いま注目のナトリウムイオン電池、中国ベンチャーが水に強い正極材料でコスト削減へ

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リチウムイオン電池に代わる次世代電池として、ナトリウムイオン電池が脚光を浴びている。材料となる資源が豊富でコストが低く、低温性能や安全性に優れるなどの特長があり、蓄電池や非常用電源、小型電源など、エネルギー密度が多少低くなったとしても価格を抑えたい製品に最適な電池として期待が高まっている。

ナトリウムイオン電池は使用する正極材料で分類されており、現時点では層状酸化物、ポリアニオン化合物、プルシアンブルー類似体の3種類がある。このうち、層状酸化物を使用した電池はエネルギー密度が高く、充放電性能やレート特性に優れており、ナトリウムイオン電池の主要な正極材料の一つとなっている。

層状酸化物は、結晶構造によってO3型やP2型などに分けられる。O3型構造の正極材料が広く採用されるなか、P2型構造の層状酸化物を使った正極材料の開発と製造に注力しているのが「駝峰新能源」だ。同社は2022年に設立された新興企業でありながら、すでに初代製品の開発と量産を実現しており、P型構造を持つ高電圧対応の正極材料のパイロット生産ラインも構築している。

ナトリウムイオン電池の主な正極材料の指標一覧(作図:36Kr)

P2型構造の正極材料にはO3型にはない強みがあるため、ここ最近ますます注目を集めている。駝峰新能源を創業した李魁社長は「現在主流のO3型に比べ、P2型は耐水性がありサイクル構造が安定している。また、体積変化が小さく、圧縮密度が高いなどの特長もあり、大きな可能性を秘めている」と語る。

なかでもP2型正極材料の最大の強みと言えるのが、高い耐水性だ。「O3型材料は水を吸収しやすく、水に触れると不安定になるため、ナトリウムイオン電池の生産ラインでは極めて厳格な湿度コントロールが必要とされる。また、O3型材料は電池容量を大きくするには不向きで、さらなるコスト削減も見込めない。P2型材料ならこれらの欠点を克服できる」と李氏は説明する。

P2型正極材料は、水中で攪拌し30時間ほど水に浸漬させても、その結晶構造や電気化学特性に変化は見られないという。この特性のおかげで、水を使用した水系正極スラリーの製造が可能になる。有機溶剤を使ったこれまでの非水系スラリーに比べて製造コストを低減できるうえ、環境汚染も防げる。

李氏の話では、駝峰新能源のP2型正極材料はすでに複数の大手電池メーカーがテストを実施しており、ポータブル電源や無停電電源装置(UPS)、家庭用蓄電池などに利用される見通しだ。今年は100トン単位の出荷を見込んでいるという。

同社は将来的な市場ニーズを満たせるよう、今年に入ってから1万トンクラスの生産拠点の建設に取りかかった。李氏は、ナトリウムイオン電池産業がまだ発展の初期段階にあるとし、正・負極材料や電池の製造だけでなく、川下の活用シーンなどが十分な規模に達していないと指摘。今後も業界全体と協力しながら中国のナトリウムイオン電池産業の発展に貢献していきたいと語った。

(翻訳・畠中裕子)

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