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中国の車載バッテリー世界最大手・寧徳時代新能源科技(CATL)と、中国電気自動車(EV)メーカー・蔚来汽車(NIO)がバッテリー交換事業で戦略提携を結んだ。世界最大規模のEV向けバッテリー交換ネットワークの構築や、次世代バッテリーの標準化を共同で進める。その一環として、CATLはNIO傘下でEVバッテリー交換ステーションの運営を手がける「蔚来能源(NIO Power)」に対し、最大25億元(約500億円)の戦略投資を検討する。
世界最大の車載バッテリーメーカーと、バッテリー交換ステーションを最も多く展開する企業との提携は、「バッテリー交換方式は本当に普及するのか」という市場の疑念に対する一つの答えを出したとも受け取れる。中国自動車市場のデータ機関「全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)」の崔東樹秘書長は「EV産業は、電池の充電・交換・アップグレードが可能な『2.0時代』へと急速に進んでおり、バッテリー交換は充電と並んでEVの主な電力供給の方式となるだろう」とコメントした。
NIOが推進する「BaaS」とは
関係筋によると、CATLはNIOの関連会社で車載バッテリーのリース企業「武漢蔚能(Wuhan Weineng)」にも出資を進めているという。
NIOが推進する「BaaS(Battery as a Service)」モデルで、バッテリー交換の運営と保守はNIO Powerが担い、ユーザー向けのバッテリーのサブスクリプション(定額課金)サービスは武漢蔚能が担当する。武漢蔚能はNIOからバッテリーを調達し、ユーザーにリースする形で効率的な運用を実現している。この仕組みは「バッテリーバンク(電池銀行)」とも呼ばれている。
武漢蔚能は2020年に、NIO、CATL、湖北省の政府系投資会社「湖北科投(Hubei Science & Technology Investment Group)」などが共同出資して設立した。現在、NIOが19.4%の株式を保有して筆頭株主となっている。一方で、CATLと湖北科投はそれぞれ10.6794%を持ち、三大株主となっている。すでに20GWhを超える電池資産を運営しており、資産の証券化やバッテリーの再利用など、さらなる収益拡大の可能性も探っている。
NIOはこれまでに、3182か所のバッテリー交換ステーションを全国に展開し、2024年末までに5000か所への拡大を目指している。同社のデータによると、第4世代のバッテリー交換ステーションの建設コストは1カ所あたり150万元(約3000万円)以下とされている。1800カ所としていた建設計画には、約27億元(約540億円)の資金が必要だった計算になる。巨額の赤字が続くNIOにとって、CATLからの投資は資金面の大きな支援となり、まさに「渡りに船」だと言える。
CATLの野心:バッテリーからインフラまで
一方で、CATLはこの投資を通じ、バッテリーのトップ企業としての野心的な経営戦略をさらに強化する意向を示している。バッテリーの資産管理や、交換ネットワークの構築に乗り出し、バッテリー交換事業のさまざまな段階に深く関わろうとしている。業界に詳しい関係者は「CATLの狙いは、EV業界『中国石油(Petro China)』になることだ」と説明した。
CATLは独自のバッテリー交換技術も展開している。2023年には交換式の「チョコレートバッテリー(Choco-SEB)」を発表し、標準化されたモジュールを異なる車種間で共用できるようにした。料金を抑えたサブスクリプション方式を導入し、たとえば、Choco-SEBの最新型「25号」は月額499元(約1万円)に設定している。この方式はすでに長安汽車(Changan Automobile)、広州汽車(GAC Motor)、北京汽車(BAIC Group)などの中国の主要自動車メーカーが採用している。また、今回の提携により、NIOの第3ブランド「ファイヤーフライ(Firefly)」の新型車もChoco-SEBに対応することとなった。
CATLは2025年までに1000カ所、最終的には3万カ所のバッテリー交換ステーション設置を目指している。
「充電」 vs 「交換」の争い
注目すべきは、交換ステーションは蓄電機能も備えており、各ステーションに搭載されたバッテリーは、電力を調整するバッファーとなるインフラとしての活用も可能だ。2024年にはCATLの蓄電池の出荷量が93GWhに達し、総出荷量の約20%を占めるまでに成長した。この比率は今後さらに上昇する見通しだ。
一方、バッテリーメーカーとしての競争相手でもある中国EV大手のBYD(比亜迪)も「メガワット・フラッシュ充電(兆瓦閃充)」と呼ばれる超高速充電技術の開発を進めている。「1秒で2km走行可能」とされ、世界最速の量産型充電技術として注目されている。
バッテリー交換と超急速充電ーー手法は異なるが、「ユーザーの充電体験をいかに最適化できるか」が、今後の普及の鍵となる。そして、その本質は、バッテリーという中核部品の「販売チャネルの確保」をめぐる業界の覇権争いにほかならない。
CATLは、積極的な投資や標準規格の制定、そして全国規模のネットワーク構築を通じて、新たな城の堀(参入障壁)を築こうとしている。
*1元=約20円で計算しています。
(36Kr Japan編集部)
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