メイド・イン・ジャパン
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人工知能(AI)を使った業務用の掃除ロボットを手掛ける「アイウイズロボティクス(IWITH ROBOTICS)」(東京・品川)は親会社である倉元製作所の工場を活用し、日本国内でロボットの生産を始める。さらに従来の床掃除ロボットに加え、2025年6月にはトイレ掃除用のロボットも量産する計画だ。日本製ロボットの品質の高さと充実した品ぞろえを売り物に、ショッピングセンターやオフィスビルでの採用拡大を目指す。
アイウイズの王馳・代表取締役が36Kr Japanのインタビューで経営方針を語った。同社はAIロボットなどを開発する中国のスタートアップ企業、深圳市艾唯爾科技を母体として2023年2月に発足した。「日本では今後、小売店などで清掃員の不足が深刻化するうえ、掃除ロボット市場の競争が中国ほど激しくない」(王氏)と分析し、艾唯爾が開発した製品を日本市場で販売してきた。
2年近くは自力で市場を開拓してきたが、東証スタンダード上場で半導体加工事業などを手掛ける倉元製作所による買収を受け入れ、11月1日付で完全子会社になった。王氏はこの経営体制の変更の狙いを「ロボット先進国である日本の工場で生産することで、日本の顧客からの信頼を高めたい」と説明する。
具体的には、倉元製作所が一部事業からの撤退で生まれた花泉工場(岩手県一関市)の空きスペースを掃除ロボットの組み立て工場に転用し、アイウイズ向け製品の受託生産を始めた。アイウイズにとっては、親会社に生産を委託する形となる。日本市場で競合する業務用の掃除ロボットは中国製が多いため、自社製品を「メイド・イン・ジャパン」に切り替えて品質の高さをアピールする経営戦略だ。
アイウイズは従来、掃除ロボットの開発を艾唯爾に委託し、生産は他の中国メーカーに委託してきた。今後も開発は艾唯爾への委託を続けるものの、生産は倉元製作所に集約する。AI関連技術の高い中国と工場の品質管理に定評のある日本で分業体制を敷き、掃除ロボットの市場競争力を向上させる。
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花泉工場には当面、発売済みで小型の「J30シリーズ」、中型の「J35シリーズ」という2種類の床掃除ロボットの生産を委託する。いずれもセンサーやレーダーを搭載し、AI機能で障害物を認識して回避しながら床を掃除していく。対象場所のマップもAIで自動作成する。一台で吸塵、モップ拭き、乾拭きなど複数の掃除法を実行でき、大理石、タイル、ポリ塩化ビニルなど様々な材質の床に対応している。
J30Sは面積が1000平方メートル以上、通路幅が60センチ以上の小売店、オフィス、病院などでの掃除を想定している。小売業から300台を受注した実績があり、23年12月から全国の直営店舗向けに納入してきた。さらにロボットの上部に陳列台や液晶ディスプレーを設け、販促キャンペーンなどに生かせる仕様となっている。
J35は面積が2万平方メートル以上、通路幅が65センチ以上の場所の掃除を想定した中型機種だ。葬儀会館や北海道の老人ホームで採用実績がある。移動式の水タンクを備え、5万平方メートル以下とより大きな場所の掃除に適した「J35Pro」と呼ぶ派生型も用意している。
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また、大型のJ40は面積が4万平方メートル以下、通路幅80がセンチ以上の場所の掃除に適しており、23年11月にゲームセンター向けに50台受注・納入した。
価格はJ30Sの場合で一台220万円(税別)に設定しており、アイウイズはこれら自社製の掃除ロボットを導入した顧客には清掃員などの人件費を4分の1以上削減する効果があると推計している。
王氏は自社の床掃除ロボットが、特に2つの点で競合製品より優れていると説明した。一つはJ35、J35Pro、J40 がエレベーターに自動で乗り込み、別のフロアに移動する機能を持っている点だ。ロボット関連のインフラ技術を手掛けるOcta Robotics(オクタロボティクス、東京・文京)が開発した「LCI」と呼ぶ技術を24年10月に導入し、J35などがエレベーターで移動できるようにした。店舗などが無人となる夜間の清掃効率の向上につながる。
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もう一つは、床掃除した後のモップなどを自動で洗うために備えている水タンクの取り外しが可能な点だ。競合製品はタンクが固定式であるか、そもそも存在しない例が多いという。王氏は「掃除の回数が増えれば水だけでなく、タンクも汚れていく。当社製ロボットはタンクを取り外して洗えるので、清潔さを保ちやすい」と強調した。
さらに、アイウイズは25年6月、掃除ロボットの品ぞろえを拡充する一環として、洋式の便器を掃除するトイレ用のロボット「T1」を量産する。清掃員が手押しで便器にセットすると、高圧ノズルで洗浄液を噴射して内側を洗浄する。同時に、便座をローラー式のモップで上下から挟み込んで掃除する。これらの作業が終わり、清掃員が便器から離す際に側面を自動的に拭く仕組みとなっている。
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「清掃員が腰をかがめて便器を掃除する作業を省くことができる」のが利点だという。清掃員の高齢化が進み、腰をかがめる作業が難しくなるのを意識したトイレ用の掃除ロボットだといえる。
アイウイズはT1を「日本初のトイレ清掃ロボット」と位置づけ、24年11月に開かれた展示会「ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2024」に出展した。来場者から大きな注目を集め、すでに多くの引き合いが来ているという。
アイウイズは中国では販売せず、日本市場に特化する考え。「日本は高齢化の加速で清掃員の確保が年々難しくなるため、掃除ロボットビジネスが確実に成長する市場だ」(王氏)と判断しているためだ。今後は床用やトイレ用以外の掃除ロボットの開発・発売も検討していく方針だ。
(36Kr Japan編集部)
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