マイクロLEDディスプレイの中国「JBD」、ユニコーンに。ARグラスの画質支える

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マイクロLEDディスプレイの中国「JBD」、ユニコーンに。ARグラスの画質支える

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中国のマイクロLEDディスプレイを手がける「顕耀顕示科技(Jade Bird Display、以下JBD)」がこのほど、プレシリーズBで数億元(数十億~百十数億円)を調達した。出資は螞蟻集団(アントグループ)が主導し、吉利資本と既存株主の広発乾和(GF Qianhe)も参加。資金はマイクロLEDディスプレイのコア技術の開発、製品の量産、ハイレベルな人材の採用、グローバル市場の開拓に充てられる。

今回の資金調達により、JBDはユニコーン企業となった。

2015年に設立されたJBDは、0.3インチ以下のマイクロLEDディスプレイの開発と生産に特化している。製品は0.13インチ、0.22インチ、0.31インチのマイクロディスプレイ、0.3立方センチメートル(cm3)の単色ライトエンジン、0.4cm3の多色ライトエンジンなどを展開しており、拡張現実(AR)グラス、車載ヘッドアップディスプレイ(HUD)、モバイルプロジェクター、3Dプリンター、スポーツ用光学機器、ライトフィールドディスプレイなどに活用されている。

現在、従業員数は約550人で、うち研究開発担当が50%以上を占めている。本社と研究開発センターを上海市浦東新区に置き、安徽省合肥市に大規模な生産拠点を建設した。合肥工場はすでにフル稼働となっており、月間数十万枚のマイクロディスプレイを納品できる。

JBDのマイクロLEDディスプレイ

アップルの空間コンピュータ「Apple Vision Pro」が昨年に発表されたことで、クロスリアリティ(XR)業界は新たな成長期を迎えた。大型ヘッドマウントディスプレイのほか、軽さを売りとする消費者向けARデバイスの出荷台数も爆発的に増えている。調査会社IDCのデータによると、2023年のARデバイス出荷台数は前年比154.4%増の26万2000台に上る。

JBDはマイクロLEDディスプレイを量産できる現時点で唯一の企業として、国内外の大手テック企業、大手家電ブランド、ARスタートアップなどを顧客に抱える。2021年の量産開始から売上高は50%以上の成長率を維持、出荷台数は累計100万台を超えている。今年は、前年から倍増を見込むという。

消費者向けARグラスは、サイズ、重さ、輝度、消費電力などのバランスが難しい。製品はコンパクトで軽量、長時間稼働といった要素を兼ね備えることが求められ、光学および構造的な面で高い壁にぶつかっている。

AR用ディスプレイ技術は現在、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)、DLP、マイクロOLED、マイクロLED、LBS(Laser Beam Scan)などが主流となっている。その中でマイクロLEDディスプレイは、小型、高輝度、低消費電力という強みを持ち、ARや複合現実(MR)などのニアアイディスプレイ分野で「究極」のソリューションだと考えられている。

マイクロLEDディスプレイの性能を左右する輝度は、JBDが一貫して重視してきた指標だ。同社はこの1年で緑色、青色、赤色のマイクロLEDの輝度をさらに向上させ、緑色の輝度は業界トップの800万ニト(nit)に達し、青色は150万ニトに上昇、赤色も100万ニトの大台を突破した。

昨年には、垂直配置アーキテクチャをベースとするフルカラーのモノリシック型マイクロLEDディスプレイ「鳳凰(Phoenix)」シリーズを発表した。その最新バージョンは輝度と色彩が大きく向上し、今後は広いFOV(視野)を必要とするARにより適したソリューションとなる見通しだ。

また、光導波路式ディスプレイの色ムラを解消してARグラスの視覚的な使用感を高めるため、業界初の光導波路式ARグラス向け画質補正装置「ARTCs」を発表した。補正装置、アルゴリズム、ライトエンジンを組み合わせたこのソリューションは、リアルタイムの画質補正によって光導波路の明るさと色の均一性を向上させ、ARグラスの視覚的な使用感を高める。

ARと人工知能(AI)の融合が進む中、場所や時間を問わずAIにアクセスするニーズが高まっている。マイクロLEDライトエンジンを搭載したARグラスなら、従来のAI搭載デバイスとは異なり、超軽量や低消費電力などの特長を備えるためそのニーズに十分応えられる。

JBDは、単色および多色マイクロLEDライトエンジンの豊富な製品ラインを構築した。現在、同社のソリューションを採用した軽量ARグラスは25機種に上り、マイクロLEDを搭載する新製品は年内に10機種を超える見込みだという。

JBDのライトエンジン

今後は単色ライトエンジン「蜂鳥(Hummingbird) mini Ⅱ」の発表と量産を計画している。これは大きさが過去最小の0.15cm3、消費電力もわずか60ミリワット(mW)のARライトエンジンで、軽さや快適な装着感、長時間稼働が求められるスマートグラスにぴったりな製品だ。

創業者でCEOの李起鳴博士は「今回の資金調達によって、当社のマイクロLEDディスプレイ技術の収益化が加速し、ARの中核部品における当社の立場も強化されるだろう」との見方を示した。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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