テキストからUIデザインを自動生成。AIツール「Motiff」、Figma90%の機能実現も定価はわずか2割

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中国のテック系スタートアップ企業「猿輔導(Yuanfudao)」が6月5日、シンガポールで開催されたアジア最大のAIイベント「SuperAI」で、開発に2年近くを費やしたAIデザインツール「Motiff」を発表した。もともとオンライン教育で名を馳せた同社だが、これを機にAIデザイン分野への本格的な参入を果たす。

2012年に設立された猿輔導は幼稚園児から高校生を対象にしたオンライン教育を展開し、同分野で初のユニコーン企業となった。創業から10回以上の資金調達で総額53億ドル(約7800億円)を集め、20年の評価額は170億ドル(約2兆5000億円)に達したが、21年に「中国版ゆとり教育」とも呼ばれる「双減」政策が導入されたことで、学外教育業界に大規模な再編の波が訪れた。猿輔導は政府の指針に基づき、主力事業のオンライン授業を非営利組織化して親会社から完全に切り離し、コーヒーショップ「Grid Coffee」や高級ダウンウエア「SkyPeople」などの新事業を立ち上げるなど、事業転換の道を模索した。

今回発表されたAIツールのMotiffは、猿輔導のこれまでの技術を結集させたプロダクトと言える。同社は早くから教育分野にAIを導入し、解答検索サービス「小猿捜題」、計算問題の自動採点アプリ「小猿口算」、未就学児向けの「斑馬AI課」などの人気プロダクトをリリースしてきた。そのノウハウを生かして開発されたMotiffは、ユーザーインターフェース(UI)のデザインに特化した「AI版Figma」を目指し、デザインプロセスの簡略化や効率化にAIを活用している。

Motiffはワンアクションでコピー&ペーストできる機能やAIを使ったレイアウト調整などの機能を備え、面倒な反復作業を繰り返さずにすむ。さらに生成AIでテキストからUIを生成する機能も盛り込まれた。希望するUIのタイプや構成パーツをテキストで入力するだけで、整ったUIデザインが自動生成される。このほか、スケッチをアップロードすれば、Motiffがパーツのサイズや位置関係からデザイナーの意図を分析して、欲しいエフェクトを加えることができる。

Motiff運営副総裁の張昊然氏は、Motiffの実用性とコストパフォーマンスを武器に2000億ドル(約30兆円)を超える世界のSaaS市場に切り込んでいけると語る。Motiffの基本機能にはFigmaの機能の90%が含まれており、FigmaにはないAI機能も利用できる。しかも2倍の同時接続数を実現しながら、定価はFigmaのわずか2割ほど。こうした強みを生かして、価格にシビアな中小企業やフリーのデザイナーを取り込み、市場での勢力を急拡大する狙いだ。また当初からグローバル化も掲げて、全世界で統一価格を採用している。

現在、UIデザインの分野ではFigmaが80%のシェアを占めている。Motiffは機能や価格の点で優れているとはいえ、圧倒的王者として君臨するFigmaの牙城を崩すのは簡単なことではないだろう。

*1ドル=約147円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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