IT御三家「BAT」が地図サービスで火花を散らす 勝負の決め手は高精度地図か

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IT御三家「BAT」が地図サービスで火花を散らす 勝負の決め手は高精度地図か

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決済サービスやフードデリバリーと違い、地図サービスの競争はこれまで沈黙を続けてきた。その理由は、地図事業はもともと収益化の余地が限られており、たとえ中国IT企業御三家「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」の後ろ盾があったとしても、企業内部では地図はただのインフラに過ぎず、BATがスマートシティやコネクティッドカー、モビリティシェアリングなどを実現するのをサポートする踏み台だとみられているからかもしれない。さらに地図データの収集には資格制限があり、将来的には参入のハードルがより高くなるとみられている。しかしモビリティシェアリングや自動運転の発展に伴って、地図サービス企業間の競争がついに表面化してきた。

前段階:集客口としての地図

BATが地図資源に狙いをつけたのは2013年にさかのぼる。バイドゥ(百度)がまずデジタル地図作成の「北京長地万方科技有限公司(Beijing Changdi WanFang Technology )」を買収。次にアリババが地図サービス「高徳地図(AutoNavi)」を完全子会社化し、ナスダックに上場していた同社は上場を廃止した。テンセント(騰訊)が参入したのは3社の中で最も遅く、2014年に12億元(約180億円)でデジタル地図作成などを手掛ける「四維図新(Navinfo)」の株式を取得。その後もトップクラスの測量・製図技術を持つ「大地通途(LINKTECH NAVI)」と「易図通(EMG)」などに投資している。

現在、モバイル地図業界の勢力構造はすでに確定している。ツートップの高徳地図と百度地図がユーザー規模で、騰訊地図に代表される二番手以降を10倍以上の差で引き離している。このことから、モバイル地図業界における競争は一段落したといえるだろう。

地図2.0時代:モビリティサービスに照準

モバイル地図業界は数年の発展を経て、ユーザー増加が伸び悩むなど市場は成熟期に向かっている。BATは地図とモビリティ向けモバイルサービスを連携させて、「地図+α」という組み合わせで可能性を探っている。

高徳地図は「モビリティサービス+情報エコシステム」の二本立てに路線を変更。モビリティシェアリングにおいて、同社は「滴滴出行(Didi Chuxing)」「首汽約車(Shouqi Limousine & Chauffeur)」「曹操出行(Caocao Chuxing)」ら配車サービス大手3社と提携したほか、アリババとの提携をさらに深めている。アリババ傘下のオンライン旅行予約サイト「飛猪(Fliggy)」、口コミサービス「口碑」、フードデリバリー「餓了麼(Ele.me)」などともつながった。このほか、高徳地図は政府向けのサービスにも力を入れている。高精度地図に全力を尽くすことはアリババの目指すスマートシティや今推進している「路車協調」の概念とも呼応するものだ。

テンセントはO2Oサービス「美団点評(Meituan-Dianping)」のアプリを利用した統合配車サービスを開拓しているところだ。またシェアサイクルの「モバイク(摩拝単車)」も傘下に収めている。騰訊地図が高徳・百度地図とのユーザー規模の差を短期間で縮めることは困難だ。しかしテンセントにはバイドゥとアリババが最も羨むウルトラ級の集客を誇るメッセージングアプリ「WeChat(微信)」がある。さらにミニプログラムという新しい入り口も利用することで、同社がスマートモビリティ事業を拡張するにつれ、地図は必ずもっと大きなパワーを発揮するはずだ。

バイドゥはモビリティサービスの競争ですでに遅れをとっている。オンライン配車サービスでアリババとテンセントは滴滴出行を選択したが、米Uberに賭けたバイドゥは失敗(Uber中国事業はその後滴滴出行に買収された)。ライドシェアに参入するもうまくいかず、百度地図がO2Oの力を借りて路線変更する計画は失敗に終わった。現在、同社が推し進める「all in AI」戦略では百度地図が検索エンジンと並ぶ目玉となり、AI実用化を試みる分野となっている。音声インタラクティブ機能のほか、AR(拡張現実)による歩行ナビゲーションや周辺検索などにAI技術が利用されている。

高徳地図、百度地図、騰訊地図 アプリ画面の比較

中国の調査会社「QuestMobile」のモニタリングデータによると、10月1日時点の高徳地図のデイリーアクティブユーザー数(DAU)はすでに百度地図を4000万以上上回っている。内部関係者によると、高徳地図は海外進出を計画しているという。

次なる戦場:高精度地図

自動運転技術の普及と成熟に伴って、高精度地図が今では自動車には欠かせないものとなっている。自動車メーカーに強いニーズがあることから、この分野もBAT傘下の地図サービス各社が力を入れていく方向となっている。

普通の地図と比べ、高精度地図にはセンチメートル単位での正確さが要求され、更新頻度も高く、地図の要素もより豊富だ。この業界には、すでに布陣を完成させたアリババとバイドゥ以外にも、高精度地図を自社業務に必要としていたり、すでに利用していたりする滴滴出行、美団点評、EC大手「京東(JD.com)」や、それ以外にも多くのスタートアップ企業がひしめいている。

高精度地図のデータ収集方式は一括して集中的に行う方法とクラウドソーシングを利用する方法の2種類ある。一括で行う場合は測量車を使用するがコストが非常に高い。基本的な測量車の製造費用は1000万元(約1億5000万円)前後だという。そこで、高徳・百度地図のような資金が潤沢な企業以外はコストと収集サイクルなどを考慮し、主にクラウドソーシング方式を採用している。完成車メーカーと提携し、車両の上にカメラやレーザーレーダーなどを設置してリアルタイムで収集したデータをクラウド上にアップロードする。それからビッグデータの解析に基づいて地図の製作を行う。

クラウドソーシング方式ではコストは安くなるものの、データの正確性やデータロスなどの問題もある。しかし収集サイクルがより短く、従来の測量車より小回りが利くなどの利点がある。

一部の地図サービス企業と自動車メーカーの提携 (公開資料から得たデータを36Krがまとめたもの)

今後2年でレベル2(部分自動運転)以上の自動運転車が発売されるということは、高精度地図の需要が集中する時期が近いことを意味する。自動車メーカーは一般的にサプライヤーとの提携に対し慎重であり、調達には他社の動きも影響する。現段階では最も多くの自動車メーカーの注文を受けた企業が、市場での受容度が最も高いと言ってよいだろう。そして最も早く市場に参入した企業がより多くのデータを得ることができ、先発優位性を持つことができる。

近い将来、高精度地図はかつてのモバイル地図事業者と同様に、淘汰、競争、吸収合併の道をたどる可能性もあるだろう。
(翻訳・山口幸子)

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