大型EVトラックで自動運転 中国・零一汽車、LLM活用

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電気自動車(EV)の大型トラックの開発・製造を手掛ける中国「零一汽車(Zeron)」がこのほど、シリーズA1で1億元(約20億円)近くを調達した。自動運転のユニコーン企業のMomenta(初速度汽車技術)、辰韜資本(Cherish Capital)、天善資本(Skyview Fund)、 政府系ファンドの国発文鑫が出資に参加。資金は大型EVトラックの量産、自動運転技術と新車種の開発に充てられる。

零一汽車は、トラック向け自動運転技術で知られる「TuSimple(図森未来)」の共同創業者・黄沢鏵氏が、中国重機大手「三一集団(SANY Group)」傘下のトラックメーカー「三一重卡」の元社長・張紅松氏と共に2022年6月に設立した。現在の従業員は200人ほどで、うち研究開発担当が7割を占める。

黄CEOは、大型トラックの新興メーカーという位置づけで、運転支援機能を搭載する大型EVトラックを独自に開発し、輸送コストの大幅な削減や、輸送効率と安全性の向上を目指すと説明した。

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同社は航続距離300キロ以上のEVトレーラーヘッド「惊蟄」と「小満」を開発し、すでに大口配送を手がける物流企業に納車したという。惊蟄は、中国車載電池大手・寧徳時代(CATL)の容量385kWhもしくは450kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載する。650アンペアで3口のポートを使って充電した場合、残容量0%から80%までの充電時間は42分となる。小満は、CATLの256kWh、350kWh、423kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池を搭載でき、エネルギー密度を向上させるCTP(Cell to Pack)技術のほか、独自開発のトラック用バッテリー管理システム(BMS)を採用し、充電時間を短縮させた。最低使用温度はマイナス35度で、構造強度は旧国家基準の2倍に上るという。

この2車種は、中国の一般的な商用車向け充電スタンドで充電が可能だ。

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黄CEOは、同社が注力する短・中距離輸送市場で、大型EVトラックの普及率が向こう3~5年の間に80~90%へ上がると予測し、その根拠として以下の2点を挙げた。

まずは、各地方政府がここ数年、EVトラックの開発を支援する政策を数多く打ち出し、物流業界で普及が加速していること。また、一部地域で大型EVトラックの普及率が約30%に上り、収益面でプラスの効果を得られたユーザーもいる。コスト削減や収益の向上を図るために大型EVトラックの導入が進めば、短・中距離物流市場での普及率はさらに高まる可能性がある。

中国の物流業界で2030年頃に約300万人のドライバーが不足する見込みで、自動運転に対する需要はますます高まると考えられている。しかし、既存の商用車のほとんどは、人間が運転する前提で設計されており、自動運転システムを完全に適合させるのは難しい。さらにハードウエアの故障を追跡できないという点も、自動運転トラックの普及を阻む大きな課題になっているという。そこで同社は、自動運転向けのプラットフォームとして、全く新しいシャシー・バイ・ワイヤシステムを開発した。

このシステムは車両各部の状態を監視し、いずれかの箇所に問題が発生した場合、素早く予備システムに動作を引き継いで車両の安全性を確保する。さらに、システム遅延の減少、車両全体の自動化、故障診断のランク付けといった機能も備え、無人運転の安全性を高めている。

また、同社が独自開発した自動運転用大規模言語モデル(LLM)は、自動運転に必要なハードウエア要件を大きく減らすと同時に、さまざまな走行シーンに対応する汎化能力を向上させ、自動運転レベル5(完全自動運転車)の実現に向けて前進している。

黄CEOによると、約1年半にわたり、LLMを以下の手順でトレーニングしてきた。まずはトレーニング済みの言語モデルに大量の画像・動画データを取り込み、それを理解する能力を構築する。次に、運転に関する一般知識を教え、各地の交通ルールを学習させる。そして大量の運転動画によるトレーニングを繰り返すことで、人間がするような運転を覚えさせ、最終的に自動運転ができるようになる。

同社が2025年後半に試験運用を目指す自動運転用LLMと、高精度地図を使わないセンシング技術などによって、車両システムの複雑さを90%軽減できるほか、センサーのコストを60%、開発コストを80%削減できるという。

*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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