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中国の電子商取引(EC)大手「唯品会(VIP.com)」は昨年11月24日、傘下の物流企業「品駿快逓(PINJUN EXPRESS)」が同月下旬に宅配事業から撤退することを発表した。また、中国宅配大手の「SFエクスプレス(順豊速運)」と業務提携することで合意し、SFエクスプレスが宅配サービスを担うことも合わせて発表した。
これにより、品駿快逓の宅配部門は解散となりそうだ。ただし、唯品会が国内に展開する物流センター7カ所の運営は続けられることから、倉庫部門は維持される見通し。
品駿快逓の宅配スタッフは2018年12月時点で3万人以上に上る。宅配事業をSFエクスプレスに明け渡した後、この3万人のスタッフの処遇をどうするかが唯品会にとって最大の問題だ。
唯品会によると、品駿快逓の既存拠点とスタッフを対象とし、唯品会の物流センター7カ所への配置転換を提示している。さらに、勤続年数を引き継ぐ形で、自主的にSFエクスプレスの宅配スタッフの一員になることも選べるという。配置転換や自主退職が受け入れられない場合、品駿快逓は労働法などの規定に基づき、補償金を支払う考えを明らかにしている。
品駿快逓は2013年に設立された唯品会の完全子会社で、唯品会共同創業者兼CEOの沈亜氏が株式の65%、同じく共同創業者の洪暁波氏が株式の35%を保有している。
2018年12月時点で国内に31支社を構え、華南・華北・西南・華中・華東・東北地区に物流センター6カ所を置き、総面積は290万平方メートルを超える。また、昨年8月15日には同年7月の時点で22四半期連続の黒字を達成し、売上高は前年同期比31%増、昨年上半期の純利益は2018年通年を上回ったことを明らかにしている。
好調な業績にもかかわらず、唯品会はなぜ宅配業務をSFエクスプレスに渡さなくてはならなかったのか。それは物流というアセットヘビー型事業を自前で展開することが唯品会の決算書に影を落としたためだろう。品駿快逓の配送依頼主は主に唯品会であり、声明の中でも「単一のプラットフォームによるスケールメリットには限界があり、唯品会の1件当たり物流コストは業界平均を常に上回っていた」と言及している。
唯品会のフルフィルメント比率はここ2年、概ね9%前後で推移している。同じく物流システムを自前で運営するEC大手「京東(JD.com)」の場合、昨年第3四半期(7~9月)のフルフィルメント比率はわずか6%だった。唯品会はコスト削減に向け、昨年初めより宅配事業の外部委託に乗り出した。同年6月には全国規模で配送の4割を宅配大手の「韻達快運(Yunda Express)」に外注。そして今回は残る部分をSFエクスプレスに渡した格好だ。
事情に詳しい関係者によると、品駿快逓の配送料金は8元(約130円)を超えるケースがほとんどで、決して安くはなく、クレーム率も高かったという。SFエクスプレスはEC事業者向けの優待料金を設定しており、それが唯品会の物流に関するフルフィルメント比率の引き下げに役立つとみられる。また、SFエクスプレスの口コミ評価が高いことも、ユーザーの唯品会の配送サービスに対するイメージ改善につながる見通しだ。
SFエクスプレスにとっても品駿快逓の宅配業務を引き継ぐことの必要性は大きい。同社が最も重視するのは唯品会が生み出す莫大な数の配送案件だ。
昨年5月の宅配業界データによると、「中通快逓(ZTO Express)」の月間取扱件数は10億件を超え、シェアは業界トップの19.3%。一方、SFエクスプレスのシェアは業界第6位の7.3%にとどまる。また、「京東物流(JD Logistics)」が京東以外の配送依頼も受けるようになり、消費者市場で存在感を示し始め、SFエクスプレスを追い上げている。
取扱件数の少なさは売り上げの伸びと利益の足かせになる。SFエクスプレスも指をくわえて見ているつもりはないものの、これまでは客単価の高さに加え、EC最大手のアリババグループとの関係もぎくしゃくしており、ECサイトからの配送依頼を取り込む力が弱かった。このため、長らく業務用貨物の配送に注力してきたが、ECサイト関連貨物の爆発的な増加はSFエクスプレスの目に非常に魅力的に映った。
品駿と業務提携したことで、SFエクスプレスの取扱件数に対する焦りは一気に解消される見通しだ。品駿の決算書によると、昨年第3四半期の取扱件数は1日当たり174万件、月間では約5220万件になる。SFエクスプレスの昨年9月の取扱件数は4億5400万件、品駿快逓の取扱件数はその11.5%に相当し、SFエクスプレスにとって大きな数字であることは確実だろう。
品駿快逓はコストを削減するために宅配事業だけから撤退し、中核的な物流資産や倉庫は手元に残した。SFエクスプレスは取扱件数に対する焦りを解消するため、宅配事業だけを引き継いだ。両社の今回の業務提携はどの角度から見ても利益最大化を図る企みだと言えよう。
(翻訳・池田晃子)
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