英ゲーム開発支援企業「インプロバブル」が中国に進出 ソフトバンクやネットイースが出資済み 

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英ゲーム開発支援企業「インプロバブル」が中国に進出 ソフトバンクやネットイースが出資済み 

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イギリスのゲームテクノロジー開発企業「インプロバブル・ワールズ(Improbable Worlds)」はこのほど、テンセントのクラウドプロバイダー「テンセント・クラウド(騰訊雲)」と戦略提携を行い、傘下で運営するクラウドベースの開発プラットフォーム「SpatialOS」の中国での導入を共同で進めていくことが分かった。

2012年創業のインプロバブルは英ロンドンに拠点を置く。主力製品SpatialOSはゲーム開発者に対し、マルチプレイゲームの開発技術サポートやクラウドによる委託管理プラットフォームを提供するものだ。サービスは主にクラウドプラットフォームを通じて提供される。これまでグーグルクラウドとも戦略提携を結んでおり、プラットフォームは英国、カナダ、米国などですでに導入済みだ。

中国ゲーム開発業界の巨大なポテンシャル

テンセントと「伽馬数据(Gamma Data)」が共同で発表した「2019年ゲーム産業トレンドリポート」によれば、2019年の中国ゲーム市場の実売上高は2300億元(約3兆5900億円)を突破し、ユーザー規模は6億4000万人に達すると予想されている。ここ数年、中国のゲーム産業は国内市場の足固めに加え海外進出も加速させている。2019年の中国製モバイルゲームに対する海外ユーザーの支出は、海外のモバイルゲーム全体に対する支出の16%を占め、過去2年で60%増加している。海外市場は中国産ゲームの新たな成長の場となりつつある。

巨大な国内市場と新たにわき起こった海外進出をめぐる需要は、中国のゲーム開発業界に新たな可能性をもたらした。インプロバブルもこうした市場を見込んで中国進出を果たし、2020年初めにはSpatialOSをローンチさせる計画だ。続いて中国のゲーム開発者に対する技術支援、さらにグローバルサーバー委託管理業務、世界中のパートナー網およびゲーム開発者コミュニティーをベースとして、中国製ゲームを海外で商業化させるサポートも可能だ。

ゲーム開発者のSpatialOSに対する理解を深め、彼らにより良く使用してもらうため、インプロバブルはテンセント・クラウドと「礴雲卓遊計画(Improbable/Tencent Cloud Developer Program)」を立ち上げている。同プロジェクトはゲーム開発者に7200万元(約11億2300万円)に相当するサポートを提供するもので、現在はインプロバブルの中国語サイトからの申請をすでに受け付けている。

ゲームの開発サポートをクラウドで実現

インプロバブルは、ゲーム開発者が開発過程における各種の技術的リスクを回避し、開発効率を引き上げる支援を行うことを趣旨として設立された。共同創業者でアジア地区CEOのピーター・リプカ氏はSpatialOSについて、「ゲーム開発企業がコンテンツ開発や革新に伴う難題を解決するための技術ソリューションと考えてもらいたい」と述べている。

インプロバブルの共同創業者でアジア地区CEOのピーター・リプカ氏

同社のプラットフォームにより、開発者はゲーム設計段階で大規模なテストプレイを速やかに実施できる上、開発の中後期ではバックエンドフレームワークを変更せずともゲームのインタラクティビティを自由に変更できる。またSpatialOSの一連のツールを使用することで、制作~テスト~学習のサイクルを加速させ、それによりスピーディーなゲームの更新も可能となる。従来のゲーム開発のテスト周期は年あるいは月単位だったのに対し、SpatialOSでは毎週さらには毎日でもテストを実施できる。

インプロバブルの顧客は中小規模の独立系ゲーム制作会社や大手ゲーム開発会社であり、従量課金制を収益モデルとし、定価基準も固まっている。大手ゲーム開発会社に対しては、具体的な業務ニーズに合わせたカスタマイズ技術サポートも提供する。同社はすでに中国のゲーム開発会社と提携しており、ネットイース(網易)のVR対応オープンワールドサバイバルRPG「Nostos(故土)」はインプロバブルとの共同開発によるものだ。

マーケティング戦略に関しては、主に専門の事業開発チームにより海外での顧客獲得を進めている。中国市場においては「礴雲卓遊計画」に加え、自社で構築したゲーム開発者コミュニティーを通じて開発者と効率よく意思疎通を行い、理解を深めたいとのことだ。

IPコンテンツで若者の人気獲得も狙う

インプロバブルのSpatialOS上では現時点で20以上のゲームの開発が進行中だが、注目すべきは同社が自社ゲームの開発もすでにスタートしている点であり、英国、カナダ、米国ですでに開発スタジオを設けている。インプロバブル中国法人の共同創業者である趙一帆氏によれば、ゲームの自主開発により顧客である開発者の真のニーズを把握できる上、開発が成功すればさらなる自信にもつながると述べている。現在、インプロバブル傘下のMidwinterEntertainmentによるサバイバルゲーム「SCAVENGERS(スカベンジャーズ)」の開発が進行中だ。

インプロバブル中国法人の共同創業者である趙一帆氏

ゲーム業界のユニコーンに成長

通常、ゲーム1タイトルの開発からローンチまでには、2~3年あるいはそれ以上の時間を要する。ゲーム開発の全ライフサイクルを支えるサービスプロバイダーとして、インプロバブルには十分なキャッシュフローも欠かせない。同社はこれまで数度の資金調達を実現しており、2017年5月にはソフトバンクグループが主導するシリーズBで5億200万ドル(約550億円)を調達したほか、2018年7月にはネットイースから5000万ドル(約55億円)の戦略出資を受けた。

ネットイースとの業務・資本レベルでの高度な提携も、インプロバブルが中国市場に進出する契機となった。今後はアジア太平洋本部を上海に設置する予定で、上海や広州のほか北京や深圳にもエリア支社を開設するという。さらに中国でのR&Dセンターの設置を通じて、現地のIT人材のポテンシャルを発掘し、中国ゲーム産業のグローバル化をサポートしたい考えだ。
(翻訳・神部明果)

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