「AIはヒトに替わる存在ではない」マイクロソフトのスペシャリストが断言

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「AIはヒトに替わる存在ではない」マイクロソフトのスペシャリストが断言

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世の中にイノベーションをもたらす最先端のテクノロジーに注目し、これに携わる企業やプロダクトにスポットを当てる36Kr主催の年次イベント「潮科技2020」が昨年末から今年にかけて開催された。テクノロジーが巻き起こすイノベーションについて過去10年を総括し、未来の10年を占うイベントだ。注目企業のCEOが読者から寄せられた質問に答える企画「Ask Me Anything」では、マイクロソフトリサーチアジア(MSRA)の張益肇副所長が登壇し、人工知能(AI)に関する質問に答えた。以下はその抄訳。

――AI分野は今後5年、どのような発展を遂げるとお考えですか。
「AI技術の間断なき進化は、我々の生活や各業界を常に再構築し続け、産業のデジタル化やスマート化を後押しする。金融や交通、医療などはAI技術と結びつくことによって利益を享受できるようになった最初の産業となった。製造業にしろ教育分野にしろ、あらゆる業界は我々の謳う「ABC」を利用できる機会がある。Aは『アルゴリズム』、Bは『ビッグデータ』、Cは『コンピューティング』を指す。このABCを以てデジタル化を実現し、業務効率を上げ、顧客体験を向上させ、競争力を強化できるのだ。マイクロソフトは世界の190カ国でプラットフォームやサービスを運営する一企業として、多くの企業や組織のデジタル化に必要な最良のプラットフォームを提供している」

「IoE(すべてのモノ・コトがインターネットに接続することで生まれるビジネス)が実現すれば大量のデータが発生するが、これらを分析・利用するAIの能力は将来的に重要な変換ツールとなるだろう。AIは人々の需要や文脈、周囲の環境を理解し、仕事や生活、さらには世界までを改善させるだろう」

――産業とAIとの結びつきを推進するカギとなる要素は何でしょうか。
「AIは産業の進化を後押しする。そして産業のデジタル化を進めるためには『ABCDE』の五つの要素が必要になってくる。(前出のABCに加え)Dは『専門分野(Domain)』、Eは『エコシステム』を指す」

「専門分野とは、AI技術のいかなる実用化シーンにおいてもその業界の専門家と共に携わることが必要だということを指す。例えば農業、医療、製造、金融、物流などがそれに当たる。エコシステムはAI技術が実用化されてさらにその業界で発展していくならば、完成されたエコシステムが必要だということを指す」

――マイクロソフトは実際にAI技術を実用化させるために中国でどのような取り組みを行っていますか。
「マイクロソフトの目標は一貫してAIを普及させることにあり、すべての人がAI技術を利用し、そのメリットを享受できることを目指している」

「我々はAI技術の力を借りてさまざまな方法でブレイクスルーを果たし、企業の事業モデル転換を支援してきた。2017年11月、MSRAは『DTaaS(Digital Transformation as a Service、サービスとしてのデジタル化)』を打ち出し、コンピューティング技術や人材における自社の強みを発揮しながら、メンバー企業による業界への深い理解と洞察をかけ合わせて、各産業のアップグレードと技術のイノベーションを共同推進している。例えば物流業界では香港の海運会社『東方海外貨櫃航運(OOCL)』と密接に提携し、深層学習や強化学習を通じて輸送ネットワークの運営を大幅に改善し、真の意味でのスマート物流を実現した」

――AI分野で解決の必要な課題は何でしょうか。
「現在のAI技術はビッグデータやコンピューティングに依存するところが大きい。ここがヒトの知能との大きな違いだ。ヒトは多くの場合、少数ショット学習(few-shot learning、少量の学習データで認識モデルを構築する学習方法)によって物事を学び、一つの学びから多くのことを類推できるようになる。これに対して現在のAIは多くのアルゴリズムがブラックボックスに秘められているうえ、『何か?』という問いには回答できるが『なぜか?』という問いには答えが出せない」

「さらにAI技術が直面する大きな問題は『偏見』だ。例えばサーチエンジンで『CEO』を検索すると、検索結果には女性やアジア人のCEOはほとんど上がってこない。これらはAIが進化するにしたがって顕在化する倫理問題だ。マイクロソフトではこうした問題を解決する道のりの一つとして、Aether Advisory Committee(AETHER=『技術開発と研究における人工知能と倫理』を意味する造語)を設立した」

――MSRAはマージャンについて研究を行っているそうですが、それはなぜでしょうか。
「マージャンは歴史も長く、広く大衆に浸透したゲームだ。その流行は世界規模で、控えめに見積もっても全世界で9000万人の愛好者がいるとされ、近年その数は安定して増えている。昨年は囲碁、チェス、シャンチー(中国将棋)、コントラクトブリッジ、ドラフツに次いで6番目に国際マインドスポーツ協会(IMSA)に認定された」

「これまでゲーム領域で成功を収めてきたAIだが、マージャンは挑戦のハードルがさらに高い。単なるアルゴリズムでは根本的な強さは得られず、強力な直感力、予測力、推理力、あいまいな状況における意思決定力がより必要となるからだ。AIをマージャンで活用する研究は、現実世界で発生する複雑な問題を解決するにあたり、重要な意義を持つ」

「マージャンは不完全情報ゲームの類に属する。マージャンにつきものの複雑な作戦やランダムに行われる駆け引きは、我々の実際の生活でより身近なものだ。つまり、マージャンにおいてAIが得る成果は現実の生活においてもさまざまなことを解決する一助になると考える。スマート交通や金融・投資など、不確定要素が絡むシーンもそれに含まれる。(この研究は)ゲームから切り込んではいるが、決してゲームだけでは終わらせない。もっと広い範囲の産業に波及させていきたい」

――AIの実用化が進むにしたがって、我々の就業問題にはどのような影響がありますか。またどのような新しい職業が生まれると思いますか。
「米マッキンゼー・アンド・カンパニーのあるデータによると、旅行・交通・小売り・エネルギー・医療・政務など19の業種や分野で、AIを導入することで高価値を生み出した事例が多く確認されている。より価値を高めた製品やサービスは、収益や課題解決の効率をさらに引き上げている。こうした変化は我々の生活の隅々で顕在化している。マクロ的にみるとAIが各分野に及ぼした改善は大きく、かつ長期的で根本的なものだ」

「多くの人がAIの普及によって職業を失うのではないかと懸念している。しかし、ヒトに完全に取って替わるAGI(汎用人工知能)が登場するなどというSF小説のようなシチュエーションが現実のものになるのはまだまだ先の話だ。AIはヒトにとって替わる存在として造られたのではなく、ヒトの知能を一定程度拡張する存在として生まれたのだ」

「AI技術(による恩恵)がすべての人に行きわたる頃には、(従来のタスクから)解放された労働力はAIの支援を受けて適材適所に再配置されていくだろう。自動車の誕生が運転手などの新たな職業を生んだように、AI技術の進化と実用化が多くの新しい職業を生み出していくことになる。人々はAIを利用してよりよい生活を得ると同時に、AIも人々からのアシストを必要とするからだ」

――コンピュータービジョンや機械学習の技術が向上し、AIが医療分野で強い応用能力を発揮する可能性が期待されます。AIが真の意味で臨床診断に応用されるとしたら、どの部分で強みを発揮するでしょうか。
「将来的には『説明できるAI』が重要かつ活発な研究分野となってくる。現在のAIは意思決定はできても、そこに至るまでの経緯を説明する能力はない。AIが人々にとってより信頼できるアシスタントとなり、医師の意思決定を支援するために、我々はAIの説明能力を向上させる必要がある。そうなれば医師もAIの能力の限界を見定めることができ、ダブルチェックを行うか否かの判断基準になる」

「弱教師学習および教師無し学習を用いた訓練を、医療データで如何により効果的に利用するかももう一つの課題だ。手動によるアノテーションはあまりにコストが高い」
(翻訳・愛玉)

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