Z世代の心をつかめ 音楽配信プラットフォームをめぐる各社の攻防戦

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インターネットの攻勢や影響を受け、既存のレコード業界はかなり前から下火となっている。その一方で、音楽産業の再起に一役買っているのがオンラインプラットフォームだ。

とはいえ、優れた歌の存在だけではプラットフォームの発展は望めない。音楽プラットフォームは、他社との差別化や著作権料の引き下げという観点から、自身の機能やサービスのアップデートに絶えず取り組んでいる。一方で次世代のインターネットユーザーのニーズもさらに多様化している。インターネット市場全体の大きな流れが単なるユーザー増から既存ユーザーの囲い込みへと移行する中で、大企業は熾烈な競争を勝ち抜くため絶えずイノベーションを図り、ユーザーを引きつけ囲い込む新たなチャンスを模索している。

複数プロダクトの展開がスタンダードに

オンラインミュージックの競争はとうの昔に単なる音楽データベースの段階から脱却しているが、これを物語るのがTMS(テンセント・ミュージックエンタテインメントグループ)のコンテンツジャンルの拡大だ。

TMSは2019年9月に新たなCTS戦略、すなわちコンテンツ、テクノロジーおよびサービスの強化策を発表した。そのうちコンテンツに関しては、各大手レコード会社の音楽コンテンツに加え、長時間の音声コンテンツやショート動画さらには自作バラエティ番組など多元化が進んでいる。

テンセントはこの他にも「オンラインミュージック+ソーシャルエンターテインメント」による業務モデルを構築した。「QQ音楽」「酷狗音楽(kugou music)」「酷我音楽(Kuwo Music)」の三大プレーヤーに加え、「全民K歌」や「繁星直播」などのソーシャルエンターテインメントプロダクトを打ち出している。こうしたプロダクトを通じて、オンラインミュージックコンテンツの影響力は高まっているほか、ソーシャルエンターテインメントプラットフォームのインタラクティビティや人気度が、オンラインミュージックコンテンツに対するユーザーの課金意欲をも高めている。

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アリババも同じく音楽分野への投資を強化する。「網易雲音楽(ネットイースクラウドミュージック)」への投資に加え、アリババのイノベーション事業グループに属する「蝦米音楽(Xiami Music)」も、音質やプラットフォーム技術に関してMQA(ハイレゾフォーマットの1つ)をサポートするプラットフォームとなった。アリババはさらにコミュニティにフォーカスしたカラオケアプリ「唱鴨(Changya)」をリリースし、40秒の短尺カラオケ機能をメインに打ち出している。ユーザーは「歌+伴奏+リズムエフェクト」の形式でオリジナルのフレーズを作成できる。

光有好歌还不够,在线音乐平台想靠“它”打破天花板主戦場は著作権料から対ユーザーサービスへと変化

ユーザーの世代交代が音楽業界に新たな革新をもたらしている。新たな世代のユーザーが音楽プラットフォームの主要ユーザーになりつつあり、彼らをつなぎ止めることが今後のプラットフォームの生き残りを左右する。

インターネットの発展とともに成長してきたZ世代は、コンテンツやサービスをネット上で入手することに慣れている上に、課金に対する抵抗がないことを複数の研究結果が示している。中国のリサーチ・コンサルタント企業であるiResearchのリポートによると、今年中に中国のオンラインエンターテインメント市場における消費の62%を1990~2000年代生まれの若者が占めるようになるという。

TMSの戦略は、マーケティング、コンテンツ、ビジネスを同等に重視し、主にキャンパスでのマーケティング活動の強化、長期的な売上が見込めるコンテンツの発掘、学生向け優待サブスクリプションサービスの実施を進めている。また網易雲音楽は、年間ヒットソングリポート、音楽をコンセプトとしたホテルや店舗およびARマーケティングなど、各種のマーケティング方式に力を入れている。こうしたマーケティングにやや偏った両社の戦略に対して、アリババはプロダクト面からブレイクスルーを目指す。

上述の唱鴨は、UI(ユーザーインターフェース)から使用法に至るまで、全てにおいて若者に照準を当てたプロダクトだ。例えば、唱鴨では曲を丸ごと聴くことはできず、全てのコンテンツはユーザーがある曲の一部分をリメイクするために用意されている。短編動画アプリ「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」のような断片化した設計が、まさしく次世代のユーザーの興味とニーズにマッチした形だ。

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唱鴨は音楽制作の大衆化・ゲーム化、さらには革新的な使用法によって若者の参加意欲を刺激している。使用法や選択できる伴奏楽器の種類が頻繁に更新され、さらにほかのユーザーの優れた自作コンテンツが次々にアップされ、これがユーザーの創作意欲を刺激し、今では若者が音楽で「遊ぶ」コミュニティーとなった。

現在の業界構造をみると、運営、マーケティングあるいはプロダクトのいずれにおいても、競争の本質がいかにユーザーの承認を得るかという点に回帰している。次世代ユーザーのニーズに特化した製品革新が、業界において最も観察に値する変数となるだろう。

(作者:深響(ID:deep-echo)、申商)
(翻訳・神部明果)

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