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ショート動画アプリ「TikTok(ティックトック)」が、世界各地で拡大を続けるなか、日本でもついに本格的な電子商取引(EC)サービス「TikTok Shop」を6月30日から始動した。アプリ内での商品購入が可能となり、既に化粧品やアパレル、家電など幅広いカテゴリでヒット商品が生まれ始めているという。
日本ではその経営が秘密のベールに包まれているTikTok。約1週間後の7月7日、TikTok Shop認定パートナー「GroupX」と共同開催した事業者向けの商談会に潜入し、その実情に迫った。
初速は好調、欧米勢を上回る手応え
「初速は絶好調で、その他の地域のトップ並みだ」。TikTok Shop Japan ゼネラルマネージャー 執行役員の邱開洲氏は説明会で強調した。
日本人の消費行動の特徴はリアル店舗での購買が他国と比較して充実していることだ。邱氏は取材に対し、“おもてなし”とも呼ばれるサービスの良さなど対面での購買が定着していることを理由として挙げた。
こうした事情もあり、EC業界にとって日本市場は“フロンティア”とされている。EC比率は中国や韓国、米国などと比較して低い水準にとどまっているが、堅調な成長を続けている。
また、日本には月間3300万人以上のユーザーがTikTokとTikTok Liteにいるとされ、2024年のTikTok経由での消費が2375億円に達していたとの推定もある(2025年6月発刊「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」)。今回のTikTok Shopの日本における参入で日本の購買に一気に変化を起こす可能性もある。

“欲しい”に気づかせる新型EC
「TikTok売れが、起きています」。邱氏は会場に呼びかけた。
TikTok Shopは「ディスカバリーEコマース(発見販売)」と自らを定義し、これまでのECなどとは異なるECだと位置づけている。ショート動画を見てスワイプしていると、レコメンドシステムによって計算された“欲しい商品”の動画が流れてくる。そして、購入にまで結びつく。深層心理にあった欲求が呼び起こされ、発見することで購買につなげるという手法だ。消費者がみずから自分の必要なものを検索して、最適な商品を選び出す従来型ECとは異なり、能動的に潜在的な消費者にアプローチできる点が大きな特徴になる。
既に、花王やアディダス、パナソニック、コカコーラなどの化粧品、衣料品、家電、食品などを中心とした分野で大手企業が活用を始めているという。
商品販売の方法は、ライブ配信による「ライブコマース」以外にも、カートが付いたショート動画や、今月中にも開始するという検索して選べる従来型ECのような「ショップタブ」機能など、さまざまな導線を組み合わせている仕組みだ。
TikTokの利用者が若年層中心で、客単価は低いのではないかと思いがちだが、1週間の実績では邱氏は「5000円以上の商品も多く売れ、2万円以上する魚の容器が初日で完売した」などと話した。ほかにも「広告を使わずに、4桁の個数を販売できた商品もある」と明かした。
これまで、地方などで埋もれて販売手法がなかった商品が突然売れ出すという現象が世界中で起きており、インバウンド(訪日客)などで発掘しきれていない商品が爆発的に売れる可能性を秘めているという。
完成された支援システム
日本は、すでに先行してローンチされている16カ国で完成されたECの販売を活用できるのもメリットだ。TikTok日本のEC展開を支援するスタートアップ企業「GroupX」を立ち上げた張娜(Cho Na)社長は、中国でのEC支援で実績を積み上げ、日本国内にインフルエンサーを多数擁した状態で、TikTok Shopの参入の日を迎えた。同社所属クリエイター、卓球の五輪メダリストの福原愛さんをインフルエンサーとして起用し、中国で1回で770万円を売り上げたこともあるという。

張社長は「日本参入に向けて、昨年から密かにインフラ構築を進めてきた」と語る。「TikTok Shop Partner(TSP)」、「TikTok Affiliate Partner(TAP)」、そして「Creator Agency Partner(CAP)」といった3つの資格を得て、店舗運営や倉庫運営、SNSマーケティング施策、クリエイターやライバーの育成などさまざまな支援手法を確立している。千葉県船橋市に倉庫を用意し、400平方メートルの東京・渋谷のライブスタジオなどを既に整備した。さらに、パートナー企業との協業も進め、支援体制を強化して日本のヒット商品を発掘していく方針だ。

張社長はTikTok Shopの強みについて「人がモノを探すだけでなく、モノが人を探すレコメンドシステムだ」と強調する。中国市場でスキンケア・化粧品、アパレルなどで百億円規模の売り上げを達成し、2000人以上のクリエイターを様々な場面で活用してきた経験を日本市場に投入すると表明し「TikTok Shopを盛り上げることに尽力したい」と述べた。邱氏も、GroupXを「ディスカバリーEコマースに強みを持つ、公式認定パートナー」と評しており、今後のさらなる展開に期待を寄せている。

GroupXはすでに日系大手の化粧品メーカーなどを顧客に抱え、TikTok Shopのリリース直後(7/9時点)にもかかわらず、百万円超えの売上実績を上げており、順調な滑り出しを見せている。リリース前のテスト運用では、クリエイターのMOSCO | モスコ(@dufayel_)さんとスキンケアブランドのコラボ配信では、2.5時間にわたり450万円の売上を記録したという。

邱氏は、TikTokにとっても「これまでにない新たな展開が日本で生まれてくると確信している」と語った。今後、日本の消費者とTikTokがEC市場でどのような化学反応を繰り広げるか注目だ。
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