妊婦と乳児に特化 遺伝子検査で科学的な育児をサポートする「安我基因」

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妊婦と乳児に特化 遺伝子検査で科学的な育児をサポートする「安我基因」

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コストの低下と精密医療の促進で、遺伝子検査のハードルが大きく下がっている。病気発症リスクを調べるものからアルコール分解酵素の遺伝子型判定、美容・ダイエット指導を目的とするもの、祖先のルーツを知る検査まで、ますます多くの遺伝子検査商品が消費者の視野に入るようになってきた。臨床分野や科学研究における遺伝子検査に比べると、個人向けの遺伝子検査業界は参入のハードルが比較的低く、市場はレッドオーシャンの様相を呈しているが、消費者にとってメジャーなブランドはいまだに現れていない。

「上海解兮生物科技(Shanghai GeneX Biotech)」 が展開する遺伝子検査プラットフォーム「安我基因(ANDALL)」はこのような局面を打開したいと考えている。同業の「23魔方(23mofang)」や「微基因(WeGene)」「水母基因(somur)」など早くから投資家に注目されてきた企業に比べると、2018年4月に設立した安我基因はまだ新しく、ブランド知名度も低い。激しい競争の中でどうすれば優位性を保てるのか。同社は妊婦と乳児、および女性の遺伝子検査という専門分野に特化することを選択した。

安我基因の創業者でCEOを務める呉健氏によると、同ブランドは市場の成熟度やニーズの調査研究、利用シーンの開拓など多くの検討を重ねて生まれたものだという。

具体的には、まず、ここ数年で遺伝子検査に対する理解が広がり、人々が遺伝子検査の価値に注目し始め、ニーズが徐々に増えてきていること。中国と米国を比較したあるデータによると、2012年、個人向け遺伝子検査を受けた米国人は33万人で、市場浸透率は0.1%だった。2018年にこの数字は2650万人にまで増え、市場浸透率は7.5%と6年間で数十倍にもなっている。中国では2018年に個人向け遺伝子検査を受けたのは100万人に過ぎないが、2022年には2000万人にまで増加すると予測されている。今が市場参入の黄金期だ。

次に、ブランド立ち上げに先立って同社が行った大規模な市場調査によると、個人向け遺伝子検査の利用者は主に3タイプに分かれたこと。一つ目は「計画タイプ」。「三高(高学歴・高収入・高齢)」女性に代表されるこのタイプは遺伝子検査の結果をもとに意思決定を行いたいと考えている。二つ目は「問題タイプ」。母親グループに代表されるこのタイプは、育児をする過程で多くの問題に面しており、早急に解決したいと考えている。三つめは「興味タイプ」。若い男性を主とするこのタイプは、未知のものに強い興味を持つ。

呉氏によると、多くの遺伝子検査関連企業は三つ目の「興味タイプ」に焦点を当てているが、前2者のグループが持つニーズは十分にカバーされていないという。そのため同社は母親と女性をターゲットとして同社の位置づけを決定。この2つのグループが持つニーズは非常に多いという。

「例えば、子どもに初めてアレルギー症状が現れた時、通常ならば病院に行って採血をする。その他の方法で母親がアレルギーの原因を判断するのをサポートすることはできないだろうか。あるいは、子どもの身長や運動能力が他の子どもに及ばないと悩んでいる母親に、その原因が理解できるようサポートできるツールはないだろうか。これが我々のやろうとしていることだ」と呉氏は話す。

安我基因の子ども向けアレルギー検査商品

技術面で同社が差別化を図っているのは以下の2点だ。一つ目は遺伝子配列解析大手の米イルミナが中国人向けに作成した遺伝子検査チップを使用していること。二つ目は独自の「GenoPB™」タグと「天罡™」ビッグデータを活用していること。遺伝子、行動、表現型などのデータを用いてアルゴリズムによるマッチングを行い、ユーザーにカスタマイズしたソリューションを提供する。

商業化にあたって、同社はまず、アレルギー源と栄養の分析から始めた。母親たちの「科学的な育児」をサポートし、そこから徐々に妊娠や出産、スキンケアなど女性ユーザーのあらゆるシーンにサービスを拡大してきた。同社は子ども向けのアレルギー遺伝子検査や栄養遺伝子検査、美肌のための遺伝子検査、体型管理のための遺伝子検査など多くの商品をリリースしており、単価は199元(約3100円)だという。

アレルギー関連商品を例にとると、安我基因は接触性のアレルギー源や気道のアレルギー源、食物のアレルギー源や遺伝性のアレルギー体質など各方面にわたる14項目のアレルギー源を確定することができる。母親が自分の子どもが持つリスクを知ることをサポートし、明確な指導を行う。

例えば、子どもにアレルギー検査を行い、その子がDHAの吸収能力において一般的な子どもより若干劣ることが分かった場合、同社は母親に食事や栄養補給、日常の生活習慣など各方面にわたる体質改善のソリューションを提供。体操の仕方を教える動画を提供することもあるという。

安我基因の子ども向けアレルギー遺伝子検査の報告書(一部のみ表示)

安我基因の販路戦略は非常にシンプルだ。呉氏はそれを「母親たちがいるところに我々は行く」との一文にまとめている。現在、同社は子ども用品専門店の「孩子王(kidswant)」や育児コミュニティーサイト「宝宝樹(Baby Tree)」、大手ECサイト「京東(JD.com)」のマタニティー部門、マタニティー・ベビー向けのECサイト「楽友孕嬰童(Leyou)」、アリババ傘下の大手ECモール「天猫(Tmall)」のマタニティー部門など、オフライン・オンラインともに多くの販路を展開している。呉氏によると、同社の売り上げはすでに100万元(約1600万円)に迫り、個人向け遺伝子検査ブランドとしては最も成長スピードが速いという。

呉氏は自社の競争力を保つ方法について、娯楽的な価値をどれほど強調したとしても、個人向け遺伝子検査はやはり専門的な精密医療の方向へ向かうと指摘。「遺伝子検査技術は、単なる将来的な生活密着サービスと精密医療の『エンジン』にすぎない。エンジンに頼るだけでは実際的な価値を生み出すことはできない。どのようにして消費者側、医療機関側における遺伝子検査技術の利用価値を発掘するかが、企業の競争力と業界全体の先行きのカギとなる」と語った。

(翻訳・山口幸子)

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