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マイクロLED技術を手掛ける中国スタートアップ「秋水半導体(Qiushui Semiconductor)」がこのほど、エンジェルラウンドとその追加ラウンドで計数千万元(数億円超)を調達した。英諾天使基金(Innoangel Fund)が出資を主導し、力合資本(Leaguer Capital)、数字光芯(Light Chip)および汕韓光層も参加。資金は主にマイクロLED技術の開発とプロセス検証に充てられる。
秋水半導体はマイクロLEDディスプレイ技術を専門とするテック企業として、米ペンシルベニア州立大学出身の蒋振宇博士によって2022年11月に設立された。主力製品はマイクロLEDチップとモジュールで、自動車ヘッドライトや車載ディスプレイ、拡張現実(AR)デバイス、ウェアラブルデバイスなどに活用されている。
従来のLEDディスプレイは画素密度が低く、解像度や輝度、消費電力の点で限界があった。マイクロLEDディスプレイは、LEDを微細化して敷き詰めることで高い解像度と鮮やかな色彩を実現し、輝度や消費電力でも改善が見られるなど、省エネかつ高精細のディスプレイ技術として期待を集めている。
調査会社Grand View Researchによると、世界のマイクロLED市場の規模は2023年に6億2360万ドル(約950億円)に達しており、24年から年平均77.4%のペースで成長して、30年には市場規模が256億5000万ドル(約3兆9000億円)まで拡大する見込みだという。
蒋博士によると、同社は「ダメージフリー」という新しいマイクロLEDチップ技術を開発した。この技術は、物理的な絶縁方式に代わる電気絶縁構造を採用し、材料にダメージを与えることなく画素同士を絶縁できる。従来のマイクロLEDチップ製造で発生していたエッチングによるダメージ問題を解決しただけでなく、チップの効率や安定性も向上させ、マイクロLEDチップの量産に向けた可能性を切り開いた。
さらに、ハイブリッド接合によるチップの3D集積というパッケージング技術に加え、先進プロセスを採用したことで、マイクロLEDチップ製造プロセスのレベルが全面的に向上し、良品率の改善やコスト削減につながった。同社は、中国で初めて8インチのハイブリッド接合による先進プロセスの成功を報告したマイクロLEDスタートアップとなった。
初代製品の0.61インチのデジタルヘッドライト用チップは、従来の製品ではできなかった画素レベルでのビーム調整を可能とし、無駄な光の散乱やまぶしさを低減できる。マイクロLEDは高輝度で消費電力が少ないため、電力消費を抑えながらヘッドライトの性能を向上させられる。加えて、マイクロLEDは応答速度が速いため、さまざまな走行状況に応じてライトを素早く調整できるという利点もある。デジタルヘッドライトの多彩なスマート機能を車両のスマートシステムと組み合わせ、照明モードを自動調整したりナビゲーション情報を路面に投影したりできるようにもなる。
調査会社Statistaのデータによると、中国の自動車用LED照明の市場規模は2021年に33億5000万ドル(約5100億円)に達しており、22年から年平均8.66%のペースで成長して、27年には55億ドル(約8400億円)に迫る規模に拡大するという。
蒋博士は「マイクロLEDヘッドライトは大きな市場を形成する可能性を秘めており、技術的なボトルネックを解消できれば市場を獲得することができるはずだ。将来的にマイクロLEDは単なる照明ではなく、ディスプレイ機能など多彩なスマート機能を備えたデバイスとなり、自動車のスマート化における大きなトレンドとなるだろう」と語った。
目下、秋水半導体の初代ヘッドライトチップは顧客へのサンプル送付が完了しており、来年には量産が実現する見通しだという。
*1ドル=約152円、1元=約21円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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