ファーウェイ、新たなスマートカー向けソリューションを発表 開発費6000億円超で黒字化間近か

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中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)はここ数年、技術提供の形で自動車メーカーとの協業を進めてきた。多くの自動車メーカーも、卓越したスマート化技術と豊富な実績を持つファーウェイの力を借りて、自社製品のスマート化レベルを引き上げようとしている。

ファーウェイは4月24日、スマートカー向けソリューションの新ブランド「乾崑(Qiankun)」を発表し、アップグレードした先進運転支援システム(ADAS)や車両制御システム、クラウドサービスなどを打ち出した。また、同社の独自OS(基本ソフト)「鴻蒙OS(HarmonyOS)」を搭載する次世代スマートコックピットのアップデートも発表され、音声で車載機器を操作できる「千悟エンジン」をはじめとする最新技術が紹介された。

ファーウェイは2019年に自動車事業群(BU)とスマートカー向けソリューション事業部門を設立し、これまでに開発費として300億元(約6000億円)以上を投じてきた。現在の開発チームは総勢7000人に上る。23年には、スマートカー向け部品300万セットを出荷し、提携する自動車メーカーの7車種に提供。サプライチェーンの上流から下流まで、提携企業は300社を突破した。

巨額の開発費に裏打ちされた技術的優位性を生かして、ファーウェイは複数の自動車メーカーと提携しており、自動車中堅の賽力斯集団(SERES)と共同運営する電気自動車(EV)ブランド「問界(AITO)」や、自動車大手の奇瑞汽車(CHERY)と立ち上げたEVブランド「「智界(Luxeed)」などは、いずれも目覚ましい業績を上げている。

しかし、提携する自動車メーカーが増えれば収益も順調に増加するとは限らない。自動車事業群を統括する余承東氏は2024年3月、同事業群は23年に100億元(約2000億円)近い赤字を計上したが、事業拡大に伴って赤字幅は縮小して損益分岐点に近づいているとし、4月には黒字転換する見通しだと説明した。

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ファーウェイは自動車事業群の黒字化を目指し、研究開発に多額の資金を投じ続けてきた。スマートカー事業部門の靳玉志CEOは「私たちが選んだ方向性は間違っていない。遅かれ早かれ黒字化を達成できる」と述べた。

靳CEOによると、AITOのユーザーの7割がファーウェイのADASを選択しているという。AITOシリーズの2023年の販売台数が10万6703台だったことからすると、少なくとも7万人のAITOユーザーがファーウェイのADASを利用していることになる。

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ファーウェイが打ち出す第3世代のADAS「Hauwei ADS 3.0」では、第2世代で採用していた鳥瞰ビュー(BEV)ネットワークではなく、一般障害物検知(GOD)ネットワークを採用。さまざまな形の障害物を識別し、周囲の状況を把握する能力を強化した。

スマートドライビング機能の向上を支える基盤の1つが、クラウドの演算能力だ。靳CEOによると、ファーウェイのスマートドライビング向けクラウドは1日平均3000万キロメートル分のデータを取り込み、5日ごとにモデルが更新されるという。その演算能力は、2023年11月の段階では2.8EFLPOSだったが、24年4月には3.3EFLPOSとなり、現在は3.5EFLPOSに達している。

スマートカー向けソリューション事業部門の李文広プロダクトディレクターによると、ファーウェイのスマートドライビング機能は、自社のファーウェイクラウドを無料で使えるため、競合他社に差を付けられたのだという。

2024年、ファーウェイの新たなスマートカー向けソリューション「乾崑」を搭載した車種が、提携先の東風汽車集団や長安汽車、広州汽車集団、北京汽車集団、賽力斯集団、奇瑞汽車、江淮汽車集団などから続々と発売される予定だ。

ファーウェイは2023年11月、スマートカー事業部門を分離して新会社を設立し、長安汽車の出資を受け入れると発表した。計画が順調に進んでいれば、24年5月中にも同事業部門の分離独立が完了するとみられる。新会社がこれまでどおり研究開発に多額の資金を投じられるかは未知数だが、これまで長年にわたって培ってきた技術力を生かし、未来に向かって羽ばたいていくだろう。

ファーウェイ、長安自動車と新会社設立へ スマートカー事業を完全移管

*2024年5月5日のレート(1元=約21円)で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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