中国ベンチャーキャピタルの未来予想図 著名投資家たちにインタビュー 

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中国のベンチャーキャピタル(VC)はその本格化からわずか15年未満と歴史が浅いものの、幸運にも電撃的なスピードで成長を遂げてきた。この長い期間の中で、中国経済自体の急速な発展、「社会的な変革」をもたらしたモバイルインターネットの膨大なユーザー、増加する人口ボーナスによって、中国のVC業界は大きな発展を成し遂げた。

この期間に中国で活動することを選んだベンチャー投資家は、これ上になく幸運だったといえる。中国では世界の3分の1を超えるユニコーン(評価額10億ドル以上の非上場、設立10年以内のベンチャー企業)が誕生したほか、中国のベンチャー業界の投資規模全体も10倍以上に拡大し、米国を抜いて世界トップとなった。

だがここ2年でIT業界の勢いが弱まり、これまで潤沢だった資金も引き締め傾向にある。中国のベンチャー投資家にとっては慎重さと懸念に満ちた苦しい期間となっており、ほとんどの投資家が足取りを緩め、この業界から離れることを選んだ人も少なくない。これらの事態を目にした我々は、過去15年間にみられたような、スタートアップが主導し、VCがサポートする大々的なイノベーション、およびこれにより生じた新たな社会階層の変化や富の創出が、単なる「特定の歴史的段階」の産物にすぎないのかという疑念を抱かざるを得ない。

こうした疑問を著名ベンチャー投資家に投げかけた。以下はその抄録。

2019年の投資を振り返って

ーー昨年1年で心を動かされた投資案件はありましたか。
線性資本(Linear Venture)の創業者・パートナー王淮氏:

「中国で初めて宇宙資源の採掘と利用に取り組む『起源太空(Origin Space)』だ。同社は地球資源の限界の打破を目指し、地球近傍小惑星においてレアメタルなどの鉱産資源の採掘を行う。テクノロジーが将来的に極限まで発展した際、宇宙探査は人類にとって必要かつ実行可能な数少ない選択肢の一つとなると考え、我々は同分野への投資を長らく望んできた。この日がこれほど早く訪れるとは予想外だった」

金沙江創投(GSR Ventures)の主管パートナー朱嘨虎氏:

「我々が昨年投資した『非碼科技(Freemud)』の業績は非常に優れていた。同社は『喜茶(HEYTEA)』やスターバックスのインターネットプラットフォームの運営サポートを請け負っている。すでに10万店にサービスを提供しており、今後は100万店へのサービス提供を目標としているが、顧客から1%のコミッションを得ている同社の売上は相当なものだ」

ーー昨年1年間で、最も注目されている業界にはどのような大きな変化がありましたか。
IDG資本のパートナー牛奎光氏:

「現在、AI業界ではコンピュータービジョンと言語技術がほぼ成熟しており、今後はこれらの技術を活用できる企業が大きく発展するだろう。もう一点はデータ業界だが、中国全体の状況からみるに、現在のデータインフラは十分に整備されているとはいえず、データの使用ルールもまだ構築段階にある。昨年はこうした問題に関する議論が広く行われたが、今後1~2年で徐々にコンセンサスが形成され、同業界は急成長を迎えると考える。さらにクラウドコンピューティングも成長も早く、業界のトップ3企業の伸び率は60~100%に達している」

光点資本(Guangdian Capital)のパートナー符正氏:

「私が注目するリテール・消費業界は現在さらなる世代交代を迎えている。製品クオリティの向上、ポジショニングの差異化、独自のマーケティング手法、新たな販売チャネルや配送方式など、リテール・消費業界はあらゆる面で大きく変化している」

ーー昨年の投資過熱であると思われる分野について教えてください。
経緯中国(Matrix Partners China)のパートナー熊飛氏:

「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、データミドルエンド、経費精算分野だ。私は競争の激しいこれら3つの分野に対して慎重な立場にある。RPAの過熱の大きな要因となったのはソフトバンク・ビジョン・ファンドによる投資だが(RPAはもう一つのWeWorkなのではとさえ考える)、この分野は企業の参入障壁が低すぎるとみている。データミドルエンド分野については、米国にもこうした概念はない。さらに経費精算の本質は多くの企業が手がけるフィンテックであり、この参入障壁もやや低い」

辰海資本(Sea of Stars Capital)のパートナー陳悦天氏:

「無人販売商品棚、ソーシャルEC、コミュニティ共同購入分野だ。これらの分野では次々と企業が倒産している。消費ブランドへの投資もやや難しいと考える。真に優れた消費財関連企業とは、製品企画、ターゲット層の決定、原料サプライチェーン、生産プロセス、販売体系、マーケティング方法、末端の消費者へのアプローチにおいて独自の手法を築くことで初めて有効な参入障壁を構築できる。現在の消費財関連企業はビジネス初期のうまみを享受している段階にあり、リスクもあり安定性がみられない」

中国と世界を見据えたVCの未来

ーーVC業界自体のイノベーションは必要でしょうか。現在それは起きていますか。
渶策資本(INCE Capital)の創業者兼パートナー甘剣平氏:

「VCはすでに息の長い業界であるため、イノベーションは難しい。唯一実行可能なのは、多くの投資機関がますます巨大化するのと反対の行動をとることだ。組織のコンパクト化・精鋭化を進めること、有望な事業を発見したら最速で投資を決定すること、これが私の考える適切な方法だ。VCやPEにとって企業化運営がふさわしいとは思わない」

雲時資本(Seas Capital)の創業者兼パートナー彭創氏:

「VCの運営ルールは絶えず変化しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドを皮切りに投資規模が拡大している。現在の投資家は、想像力だけでなく常識も試されている」

ーーVC業界の長期的な存続は可能でしょうか。
辰海資本の陳悦天氏:

「可能だと考える。技術の進化と発展は続き、人間の意思とは関係なく移り変わっていく。いわゆるVCとは、莫大な影響をもたらす技術変革を機敏に捉える能力をもつ人間または組織を意味する。そうした存在は、これまでの歴史の中ではVCと呼ばれなかったにすぎない」

創世伙伴資本(CCV)の主管パートナー周煒氏:

「VCはかつて日本、韓国、欧州で活発だったが、真の意味で現在も有効なのは米国と中国だけだ。この業界の歴史はいまだに50年未満であるため、安定期にも今後の不測事態への対策を怠らず、時機に応じて自らの変革を実現してこそ存続できる」

光源資本(Lighthouse Capital Partners)のパートナー兼CEO鄭烜楽氏:

「中国の現在の1人当たりGDPは米国の6分の1にすぎない。これが2分の1まで上昇し、中国の人口が14億人に達すれば、この過程でさらなる価値が創出されるに違いない。より優秀な企業や突出した企業家も現れるだろうが、彼らを真っ先に探し当て、サポートすることこそVCの存在意義だと考える」

ーー今後10年間で注目を集める投資分野はどう移り変わるでしょうか。
渶策資本の甘剣平氏:

「マンマシンインタラクティブに注目している。今後10年でインタラクティブ方式が変化し、最終的にVRグラスやプロジェクション、小型ロボットなどに応用されることに期待したい」

IDG資本の牛奎光氏:

「過去10年間に、多くの投資家は主に消費やインターネット分野で成功してきた。これらの分野は今後引き続き急成長するだろうが、投資機会は消費やインターネットから効率主導型の分野に移行するだろう」

経緯中国の熊飛氏:

「私は投資理念の変化がより大きいと考える。インターネット業界への投資スタイルは、初期のザッカーバーグ型(アイデアやヒット商品を重視)からバフェット型(高い参入障壁やキャッシュフローを重視)に移行してきた。これこそソフトバンク・ビジョン・ファンドがキャッシュフローに重きを置き始めた理由だ」

ーーどのような人物が未来を左右すると思われますか。
紅杉資本中国基金(セコイアキャピタルチャイナ)のパートナー曹曦氏「先見性と本質を見抜く力があり、リソースの力を引き出し実現していく人物」

光速中国(Lightspeed Venture Partners)の創業パートナー韓彦氏:

「感性と理性、右脳と左脳を総動員できる人物」

辰海資本の陳悦天氏:

「既得権益を手にしていないPSD(poor、smart、desire)、つまり裕福ではないが賢く願望を持った若者だろう。成功とはリソースや経験ではなく、強烈な願望に駆り立てられた結果だからだ」
(翻訳・神部明果)

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