「1時間で生活のすべてが解決」、カルフール中国を買収した「蘇寧易購」の消費体験改革

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11月11日の独身の日前後に実施される中国最大規模のネット通販特売イベント「双11(ダブルイレブン)」に際し、小売各社はさまざまな戦略を展開した。家電を中心とした小売大手「蘇寧易購(Suning.com)」はネット通販に参入して10周年となる今年、「生活にまつわるすべてのモノ・コトを1時間で完結させる(一小時場景生活圏)」との新たなコンセプトを掲げた。

蘇寧易購の侯恩龍総裁はこの「1時間」構想を今年のダブルイレブンの最重要テーマの一つに挙げ、「ダブルイレブンを起点として、蘇寧は時間・体力・お金をかけない消費活動を推進し、消費体験革命を実現する」と述べた。また、同社の小売事業グループの副総裁(VP)で顧客・プラットフォーム運営を手がける范春燕氏は「ダブルイレブンはもはや安売りの代名詞ではなく、体験やシナリオの多様化を実践する場だ」と続けた。

「ほしいモノ・コトがいつでも1時間以内に」

蘇寧は今年、大手百貨店チェーン「万達百貨(WANDA DEPT STORE)」や仏小売大手カルフールの中国法人を買収し、小売現場において大規模なリソースを獲得、統合した。これにより、蘇寧は単なる価格合戦に挑む以外にも、同社傘下の全業態とサービス力を結集し「1時間」戦略を実行する統一窓口を手に入れたことになる。

モバイルインターネットや通信インフラが日増しに整ってきた現在、オンライン・オフラインに関わらず、消費体験は目覚ましく改善され、進化している。まさに小売業界の転換期だ。業界内の競争も過熱する中、蘇寧はこれまで小売事業で蓄積してきた能力を「1時間」戦略で結実させようとしている。

この戦略を具体的に説明すると、蘇寧は自社の取扱商品に「随時(いつでも)」カテゴリを追加した。このカテゴリに位置付けられた商品は、蘇寧が全国300都市で抱える1万以上の関連店舗を総動員して、1キロ圏内なら受注後30分以内、3キロ圏内なら受注後1時間以内に商品を届けるという宅配システムだ。「随時」カテゴリは今年のダブルイレブンから蘇寧のアプリに登場した。

「随時」カテゴリで取り扱う商品には三つの特徴がある。一つ目は、生鮮食品や生活消耗品、家電などあらゆるジャンルの商品が揃っていること。二つ目は、100億元(約1600億円)の特別予算を投じて商品値引きキャンペーンを行い、同カテゴリの周知を大々的に図っていくことで、三つ目は蘇寧が従来から提供してきた小売り以外のサービスを同カテゴリに統合したことだ。宅急便の集荷、家事代行、家電修理、ペットシッターなどを提供する訪問サービス「生活幇」、蘇寧で購入した商品の返金などを受け付けるアフターサービス「貴就賠」がこれに相当する。買い物だけでなく生活関連のサービスまでも、1時間以内に対応するということだ。

戦略の核心は「カルフール」とコンビニ事業「蘇寧小店」

蘇寧の小売事業が展開する巨大な布陣において、特殊な業態といえるのがカルフールとコンビニ「蘇寧小店(Suning Xiaodian)」だ。今年のダブルイレブンにおいてもこの二つは特別な役割を担った。

カルフールは蘇寧の傘下に入ってから初のダブルイレブン参加となった。同時に「1時間」戦略にも組み入れられ、実際のシナリオとの融合を試みる。そのためカルフールは宅配業務を重点的に強化していく方針だ。カルフールの商品を統括する龔文瑞副総裁によると、カルフールは上海と北京の既存店舗にある商品倉庫をフルフィルメントセンター(受注・発送・決済などを担う物流のバックヤード)として再構築し、蘇寧小店のアプリと連携させた。カルフールのアプリやミニプログラム、サードパーティーのプラットフォームとも紐づけて運営し、そのいずれのチャネルからの受注も一括して受け付ける。カルフールは年末までに全国210カ所でフルフィルメントセンターを新設・稼働させ、1年後には1000カ所まで増設する計画だ。

蘇寧傘下のコンビニエンスストア・蘇寧小店は、カルフールとはまた異なった文脈で「1時間」戦略に貢献する。小売事業グループの范春燕氏は、「蘇寧小店はいわゆる一般的なコンビニとは一線を画する存在だ」と述べ、「蘇寧小店は1時間戦略にとって重要な運営拠点であり、入口である。顧客と接点を持ち、顧客を理解した上でサービスを提供し、蘇寧が顧客にとってより身近であるための存在だ」と説明した。

実際、蘇寧小店が一般的なコンビニと最も異なる点は「サービス」だ。侯恩龍総裁は同社の今後の戦略として、蘇寧小店を同社のオンラインサービスへの入口とし、さらに1日24時間体制の地域サービスを提供するプラットフォームと位置づけ、飲食、家事代行などの総合生活関連サービスを提供していくとしている。

シナリオに基づく体験型消費の確立

「1時間で生活のすべてが解決」と銘打った体験型消費の確立が、蘇寧の次の10年を決めるキーポイントとなる。

今年のダブルイレブンにおいて、単なる価格合戦から体験・サービス・ソリューションを絡めた総合戦に転向した蘇寧は、これを推し進めるための技術力も万全で、多様性に富んだエコシステムを構築していくことになるだろう。

「『今日頼めば明日来る』ではすでに顧客を満足させるには不十分だ。これは都市部においてはより顕著で、『1時間』構想の価値はまさに顕在化してきている」。蘇寧の技術グループを統括する荆偉常務副総裁はこう述べた。これからの10年、蘇寧はあらゆるシナリオに基づいた小売りを展開することで、独自のビジネス理論を築いていくことだろう。
(翻訳・愛玉)

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