世界で台頭する中国の人型ロボット、大量生産で身近になる未来

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未来のロボットと言われると、まず想像するのは二足歩行して対話する人型ロボットかもしれない。これまでホンダのASIMOやボストン・ダイナミクスのPETMANなど様々な企業が人型ロボットをリリースして世を驚かせてきた。ここに中国企業が勢いよく参入し、近い将来には価格破壊を起こし、普及するかもしれない。その兆候が見えてきたので紹介しよう。

中国で人型ロボットといえばまず「UBTECH(優必選科技)」が挙げられる。2月にEVの「NIO」の工場内で同社の人型ロボット「Walker S」が、スムースな動きでドアロックやシートベルトやライトカバーの品質チェックを行う様子が紹介された。また中国が初の事例ではなく、米国ではBMWが米国サウスカロライナ州の工場におけるFigure AIの人型ロボット配備についてFigue AIと提携を結んだことを発表している。

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既にロボットアームなど多数の業務用ロボットが稼働する環境下で、人型ロボットがてちてちと歩いて作業する様子は、一見効率的な工場において非効率に見える。UBTECHの焦継超副社長氏は、工業製造のリソースは、単純なハンドリングや塗装などロボットアームや産業用ロボットができる作業が7割、ラベルの貼り付けや安全チェックや一部の物流など人型ロボットが担う作業が2割、管理職などどうしても人が必要な作業が1割になると分析している。

なぜ自動車工場でまずは人型ロボットかというと、自動車工場はあらゆる産業システムの中で最も標準化が進み、最も制御しやすい作業環境であり、干渉が最も少ない現場だからだ。言い換えれば人が行き交ったり、予想外の様々なシチュエーションが発生するわけではなく、雑音のない量産工場の中で作業を行うからこそ真っ先に導入された。例えば無人運転車についても公道よりも鉱山や港湾でいち早く実用化が進んでいるのと同じ話だ。

自動車工場内で人が荷物を運んでいたプロセスが人型ロボットに変わる。人型ロボットは二足歩行でなく、下が車輪で動くロボットかもしれない。人であれば荷物を落とすかもしれないし、落とさなくても繰り返しの作業で体が疲弊するし、作業が辛くて離職することもある。また少子高齢化が進む中で、将来的には採用難がより深刻になっていくなかで、モノづくりの現場では将来的に人型ロボットに置き換えたいというニーズがある。

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自動車工場をはじめとした工場内で少しずつ導入されれば人型ロボットは普及し、身近な存在になっていくかというと、高すぎる値段がネックとなる。現在販売されている人型ロボット製品は、まだコストが高すぎて大量生産には程遠いのだ。ロボットを小規模生産するある企業では、エンジニアが手作業で組み立てているところもあるという。様々なメーカーが人型ロボットを開発しては、高価格が原因で事業を断念したケースもある。 

中国企業も同じように下がらない価格から断念するしかないかというと、今ならそれを打ち破る方法が2つある。

ひとつは大きく「構成する基幹部品を安価な中国企業の製品で代替する」という方法だ。産業用ロボットのハードウェア機器の内訳を見ると、サーボ、減速機、コントローラーが占めるコストの割合が高く、総コストの70%を占めている。人型ロボットは産業用ロボットに比べて関節の自由度が高いことから、その割合はさらに高くなる。ロボットを構成する基幹部品を開発している中国企業は多数あり、世界市場における中国企業の合計シェアは、減速機では44%程度で年々上昇する一方、遊星減速機市場は外国企業が独占し中国企業の割合は少ないといった具合に、部品により大きく状況は異なるが、時間とともに中国産で賄えるようになる。さらに米国などとの摩擦により輸入が禁止される可能性もあり、部品を中国産で賄えるようにするというのは、達成しなくてはならない最重要課題であり、揃うように業界は動く。

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もうひとつのコスト削減の方法が、「AIを活用しハードウェアの不足をソフトウェアで補う」方法だ。昨今のAIの技術力の強化で、専用のハードウェアを利用せずともソフトウェアで実現できるようになった。例えば監視カメラが広く普及しているように中国の視認AIの技術力は高く、言語処理能力も大規模言語モデル(LLM)により大幅に改善され、これに本来かけていたハードウェアのコストを削減できるようになった。

2023年11月にはロボット産業の業界発展を目的とした業界聯盟「北京人型ロボット創新センター(北京人形機器人創新中心)」が立ち上がった。前述のUBTECHのほか、Xiaomi(小米)機器人や中国科学院自動化所などがメンバーだ。XiaomiといえばスマートフォンやEVに力を入れている一方、実は人型ロボットにも力を入れていて、先日の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議全国委員会会議)においては同社の雷軍CEOが中国のロボット産業発展に意見を出している。

また中国政府の情報産業部にあたる工業和信息化部も、2025年までに人型ロボットを構成する各基幹部品や技術について技術向上を目指す目標を発表した。となれば来年末までに中国企業が(もしかしたらXiaomiが)、まずはコストを抑えた工場作業用の人型ロボットをリリースしてくる可能性は高い。

(文:山谷剛史)

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