相次ぐ中国自動車メーカーの欧州進出、シャオミも意欲。中国製EVへの追加関税も影響は限定的か

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中国自動車メーカーにとって欧州は今注目の市場だ。電気自動車(EV)大手の比亜迪(BYD)や吉利汽車(Geely)、新興の蔚来(NIO)などが積極的に欧州市場を開拓しており、小鵬汽車(Xpeng Motors)など多くのメーカーも欧州市場へ進出しようと機会をうかがっている。

中国スマートフォン大手シャオミ(小米集団)の董事長・雷軍CEOは8月中旬、傘下でEVを開発する小米汽車(Xiaomi Auto)が欧州市場へ参入する時期について検討していると明らかにした。

雷CEOはこれまで、小米汽車は2030年までに欧州市場に進出する計画で、世界で五本の指に入る自動車ブランドになることが目標だと強調していた。小米汽車はまだ正式に海外市場へ進出していないが、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイやロシア、トルコなどで使用される小米汽車のEV「SU7」の画像が海外の多くのSNSでシェアされている。

グローバル化の波のなか、中国の自動車メーカーはこれまでになかった課題に直面している。厳しい市場競争だけでなく、欧州連合(EU)が中国製EVに対して課す高額な関税にも対処しなくてはならないのだ。

8月20日、中国から輸入する純電気自動車(BEV)に対する相殺関税の最終案が公表された。メーカー別の追加関税率は、BYDが17%、吉利汽車が19.3%、上海汽車(SAIC)が36.3%で、テスラについては9%とされた。中国製BEVをEUに輸出するには、現行の関税10%と合わせて最大46.3%となり、EUが輸入乗用車に課す原則10%の関税を大幅に超えるものとなる。

自動車の並行輸入を手掛けるあるディーラーは、これまでに扱った小米汽車のSU7はいずれも中国国内で購入したものを中古車として、2万2000~4万ドル(約310万円~570万円)の価格で輸出してきたが、新たな関税政策が実施されれば1万ドル(約140万円)は値上がりするだろうと語った。

最高で46.3%にもなる関税に対し、自動車メーカーが利益を確保する余地はあるのだろうか。

ベルギーのクリーンエネルギー交通研究機関T&Eの最新の分析では、昨年欧州で販売されたEVのうち約5分の1にあたる19.5%が中国で製造されたもので、これが2024年には4分の1になると予測されている。

しかし中国ブランドにとって欧州に輸出する自動車の割合はそれほど大きくない。2024年1月から5月までのメーカー別の海外販売台数は、BYDが17万6000台、上海汽車集団の「名爵(MG)」が40万7000台、吉利汽車(ボルボおよび傘下のEVブランド「Polestar(極星)」、「ZEEKR(極氪)」)が16万2000台、長城汽車(GWM)が16万3000台で、そのうちEU域内で販売されたBEVはそれぞれ、8000台、2万7000台、700台、800台だ。販売台数全体から見れば、関税引き上げによる影響は限定的と言えるだろう。

加えて、海外での販売価格は中国国内より少し高めに設定されているため、車種によっては関税分を差し引いても利益を確保できる。米国の調査機関Rhodiumの試算では、BYDの「Seal U」(中国では「宋Plus EV」)を中国で販売しても利益は1万元(約20万円)程度にしかならないが、欧州では関税が追加されても利益率は平均で約10%、約4000ユーロ(約63万円)だ。

ただ、上海汽車集団の「MG4」やテスラの「モデル3」は、関税が引き上げられると利益が出なくなる。また、比較的規模の小さなNIOや小鵬汽車、哪吒汽車(Neta)などの新興勢力に対しても追加関税が一定の影響を与えることは間違いない。

中国自動車工業協会(CAAM)は高額な相殺関税について強い不満を表明し、中国メーカーの欧州における経営や欧州への投資に極めて大きなリスクと不確実性をもたらすもので、中国企業の経営や投資意欲を損ない、EUの自動車産業の発展、雇用機会の増加、持続可能な発展の実現に対して深刻で好ましくない影響を与えるとの認識を示した。

一方で地元欧州のシンクタンクには、EUの関税引き上げ案は中国車の締め出しではなく、製品の現地生産を加速することが目的だとして、米国の関税政策に比べればまだ緩いほうだとの見方もある。

中国の自動車メーカーは欧州で生産拠点の建設を急ピッチで進めている。BYDは2023年12月、ハンガリーのセゲド市に新エネルギー自動車の製造拠点を設けることを発表した。建設は2期に分かれ、数千人分の雇用を創出するとみられている。また奇瑞汽車(Chery Automobile)は2024年4月、スペインのEVメーカー「Ebro-EV Motors」とバルセロナに合弁企業を設立することで合意した。新型EVを製造し、1250人分の雇用創出が見込まれている。

欧州市場には数々の課題があるものの、大きなチャンスもある。中央財経大学の劉春生准教授は、欧州市場では新エネルギー車の需要が引き続き拡大するので、相殺関税問題が落ち着けば中国メーカーにとって大きな市場になるとの見方を示す。そして厳しい競争が繰り広げられる欧州市場でシェアを獲得するため、中国メーカーは引き続き技術を磨き、ブランドイメージを向上させることが必要だと指摘した。

作者:霞光社(WeChat公式ID:Globalinsights)、唐飛

※1元=約20円、1ドル約142円、1ユーロ=約158円で計算しています。

(編集・翻訳 36Kr Japan編集部)

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