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QRコード決済やシェアサイクルなどの「中国の新四大発明」に続いて、ショートムービーも海外市場に進出、せめぎ合いが続いている。
今のところ、「Tiktok(中国版では「抖音」)」は日本、米国、タイ、インド、ドイツ、ロシアなどの現地アプリランキングで何度も1位を取っている。TikTokと同じく短編動画のアプリ「Kwai(中国版では「快手」)」は、ブラジルで何度もアプリランキングのトップに立った。アリババ傘下のインド市場向け動画アプリ「VMate」は、月間アクティブユーザー数(MAU)堂々の5000万人だ。ライブ配信プラットフォーム「YY(歓聚時代)」傘下のシンガポール発アプリ「Likee(旧称LIKE)」は、東南アジアとロシアで主要な位置を占めている。
これらのアプリを運営するバイトダンス(字節跳動)、快手科技(Kwai Technology)、アリババ、YYなどはそれぞれ海外市場で帝位を狙う。最後に勝つのは誰か。
海外進出ブーム、世界各地を席巻
2014年に北米でローンチしたリップシンク動画アプリ「Musical.ly(ミュージカリー)」は、中国発短編動画アプリで海外進出のトップバッターだ。2016年にはユーザーが1億人以上になり、米国App Storeランキングでトップに立ったこともある。2017年、Musical.lyはバイトダンスに買収され同社のアプリTikTokと統合、重要市場である米国で足場を固めた後、日本と韓国にも進出した。
YYが短編動画アプリの海外展開を開始したのは2016年だ。傘下のLikeeは、ロシアで大人気アプリの座を不動のものとしている。YYはライブ配信アプリ「BIGO Live」、「Nimo TV」、「Yome Live」、「Cube TV」に加え、短編動画アプリ「Likee」などで海外事業の布陣を敷いている。
11月13日、YYは、2019年第3四半期の財務諸表を公表した。今期、モバイル利用のグローバルMAUは4億7010万人に達し、そのうち海外ユーザーは約77.9%を占めた。YYは今や重心を国外に移し、バイトダンスが畏敬の念を抱く海外ライバルになっている。
YYが東南アジアを主戦場にした頃、快手は海外版のKwaiをスタートさせた。同アプリはブラジルのアプリランキングで複数回にわたり首位となり、さらに第三国への進出を繰り返している。
この分野におけるの海外バトルでは、アリババも見過ごすことのできない実力者だ。同社の大文娯事業グループは初のインキュベート案件としてインド市場にVMateを投入させた。同アプリのMAUは現在5000万人に達している。
北米、日本、韓国からインドへ転戦
バイトダンスのグローバル戦略は「技術の海外進出と運営の現地化」だ。中国のビジネスニュースメディア「晩点(LatePost)」は今年9月、バイトダンスが自社のTikTokとインド版「Vigo Video(「火山小視頻」の海外版)」の2アプリを一本化させると報道した。
米モバイルアプリ調査会社「Sensor Tower」の最新データによると、TikTokはアップルのApp StoreとグーグルのGoogle Playで合計15億回以上ダウンロードされたという。ここ2年間でTikTokの提供エリアは150以上の国や地域に達した。
ユーザーが急増した要因は、社を挙げた巨額のプロモーションだ。フィリピンの短編動画サービス事業者によれば、2018年、TikTokはフィリピンだけでも約1000万ドル(約10億円)をPRに費やし、通年の損失額は12億ドル(約1300億円)に達したという。
現在、北米、日本、韓国の3市場は成長のボトルネックに直面している。続いて、人口13億5300万人の巨大なインド市場が激戦地となった。
データによると、インドでは今年5月時点でTikTokがトップを独走しているが、YY傘下のLikeeも急速に追い上げており、バイトダンスがインドで展開する「Helo」とアリババ傘下のVMateがその後を僅差で追っている。
今年3月、YYは、シンガポールを拠点にライブ配信を手がける「BIGO (BIGO Technology )」を買収、150を超える国と地域をカバーするようになった。3カ月後には傘下のLIKEの名称をLikeeに変更した。今後、インドで大規模なマーケティングを行い、3年間で1億ドル(約100億円)を投資するとしている。
アリババ傘下で生まれたVMateは今年5月、1億ドル以上を調達した。その後5カ月経たずして、VMateのMAUも2000万人に増加した。
Kwaiもブラジルで目覚ましい成績を出し続けている。そのライバルであるTikTokを手がける抖音(Douyin)国際化事業部は今年9月、ブラジルに視察に行き、10月には同地を重要市場に設定した。KwaiとTikTokの両者はインドに次いでブラジルでも一戦交えることになるかもしれない。
中国式イノベーション、道は険しく遠い
ショートムービーは世界中のユーザーにアジア発インターネット商品の魅力を知らしめた。しかし、それは大規模な投資と引き換えにもたらされたものだ。「ショートムービーの海外進出は大手企業の戯れだ。大金を費やして市場を買うことになるのは必至だ」と業界関係者は語る。
ある海外メディアは、「InstagramがTikTokをベンチマークにした新機能Reelsを追加した」と報道した。前述の業界関係者は「これは悪いニュースではない。外国が我々を模倣し始めたということは、中国の事業モデルが正しいことを証明しているのではないか」と述べる。
海外進出の過程で、経験不足、現地化戦略、収益化の難しさなど、さまざまな問題に直面するだろう。各国の国情、インターネットの普及具合、文化的要素に基づき、プロモーションや運用戦略をどう策定していくかは、各社の知恵の見せ所だ。バイトダンスがトップに立つか、YYが安定と改革を両立させるのか、はたまた失速した快手が巻き返すのか、それともアリババが最後にブレイクしてすべて持っていくのか、今後の勢力構造は予測し難い。しかし、いずれのプレイヤーもすでに準備を進めており、それぞれ一城を占拠しているのは事実だ。
作者:Tech星球(ID:tech618)、马微冰
(翻訳・永野倫子)
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