中国のクラウドファンディング、当局による監督強化が必要

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かつて米国のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」で爆発的な人気を集めたプロジェクト、多機能クーラーボックスの「Coolest Cooler」が昨年12月に倒産を発表した。このプロジェクトはわずか52日間で6万人以上から1300万ドル(約14億円)を超える資金を集めたが、発売延期を繰り返した挙げ句、資金繰りが悪化し悲惨な結末を迎えた。

クラウドファンディングという革新的な手法は2011年に米国から中国に伝わった。クラウドファンディングによる起業ブームの波にあおられている中国の状況はどうなのだろうか。クラウドファンディングは今後どうあるべきなのだろうか。

Coolest Coolerはプロジェクト発足から5年0一定数を出荷したものの、ミキサー納入業者のストライキなどを原因に発売延期を繰り返し、最終的にはプロジェクトの破綻を宣言した。支援者の3分の1が商品を受け取れず、返金も行われていない。中国でも同じ道をたどるプロジェクトは少なくない。

業界関係者によると、クラウドファンディングが中国に導入されてから数年になるが、プロジェクトを見る目はまだ育っていないという。クラウドファンディングのプロジェクトに出資した支援者の多くは事前に実地調査を行っていない。プロジェクトの発起人との交流もSNSのグループ内に限られ、直接対面することは想定すらされていない。とはいえ、これらはクラウドファンディングにおける一部の問題に過ぎず、手法自体にはやはり価値がある。

さまざまな分野で活用されるクラウドファンディング

クラウドファンディングの成功例の一つは、中国の国産アニメ代表作「西遊記 ヒーロー・イズ・バック(原題:大聖帰来)」だ。この映画は10億元(約160億円)近くの興行成績を収め、エンドロールに氏名が出た89人の出資者は最終的にほぼ全員が4倍の投資リターンを得ることができた。

もう一つは、コーヒーショップやコワーキングスペース、企業向け総合サービスを手掛ける「北京3W科技(3W)」だ。国内の数百人に上る著名投資家、企業幹部から1人当たり10株、1株につき6000元(約9万6000円)の資金を集め、コーヒーショップを皮切りに、マーケティング、インキュベーション、リクルーティングなどの分野へと事業を急速に拡大した。

業界別にみると、クラウドファンディングの活用が進んでいるのは主に自動車、農業、映画の3業界だ。「ファン経済」にもクラウドファンディングが活用されており、アイドルの影響力をファンの力で経済的価値に変える典型的な例となっている。例えば音楽アルバムの団体購入や映画館の貸し切りなど、ファンがアイドルのために出費するのは珍しいことではなくなった。

ファンの間で行われるクラウドファンディングのプロジェクトは2種類に大別される。実物(アルバム、映画、関連商品)と非実物(投票、チャートでの順位上昇につながる行為)だ。中国のオーディション番組「偶像練習生(アイドルプロデューサー)」を例に挙げると、この番組で選出された上位20位の練習生をめぐり、ファンが芸能人を応援するためのプラットフォーム「OWhat」上だけでも50近くのファングループが総額1300万元(約2億円)以上の資金を集めた。

オーディション番組「偶像練習生」

ただし、問題も表面化している。ファンの間で行われるクラウドファンディングでは未成年の関与、不透明な資金の流れ、審査の甘さといった問題が増加の一途をたどっている。

クラウドファンディングを救うのは

クラウドファンディングには製品は優れているのに、世に出す手立てがないという問題を解消できる側面がある。EC(電子商取引)大手の「京東(JD.com)」、アリババグループ傘下の金融会社「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」、ネット検索大手の「百度(バイドゥ)」、保険大手の「中国平安(Ping An)」など大手各社も争って参入し、業界は爆発的な成長を見せ、「衆籌客(zhongchouke.com)」、「第五創(The 5th avenue)」などのクラウドファンディングサイトでは100万元(約1600万円)規模のプロジェクトがいくつも誕生している。

一方、株式投資型クラウドファンディングの場合、仕組み自体に欠陥があるという側面もある。起案者と支援者のミスマッチが一定の割合で発生し、それがクラウドファンディングサイトの発展を危うくしている。データによると、2017年以降は各種プラットフォームの数が減少しており、昨年6月末時点で運営中のプラットフォームはわずか105社だった。

こうした状況を打開するには、当局による監督と介入を強め、プラットフォームが情報開示、審査・承認、リスク管理体制を整備し、公平性、透明性が高く、持続可能なクラウドファンディングのモデルを確立するよう強く働きかける必要があるだろう。

インターネット時代において、クラウドファンディングという手法には大きな意義がある。従来の資金調達方法に比べてオープンであり、より多くの小規模事業者やスタートアップに無限の可能性を与えるものだ。

国際社会も中国のクラウドファンディングには楽観的な見方を示している。世界銀行が先ごろ発表したリポートによると、中国のクラウドファンディング市場規模は2025年に500億ドル(約5兆4500億円)に達する見通しだ。

とはいえ、当局による監督、法整備、倫理的ジレンマといった課題を解決しない限り、クラウドファンディングが好循環かつ高成長を実現する新たな段階を迎えることはできないだろう。だが、ひとたび新たな段階を迎えられれば、クラウドファンディングが生み出す豊かな価値を享受できると期待したい。

(作者:鋅刻度 麦柯、李季)

(翻訳・池田晃子)

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