話題の中国AIロボット「LimX Dynamics」、シリーズAで数十億円を調達 アリババもついに出資

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

話題の中国AIロボット「LimX Dynamics」、シリーズAで数十億円を調達 アリババもついに出資

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

どんなに押しても蹴っても倒れない二足歩行ロボットの動画が公開され、ネットで大きな話題を集めた中国のスタートアップ「逐際動力(LimX Dynamics)」がこのほど、シリーズAで数億元(数十億円~百数十億円)を調達した。リード・インベスターはアリババグループ、招商局資本(China Merchants Capital)および上海汽車集団(SAIC MOTOR)傘下の尚頎資本(ShangQi Capital)。コ・インベスターは既存株主の峰瑞資本(FreeS Fund)、緑洲資本(Vitalbridge)、明勢資本(Future Capital)。注目すべきはアリババが初めて人型ロボット企業に出資したということだ。

LimXは2022年に設立された。主に等身大の人型ロボット、車輪付き四脚ロボット、二足歩行ロボットなどを手がけ、スマート製造や産業分野の巡回検査、物流・配送、家庭サービスなどの分野で活用されている。今回調達した資金は、人型ロボットの製品化に向けた技術開発に充てられる。

業界でも最初期に空間知能と運動知能を人型ロボットに組み込んだ企業として、LimXが2023年12月に、独自開発した人型ロボット「CL-1」のデモンストレーションを初公開した。24年4月には最新の開発状況を公表し、階段の昇降やランニング、方向転換などの動きを披露した。今後は様々な地形での検証を終えた後、動きの汎用性を高めるため、マルチモーダルの大規模言語モデル(LLM)技術を段階的に人型ロボットに組み込んでいくという。

逐際動力の人型ロボット「CL-1」のデモンストレーション

これまで、人型ロボットの最大の課題は、導入コストが高く、汎化能力に限界があり、特定の場面でしか機能しないということだった。したがって、人型ロボットにとって最も重要なことは、いかにして汎化能力を獲得するかということになる。つまり、ロボットが現実の生活で働いたという経験をベースにして、新しい環境に適応できる能力を作り上げていくということだ。これは人間が過去の生活経験に基づいて新しい生活に適応していくのとよく似ている。

LimXは、は、ロボットに汎化能力を持たせるため、マルチモーダル(身体や力覚、触覚、関節情報など)のLLM技術を段階的に人型ロボットに導入し、一方でロボット本体の汎用性の実現も推し進めている。しかし、人型ロボットの汎化能力を向上させる技術的な手法について、業界内で見解の一致は得られていない。それでも模倣学習や映像を用いた学習など、新しい手法が生まれつつある。

同社は、大量の人間の動作データを用いるという手法を採用、人型ロボットに事前学習を施すことで、人間社会に適応できるようにサポートする。これは3つのステップに分けられる。

1)データスクリーニング:既存のビデオデータから、様々な人間の動きを抽出する。

2)事前学習:データを収集した後、ロボットの基本的な運動能力を、簡単なものから難しいものまでレベル分けし、段階的に事前学習を行う。このプロセスにより、学習結果がコントロールしやすくなり、より優れたパフォーマンスが望める。

3)強化学習:「Real2Sim2Real」のクローズドループを利用し、現実データをシミュレーション環境で継続的に学習・訓練させ、その後、現実世界に戻って学習結果を実証する。シミュレーションと現実を行き来しながら学習を繰り返すことで、両環境におけるギャップを徐々に縮め、ロボットの「脳」にあたる人工知能(AI)が現実世界を理解できるようにする。

人型ロボットの分野では現在、中国国内外のメーカーが激戦を繰り広げている。テンセントは2023年、中国の人型ロボット開発企業として初の香港上場を果たした優必選科技(UBTECH Robotics)に出資した。百度(バイドゥ)は24年、華為技術(ファーウェイ)の「天才少年」彭志輝氏が共同創業者を務める智元機器人(Agibot)に2回出資した。美団は銀河通用機器人(Galbot)に出資し、24年初めには宇樹科技(Unitree Robotics)のシリーズB2の資金調達を主導した。

元ファーウェイの天才エンジニア、工場作業も家事もできる人型ロボット発表。「コスト400万円に抑える」

海外でも、テック大手が続々と人型ロボットの分野に参入している。米テスラの人型ロボット「Optimus」のほか、エヌビディアやマイクロソフト、OpenAI、アマゾンの創設者ジェフ・ベゾス氏が投資するFigure AIが代表的だ。

現在、インターネット大手のエンボディドAIに対する取り組み方は、主に投資と自社開発の2つに分かれている。巨額の富を持つ大手メーカーの多くが直接投資を選んでいるのに対し、バイトダンスやシャオミ、NVIDIA、テスラなどは自社開発を選択している。

人型ロボットに対する国内IT大手の出資状況(表:36Krが公開情報を元に作成)
人型ロボットに対する海外大手の出資状況(表:36Krが公開情報を元に作成)

調査会社の高工産業研究院(GGII)が2023年5月に発表した報告書によると、人型ロボットの世界市場は2030年に200億ドル(約3兆円)を超えると予想されている。

LimXの創業者・張巍氏はかつて、人型ロボットは「ハードウエアに搭載されたAI」だと述べていた。AIがロボットの汎化能力を決定し、本体の製造技術で製品の信頼性が決まる。こうして安定した汎用性を実現できる。大手各社が先を争って人型ロボット分野に進出するのも、LLMに続くAIのトレンドで主導権を握るためなのだ。

*1元=約21円 1ドル=約154円で計算しています。

(翻訳・北村一仁)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録