VRを活用したデジタル療法、自閉症児のリハビリや評価に一役 早稲田大の中国留学生が創業

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精神障害のリハビリ・デジタル療法を手がける中国のスタートアップ企業「千丘智能(Qianqiu Intelligence)」はこのほど、睿資創投が主導するエンジェルラウンドで1000万元(約2億1000万円)規模の資金を調達した。資金は製品開発と市場開拓に充てられる。

一般的に自閉症と呼ばれる自閉スペクトラム症(ASD)は、原因が明確になっていない発達障害の1つで、対人関係の困難や強いこだわりが主な症状とされている。全国障害者聯合会と国家衛生健康委員会のデータによると、中国の自閉症の有病率は約1.4%、患者は1000万人以上で、うち未成年者が300万人を超えるという。

2021年に設立された千丘智能は、仮想現実(VR)技術を使って自閉症児に向けた事前診断からリハビリ、リハビリ後の評価に至る全プロセスのデジタル療法プログラムを提供している。創業者の侍淳博氏は日本の早稲田大学を卒業しており、自閉症リハビリで有名な教授に学んだ。同社は大学や病院と協力して、行動療法など既存の介入手法をベースにデジタル療法ソリューションを設計、すでに初期検証を終えると共にその知的財産権を取得し、関連する医療機器の登録も申請中だ。

現在の自閉症に対する治療は、日常生活をスムーズに送れるように、基本的な技能の習得や生活スキルのトレーニングを含むリハビリが中心となっている。特にシナリオ法は、文字や写真、映像を媒体として繰り返し説明することで、自閉症児が対応するシーンを理解し、スキルを習得するための重要な手法となっている。

しかし、このような従来の手法で自閉症児が実体験を積むことはまだ難しい。一方、実際の環境で学習やトレーニングをしたくても、時間、スペース、安全性など複数の要因による制限が大きい。これを踏まえて千丘智能は、VR機器や技術的アプローチによって具体的なシーンを再現することでリアルな体験を提供し、リハビリの簡易化と治療効果の向上を図った。

同社の治療では、まず国際的に認められている3つの尺度によって自閉症児の病状を評価し、データ分析結果に基づく適切なリハビリプログラムを提案する。治療プロセスにおいては、人間とコンピュータのやり取りを通じて、具体的なシーンの中で自閉症児の生活スキルを繰り返し訓練する。

日常の買い物を例にとると、子どもは没入型シミュレーションを通じて商品を探す、数を把握する、支払いをするといった買い物のプロセスを段階的に訓練すると共に、訓練を繰り返すことでスキルを強化できる。

同社は、フィードバックが可能なマルチモジュール知覚システムを開発した。自閉症児の訓練プロセスにおける目の動き、姿勢、脳波などの行動データを収集し、訓練の状況と観察、分析を組み合わせることで、自閉症の介入効果を評価しやすくする。また、例えば音楽によって自閉症児の感情をコントロールする能力を高めるといった機能訓練も主要な治療手法の1つで、同社でもこうした相互作用コンテンツの設計を進めている。

すでに中国の病院で臨床試験を実施しており、被験者は6カ月間のデジタル療法訓練を完了後、対人関係や自己管理、運動などにおいて改善が見られたという。

千丘智能は、リハビリ専門機関と家庭のどちらにも対応可能なプログラムを提供している。最初は医師やリハビリ担当者が主導し、その後は自閉症児の家族が機器を操作できるため、家庭での訓練コストも削減できる。すでに中国で多くの医療リハビリ機関に導入され、長期にわたって使用されているという。

*2024年3月17日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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