超精密3Dプリンターの「BMF」、中国発の技術力で世界をリード 日本でも活用広がる

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超精密3Dプリンターの「BMF」、中国発の技術力で世界をリード 日本でも活用広がる

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超精密3Dプリンターを開発する「摩方精密科技(BMF Precision Tech)」(以下、BMF)は、2016年に設立された中国の新興テクノロジー企業で、解像度2マイクロメートル(μm )の3Dプリンターを世界に先駆けて商品化し、日本市場へも進出している。

BMFの夏春光・最高技術責任者(CTO)は、オランダの露光装置大手ASMLで要職に就き多くの経験と技術を身に着けた。夏氏は2018年にASMLを去り、設立間もないBMFに共同創業者として加わった。それからわずか4カ月後、BMFは第1世代の3Dプリンターを発売。18年の売上高は2000万元(約4億4000万円)となり、超精密プリンターのリーディングカンパニーとしての地位を確立した。

「当時すでに多くの企業が3Dプリンターを手がけていた。私たちは、それらの企業のように既存の技術で低価格な製品を大量販売するのではなく、技術革新の道を選ぼうと考えた」と夏氏は振り返る。

BMFは3Dプリンター市場の空白に注目し、技術革新を進めることで急成長を遂げた。空白だった解像度1〜30μmの範囲に狙いを定め、独自開発した投影型マイクロ3D光造形技術を採用し、解像度2μmと10μmの超精密3Dプリンターを打ち出した。

解像度1〜20μmの3Dプリンターに関しては、BMFが世界市場を独占しつつある。世界でも25μmあるいは50μm以上の3Dプリンターを手がける企業は多いが、BMFは2μmという圧倒的な高解像度で加工公差±10μmの3D造形技術を開発し、産業の各分野から大きな注目を集めている。

BMFの投影型マイクロ3D光造形技術は、従来の3D造形では限界のあった精度の問題を解決したことで、精密部品の加工も可能にした。工業や科学研究など幅広い分野で活用でき、細胞培養チップや緑内障治療用インプラント、超薄型スマホのカメラ、さらには審美歯科治療のラミネートベニアで用いるセラミック製のシェルなども正確に造形できる。

同社はここ2年間で総額4億7000万元(約100億円)を調達しており、評価額は30億元(約660億円)を超えている。2024年1月には、中国の国内投資家専用の人民元建て市場(A株市場)への新規株式公開(IPO)計画を始動した。

独自技術で「中国製」への懸念を払拭

中国製の3Dプリンターが海外で普及するようになって久しいが、その多くは2000元(約4万4000円)以下の消費者向け製品だった。一方、BMFの超精密3Dプリンターは10万ドル(約1560万円)と高額だが、同社の事業拡大にはなんの影響もない。その唯一無二の独自技術は、中国製品に対する偏見を払拭した。

中国は長い間、日本製の精密加工装置を大量に輸入しており、中国製の精密加工装置を日本に輸出する例は極めて少なかった。そんななか、BMFは日本市場への参入を果たしただけでなく、日本法人も設立した。同社の主要顧客のうちの1社、コネクター大手のヒロセ電機の担当者は「最小部材サイズまで対応できる機種という意味ではBMFしか私たちの要件を満たせる装置はなかった。今まで不可能だったことが可能になったことが導入の決め手だった」と述べている。

BMFは2023年11月時点で、世界35カ国にある2000近くの科学研究機関や企業と提携。米ジョンソン・エンド・ジョンソンや米GEヘルスケアなど世界トップ10に入る医療機器メーカーのほか、世界トップ10に入るコネクターメーカーなども顧客に抱えている。中国事業と海外事業の比重はほぼ同じだという。現在、200人余りの従業員が世界に散らばり、中国の重慶、北京、上海、深圳、珠海のほか、東京、英ロンドン、米ボストン、独ミュンヘン、チリのサンティアゴで事業運営にあたっている。

今後は事業をさらに拡大し、3Dプリンターの販売だけでなく、プリントサービスや、3Dプリンターで制作した製品の販売も計画している。最新の事例はラミネートベニアで歯にかぶせるシェルで、厚みわずか40μmと従来の10分の1の薄さを実現し、患者の歯をほとんど削らず、エナメル質を最大限残すことに貢献する。

ラミネートベニア用のシェル(画像はBMF提供)

BMFの工場では、今も数台の3Dプリンターが続々とラミネートベニア用のシェルを生み出している。同社の次の展開に期待が高まる。

*2024年4月29日のレート(1元=約22円、1ドル=約156円)で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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