半導体や電子機器の欠陥検出、誤判定率ほぼゼロに。AI外観検査装置の中国「BOHR」が資金調達

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産業用の外観検査装置を提供する中国ベンチャー企業「玻爾智造(BOHR)」がこのほど、シリーズAで中華開発資本(CDIB Capital Group)から数千万元(数億円)を調達した。資金は大口受注の獲得のほか、半導体産業向け検査装置の開発に充てられる。これに先立つエンジェルラウンドとプレシリーズAでも計数千万元を調達している。エンジェルラウンドの出資者は東旭達集団(DXD)。プレシリーズAでは浩瀾資本(Broad Stream Capital)が出資を主導し、浙江省の諸曁市政府も参加した。

BOHRは2020年に設立され、自社開発した光学技術や人工知能(AI)アルゴリズムを用い、複雑な形状をした製品の欠陥を見つける外観検査装置などを開発している。主力は消費者向け電子機器や高精度半導体向けの外観検査装置。すでに某大手デバイスメーカーに100台を納品したほか、米グーグル、独ボッシュ、中国の小米(シャオミ)やレノボなどを顧客に抱えている。

消費者向け電子機器の外観検査には、マシンビジョンが広く用いられている。中国の調査会社・高工産業研究院(GGII)のロボット研究所は、中国では消費者向け電子機器用マシンビジョンの市場規模が2022年に42億7400万元(約900億円)に達しており、27年には70億元(約1500億円)を突破すると予測している。

外観検査は、プリント回路基板(PCB)やリフローといった前工程の検査だけでなく、完成品の組立段階である後工程の検査でも行われる。これまでは、人の目による検査や平面にのみ対応する検査装置が主流だったが、中国ではここ10年余りの間に電子機器産業が拡大し、それに伴って「凌雲光(LUSTER)」や「天準(TZTEK)」などマシンビジョンを手がける上場企業も誕生した。

しかし、ワイヤレスイヤホンや各種電源などの電子機器は、出荷前に色ムラや傷など20~90種類の外観上の欠陥が見つかる場合がある。これらの欠陥を人の目や平面にのみ対応する検査装置で発見するのは難しい。しかも、検査スタッフは日常生活の3倍も明るい光の下で長時間の作業を強いられるため、視力を損ないやすいという欠点もある。

BOHRの王遜パートナーによると、従来は大多数の外観検査企業がPCBや印刷包装などの平面検査を手がけており、さほど強い光源を必要としていなかった。しかし、特殊な形状や曲面を持つ製品の検査では、既存のアルゴリズムや標準光源では対応できなくなってきた。

そこでBOHRは、顧客のニーズに応じてカスタマイズ可能な光学システムとAIアルゴリズムを開発した。従来の外観検査装置が標準光源1〜2組を搭載していたのに対し、同社の検査装置は7〜10組を搭載できるため、複雑な形状をした電子機器の検査が可能になった。また、AIベースの新たなアルゴリズムを導入して欠陥画像の認識精度を上げ、誤判定(見逃し)率をほぼ0%にした。同社の外観検査装置はすでに、プラスチックや金属、グラファイト、ガラスなどでできた完成品や半製品、部品の検査に対応可能となっている。

半導体製造の後工程(完成品として組み立てる段階)向けでは、10マイクロメートル級のセラミック基板の検査技術が成熟しつつあり、現在は1〜10マイクロメートル級のIC(集積回路)基板やICチップの検査技術を開発中だという。

BOHRは2025年、引き続き半導体向けの高精度検査装置に注力し、さらに医療材料や車載電子部品の検査装置にも事業を広げていく方針。また、顧客企業と共にインドやベトナムなどの市場を開拓し、グローバル展開を進めていく。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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