中国のグリーンアンモニア合成、フレキシブルな製造設備でコストを大幅削減

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グリーンアンモニアの合成技術と製造設備を手がける中国企業「中科禾成緑色能源(Zhongke Hecheng Green Energy)」が、製造設備に関わる技術でブレークスルーを果たし、中国初となる1000トン級のフレキシブル・グリーンアンモニア合成実証プロジェクトを進めている。

中科禾成は、グリーンアンモニアの合成技術と、原料の供給量に応じて負荷を調整できるフレキシブルなスキッドマウント型の製造設備を開発し、グリーンアンモニア合成のソリューションや技術コンサルティングなどのサービスを提供している。創業時には、辰韜資本(Cherish Capital)から1000万元(約2億円)規模の資金を調達し、チームの構築や技術の改良に充てている。

世界で製造される水素の用途はアンモニアの合成が最も多く、その割合は約40%に上る。グリーンアンモニアとは、再生可能エネルギーで生成したグリーン水素を原料にしたアンモニアを指す。

従来の製造方法では、化石燃料を使って水素を作り、その水素と窒素を高温・高圧で化学反応させてアンモニアを合成していた。化石燃料を使うアンモニア合成は化学工業でも二酸化炭素(CO2)の排出量が最も多い分野の1つだ。また、従来のアンモニア製造方法は、原料の安定供給と高温・高圧の環境を要するため、供給が安定しない再生可能エネルギーとは相性が良くない。

再生可能エネルギーの不安定な供給にも対応できる低エネルギー消費、低炭素排出、高効率のアンモニア製造設備は、脱炭素化を目指す中国の産業界にとって不可欠となる。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の推計によると、世界のグリーンアンモニア製造量は2030年に年間2000万トン、50年に5億6000万トンを超え、アンモニア製造量に占める割合は80%以上となる見込みだ。つまり、グリーンアンモニアの製造設備市場には大きな発展の見込みがあると言える。

中科禾成が開発した次世代のグリーンアンモニア製造システムは、原料の供給状況に応じてフレキシブルに製造設備の負荷を調整できるため、従来の硬直的な製造方法よりも、供給が不安定な再生可能エネルギーやグリーン水素を使ったグリーンアンモニアの合成に適している。

また、同社のグリーンアンモニア製造設備は、スキッドマウント型を採用しており、現場の状況や顧客のニーズに応じた柔軟な工場建設が可能になる。創業者の章文揚氏は、モジュール設計により工場をプレハブ化して輸送できるため、現場で施工する手間を減らし、迅速に設置して操業を開始できると説明した。

フレキシブルな製造設備を導入すれば、再生可能エネルギーを使ったグリーン水素製造工場でも、グリーンアンモニアの合成が可能になる。これによって、ハードルが高い水素貯蔵・輸送の問題がほぼ解消され、再生可能エネルギーを使うことでコストも抑えられる。

画像:企業提供

グリーンアンモニアの合成ではコストがポイントになる。章氏によると、スキッドマウント型のフレキシブルなグリーンアンモニア製造設備は、負荷を調整して工場の稼働効率を上げるほか、従来のアンモニア製造方法よりも安全性と操作性に優れ、メンテナンスをそれほど必要としないため、全体のコストも削減できる。また、グリーン水素工場でグリーンアンモニアを合成できるため、グリーン水素の貯蔵と輸送にかかる費用を減らし、従来の製造方法よりもコストを最大30%減らせるという。

同社のコアチームは合肥総合性国家科学センターエネルギー研究院の出身者で構成され、豊富な経験と高い技術力を有している。

海外では、昨年の国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の開催期間中に、260メガワットの太陽光発電で作った水素からアンモニアを合成するプロジェクトおいて、グリーンアンモニア製造設備の設計と製造を請け負う契約を結んだ。同プロジェクトはアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで進められる最初の再生エネルギー使用のグリーンアンモニア製造プロジェクトで、合成したアンモニアは欧米や日本、韓国に輸出される計画だ。

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*1元=約22円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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