日経×36Kr トップ経営者対談 「 ニューエコノミー時代におけるメディアの進化」@WISE2019

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

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日経×36Kr トップ経営者対談 「 ニューエコノミー時代におけるメディアの進化」@WISE2019

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2019年11月26日〜27日、スタートアップやIT業界に特化した中国の最大級メディア「36Kr」は、北京国際会議中心(China National Convention Center)において「2019WISE 新商業大会」を開催した。同イベントは中国ニューエコノミー領域ではもっとも盛大なカンファレンスとして今年で7年目を迎える。2018年の来場人数は約2万人だった。

36Krはこれまで10年間、中国のデジタル経済やイノベーション産業の成長に注視し、資源や情報、ブランドを介した支援によって各業界の主要企業を結び付け、ニューコマースの展開を促してきた。

今日、インターネット産業の発展は中盤に入り、新たな技術、新たなシナリオが既存産業を根本から覆し、再構築している。同社は本イベントに、世界のスタートアップ・大手IT企業・投資機関・地方政府・既存型企業などを招き、産業とイノベーションの深い融合に関連するさまざまな挑戦や好機をシェアしていただく。

今年5月、グローバル戦略の一環として、36Krと日本経済新聞社は提携関係を締結した。26日の大会の開幕式では、日本経済新聞社専務取締役の野村裕知氏が登壇し、36Kr総裁の馮大綱と「ニューエコノミー時代におけるメディアのありかた」について対談をした。

以下対談内容である。一部編集あり。

ニューエコノミー時代の特徴

馮:
36Krはメディアとしてまだ若いですが、時代の波に乗って中国のニューエコノミー(New Economy)時代とともに成長してきました。一方、140年以上の歴史を持つ日本経済新聞社は世界の経済やビジネスのトレンドの変化を長期間見てこられました。ここでお聞きしたいのは、現在進行中の「ニューエコノミー」がこれまでの経済・ビジネスの変革と異なる点は何かということです。

野村:
まず、変革のエネルギーがあふれる場にお招き頂き、大変光栄に思います。若い皆さんが、新しいビジネスを次々に立ち上げる姿をみて、興奮しています。

ご紹介いただいたように、日経は140年以上の歴史を持つ新聞社です。単に歴史の「長い」ことに価値があるとは思いません。私が誇りとするのは常に時代の変化に合わせ、自らを変革してきた、日経の歴史なのです。

今われわれが目にしているニューエコノミーはまさに、「データ・エコノミー」と性格づけられます。データは「21世紀の石油」とも言われます。自動車や半導体、パーソナルコンピューター、インターネットなど過去のイノベーションは、いずれもアメリカがフロント・ランナーでしたが、データの世紀を勝ち抜く国は中国だと思います。

中国の強さを「人口が多いから」という人がいますが、私の考えは違います。新しいデジタル・テクノロジーを実際の生活の中で使ってみようという社会の活力がある。社会実装するスピードが、けた違いに速い。規模ではなく、スピードが競争力の源なのです。このように、中国がフロント・ランナーであるという点が、過去の変革との最大の違いではないでしょうか。

インターネット時代におけるメディア企業の進化

馮:
ネットの普及により、個人が情報を入手する方法が変わり、読者のニーズも多様化してきています。メディア企業もビジネスモデルの変更を迫られている中、日経はどう進化しているのですか?

野村:
日経は2010年3月に、デジタル媒体である「日経電子版」をローンチしました。紙中心のメディアからデジタル中心へと事業モデルを転換しています。「紙からデジタルへ」の変革はよくある話ですが、ポイントは読者に課金する仕組みを導入したことです。

10年前、ネットでの課金ビジネスは成功しない、と誰もが言いました。しかし、付加価値の高いコンテンツや情報であれば、デジタル版でもユーザーはお金を払ってくれることを、日経電子版は証明しました。

世界中のニュース・メディアを見てください。読者から購読料をいただくサブスクリプション・モデルを重視するトレンドが広がっています。広告収入だけに依存しないモデルです。

日経が4年前に買収したイギリスのフィナンシャル・タイムズは、世界の中でもいち早く、デジタル版でサブスクリプション・モデルを導入し成功したニュース・メディアの1つです。我々はその成功体験を買ったともいえます。そのFTの有料購読者も加えると、日経グループは世界のニュース・メディアのなかでトップ3に入ります。

グローバル戦略

馮:
2017年から36Krはグローバル戦略を打ち出しました。今はシンガポール(東南アジア)、日本、インドで事業を展開しており、また今年10月、香港に36Kr Global Holdingsを設立しました。海外進出をしようという中国本土企業は多数ありますので、ぜひそういう企業の情報を海外に向けて発信していきたいと思います。日経は、グローバル戦略にどう取り組んでいますか?

野村:
イギリスのフィナンシャル・タイムズが手本になると思います。FTの読者の8割は、イギリス国外の人たちです。内向き志向だと言われるアメリカでも、多くの人たちがFTを読んでいます。

アメリカのメディアが伝える情報は、アメリカ・ファーストで、バイアスがかかっているところがあると、わたしは思っています。アメリカのメディアもやはりローカルなんですね。だからこそ、アメリカのなかでも一部のリーダー層の人たちは、世界から自分たちがどうみられているかを知るために、FTを読んでいます。

日経もFTと同じような役割を世界で果たせると思っています。日経の社是は「中正公平」(Fair and Impartial)です。データに基づく客観的な事実を読者に伝えるというのが日経のメディアとしての基本姿勢であり、そこが強みです。

ローカルなメディアからでは得られない、新たな視点や客観的な情報を提供していけば、日経も世界の人々にもっと読んでもらえるメディアになれると信じています。

日経、FTグループは世界の中でユニークなポジショニングを築けると思います。両社とも大陸の近くにある島国を拠点としています。それぞれの国のなかのローカルなメディアの競争から一歩引いて、新たな視点を提供していくのが我々の使命だと思っています。

New Identity and Future of Media

馮:
IT技術の急速な進歩により、メディアの役割は、単に情報を集約し多くの人に届けるという古典的なものから変わりつつあります。弊社は長年蓄積したリソースを統合させ、大手企業、新興企業、投資機関など、それぞれニーズに応じる企業向け支援も行っている。ビジネス環境が激変するなかで、メディアが果たす新しい役割とは何だと思われますか?

野村:
世界のメディアの勢力図は10年後に、その顔触れが大きく変わると思います。いまトップ10を占めるメディアが10年後も同じポジションに残れる保証はありません。

メディア業界の世界的な競争を勝ち抜くための条件は2つあります。まず、自己変革力です。「壊される前に自らを壊せ」が我々のスローガンです。これをやり抜くガッツがなければダメです。

もう一つの大事な点が、読者といかに良い関係性を築くか、です。今までのメディアは取材先との関係作りには熱心だった。しかし、読者がいつ、何を求めているかには案外、無頓着でした。それを変えなければいけない。

特に、読者から購読料をいただく「課金モデル」にシフトする時には読者とのエンゲージメントすなわち読者との強い絆が決定的に重要な要素になります。例えば、FTでは独自のエンゲージメント指数を開発し、それをKPIにして読者拡大とロイヤリティー(読者がFTに強い愛着を持ち利用頻度も上がること)を、高めることを両立させています。すでに読者作りはサイエンスの世界なんです。

日経もAIなど最新のテクノロジーを取り込んで、コンテンツのパーソナル化に力を入れています。朝起きたら歯磨きするように、皆さんの日常生活の中に溶け込み、頼りにされる存在になりたい。それが未来のメディアにとって究極の姿です。

今回、わたしはこの会場に来て、36Krが読者の皆さんとリアルの場で大変密接な関係を築いていることを知り、感動しました。デジタルの時代でも、こうしたパーソナルな関係はますます大事になると思います。

日経と36Krの提携効果

馮:
この度、36Krは日経とパートナーシップを締結できて非常に光栄に思っています。我々としては、ぜひこれをきっかけに、グローバルコンテンツの拡充やブランド構築を行いたいと思います。その一方、歴史ある日経は、新興メディアである弊社との提携に、どのようなシナジー効果を期待しているのかお聞かせください。

野村:
日経グループとしては、36Krとの協力により、中国のスタートアップやイノベーションに関するニュースをより多く、日本の読者に届けられることに魅力を感じます。「日経は中国のテクノロジー情報に強い」というブランドイメージを築きたいと思っています。

日本語に訳した36Krの記事コンテンツを今年6月から、日経の紙の新聞と電子版に掲載しています。日本の読者は、これまで触れることのほとんどなかった、中国のスタートアップの活躍ぶりを伝える多くのニュースに、高い関心を寄せています。日本をはじめ世界の多くの読者は、中国におけるイノベーションの動向について、もっと知りたいと考えています。

また、日経は、Nikkei Asian Reviewという英語の媒体も持っています。36Krの英語の記事コンテンツも、日経のこうした英語ニュースのプラットフォーム上で世界に向け発信しています。
36Krは中国のスタートアップのエコシステムの一翼を担う存在です。その36Krとの提携は日経にとって、中国のテクノロジーの動向をフォローするうえで欠かせません。

(作者・編集:Ai)

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