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中国のヘアサロンに行くと、「会員カードありますか?」と必ず聞かれる。ここで言う会員カードは、単なるメンバーズカードではなく、あらかじめ料金をチャージしておくデポジットカードのようなイメージ。チャージした金額によるが、会員になると料金が3〜4割引となり、非会員価格よりもぐんとお得になる。
実は、この会員システムが消費者の頭を悩ませる種となっている。執拗に会員になるように勧められて、ヘアサロンに行ってもリラックスできないのだ。実際、会員にならないと何だか気まずい雰囲気になるし、あまり丁寧にしてくれないことが多い(気がする)。
しかも、思いどおりのカットやカラーをしてくれるヘアサロンは限られている上、価格も高い。どこの国のアサロンでもイメージしていたスタイルにならないことはあるが、中国ではカットとカラーで軽く1000元(約2万円)を超えたにもかかわらず「泣きながら退店した」人も多いと聞く。
もちろん中国にも一流のヘアサロンは存在するが、会員になるには高額な費用が必要になるケースが多い。そのせいだろうか、このところ日本のヘアサロンを目指す中国人が増えている。
なぜ日本のヘアサロンが人気?
中国の美容師は、会員カードのセールスに、カラー剤やトリートメントなどのオプション紹介に、そしてヘアケア商品を購入させるために必死で、なかなか落ち着かない。カットやカラーをしてもらいにヘアサロンに来ただけなのに、「NO」がしっかり言えないとプラスアルファの出費がかさんでしまう。
中国のヘアサロンには、技術レベルによってコンサルタント、マスター、スタイリスト、エグゼクティブ、クリエイティブなど、さまざまな肩書きを持つ美容師がいる。その肩書きによって決まる基本給にインセンティブが加わるため、美容師はオプションや商品を勧めたり、会員になるように仕向けて来るのだ。余談だが、日本の「かわいくてナチュラル」なスタイルは中国でも人気があり、日本で修行をした経験のある美容師は指名されやすくなる。
日本のヘアサロンが人気の理由は、なんと言ってもその技術とサービスの質の高さにある。雑誌を読んだりドリンクを飲んだりしながら施術を受けられて、こちらがあまりおしゃべりを好まない場合は、ペースを合わせてくれる。そんな日本のきめ細やかなおもてなしは、瞬く間に中国のSNSで拡散され、口コミや動画を参考にして日本のヘアサロンを体験する事がトレンドになった。2018〜19年に始まったブームは一時沈静化していたが、最近になってまた再燃している。
「モノ消費」から徐々に「コト消費」へ
中国人の訪日旅行は、買い物などの「モノ消費」が中心ではあるものの、「コト消費」の割合も徐々に増えている。日本の伝統文化やアニメ文化の体験などが人気だが、カットやカラーなどヘアスタイリングの施術を目的に来日する中国人観光客も増えている。
調査会社トレンドExpress(現、NOVARCA)が運営するウェブメディア「中国トレンドExpress」が2019年にまとめた「中国人が日本でしたいこと」ランキングでは、6位に「美容院に行きたい」が入っている。
具体例を一つあげよう。2024年の夏、卒業旅行で日本を訪れたAさんは、知人の勧めで銀座のヘアサロンを予約した。料金はカット、カラー、トリートメント込みで約1万円。中国のヘアサロンのせかせかしている雰囲気とは真逆で、落ち着いた店内へ中国語の通訳が案内してくれた。美容師は、決して押し売りすることなく、カットやカラーのオーダーを丁寧に聞いてくれた。心地よい施術が終わって店外に出たAさんは、「頭全体がキラキラ輝いている」と感じ、早速SNSに「最高の接客だった」と投稿している。それから3カ月経っても、髪色が少し明るくなっただけでカラーの持ちも良かったため、次回の日本旅行でも、また同じヘアサロンに行こうと決意したという。
リクルートの調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」が2024年9月に訪日外国人旅行者936人を対象に実施した調査では、18.8%がヘアサロンを利用したいと回答した。実際に日本のヘアサロンを利用した外国人旅行者からは、丁寧な対応や高度な技術に対して感動の声が寄せられたという。ちなみに、外国人旅行者が美容サロン(ヘアサロン、ネイルサロン、エステサロンなど)に1回あたり支払ってもよいと考える金額の平均は1万4033円だった。
2024年1~10月の訪日中国人観光客数は580万人を突破し、国別で2位となった。増え続ける中国人顧客に対応するため、日本では多くのヘアサロンが中国語を話せるアシスタントを配置しているという。
(36Kr Japan編集部)
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