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「こんにちは、フードデリバリーのお手伝いをいたします。食べたいものを教えてください」。
中国最大手のO2Oサービス「美団点評(Meituan-Dianping)」と中国視覚障害者協会による「視覚障害者専用音声アプリ」の運用が正式にスタートした。このアプリを利用することで、1700万人の中国の視覚障害者が音声操作によりフードデリバリーを注文できるようになった。
利用者は美団アプリのトップページにある音声ボタンを押し「バリアフリーデリバリー」と話しかけるか、またはトップページから「多機能」に進み「バリアフリーデリバリー」のアイコンを押した後、音声インタラクティブによりオーダーを完了することができる。ボイスメッセージの起動ボタンは画面の最下部に設置されており、ボタンのおよその位置と形状を記憶していればスムーズに操作できる仕組みだ。
このAIアシスタントの発話スピードは5段階に設定されており、ユーザーは自身の好みに合わせて速度を調節できる。視覚障害者はこれまで、携帯電話の画面の文字を読み上げるソフトウェアを主に利用してきた。だが手順も煩雑で効率が低い上に、誤って画面の別のボタンを押してしまえば画面がポップアップされ、うまく先に進めないという問題があった。だが今回発表された専用アプリは、注文操作の精度を95%まで引き上げた。
あるデータによれば、中国にいる1700万人の視覚障害者のうち、少なくとも600万人がスマートフォンを利用しており、フードデリバリーの利用経験がある人は9割近くに上るという。またフードデリバリーを日常的に利用する人々のうち、スマートフォンのアプリで注文する人は7割に及んでいる。UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上において、視覚障害者のニーズが重要な一環を担っていることが分かる。
美団は今後も視覚障害者の実際のニーズに応じ、鉄道乗車券の予約や配車などができる音声アプリの開発を続けていくとのことだ。
インターネットやAIに対する視聴覚障害者のニーズが日増しに高まる昨今、大多数の成熟したテック企業はこれまでの認識を刷新し、生活の質の向上につながるバリアフリー化の試みをソーシャル、ショッピング、情報サービス、モビリティといった面から急ピッチで進めている。
過去の各社の取り組みに注目すると、テンセントはインスタントメッセージアプリ「QQ」とSNSアプリ「QQZone」について、バリアフリー化に向けた開発を2009年からスタートしている。また中国配車サービス大手の「滴滴出行(Didi Chuxing)」は2016年、バリアフリー車による配車サービスを複数の都市で開始。さらに中国の携帯メーカーも「バリアフリーモード」を重視した製品開発を進めている。WeChat(微信)では、よりスムーズにメッセージをやり取りできる「ボイスメッセージ」機能が以前から使用できる。またフードデリバリーを手がける美団やウーラマ(餓了麽)は聴覚障害者の配達員を採用し、研修を経て実務を行える制度を整えており、新たな就業機会を創出している。
バリアフリー技術の開発、提供、利用が進むにつれ、社会全体のあり方も絶えず変化しているといえる。新たなテクノロジーの出現には、性能面などに関する多くの問題がつきものだ。だが、健常者にとっては大したニーズのない機能であっても、特定のユーザーにおいては切実な必要性を伴うものであれば、技術のアップデートや改良は加速していく。科学技術の革新が個々の人々に恩恵をもたらす今日において、音声機能による生活サービスはほんの始まりにすぎないだろう。
(翻訳・神部明果)
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