち、フライホイール蓄電はわずか0.1%に過ぎない。中国市場では大部分がテスト事業で、安定して運用できる製品は少なく、技術や性能の一部はさらなる改良が待たれる。

王欣氏の話では、貝肯新能源は中短期的には電力系統向け蓄電システムをメインに展開するものの、すでに第二世代のフライホイール蓄電装置とソリューションの研究開発にも着手しており、消費者向けの蓄電装置や電気料金の裁定取引などの分野にも事業を拡大して、成長の余地をさらに広げたいとしている。

(翻訳・畠中裕子)

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