アリババ傘下の高徳地図が海外進出を宣言、百度地図との競争再燃へ

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中国IT大手アリババグループの100%子会社である地図サービス大手「高徳地図(Autonavi)」が、オランダの位置情報サービス大手「HERE Technologies」(以下、HERE)と東南アジアで共同事業を展開することが明らかになった。HEREは中国以外の地図データや交通情報などを高徳地図に提供する。両社は既に海外の地図データおよびサービスの最適化に関連するテストを進めている。高徳地図の海外向けサービスは今年、正式にローンチされる見通しで、まずは東南アジアの主な国をカバーすることになる。

アリババグループが東南アジアで決済サービスと電子商取引(EC)サービスの布陣を整えつつある中、高徳地図が海外進出計画の日程を繰り上げることは想定内だった。同社が海外進出で直接のターゲットとするのは地元ユーザーではなく、海外に出かける中国国内のユーザーと提携企業だ。

高徳地図は海外向けサービスの一環として、モバイルアプリによるサービス提供を行うと明らかにしている。同アプリは、ユーザーが自動車の運転や公共交通の利用および徒歩で移動する際のナビゲーション機能や、ユーザーの位置情報に基づいたPOI(Point Of Interest)と呼ばれる周辺の地点情報を提供する。また、提携企業の機能強化を実現し、例えば、中国自動車大手「吉利汽車(GEELY)」が東南アジア向けに生産する自動車の純正カーナビとして同社の製品を選択することも可能になるという。

地図情報はカーナビや自動運転の基盤となる。完成車メーカー(OEM)各社はかつて、米グーグルの地図アプリ「グーグルマップ」に束縛されないようにするため、HEREへの支援を選択した。独自動車大手のBMW、アウディ、ダイムラーは2015年、フィンランドの通信機器大手ノキアからHEREを25億ユーロ(約3000億円)で買収した。その後、地図情報サービスの「北京四維図新(NavInfo)」、ネットサービス大手のテンセント(騰訊控股)、独自動車部品大手の「ボッシュ(BOSH)」と「コンチネンタル(Continental AG)」、米インテルの投資部門「インテルキャピタル(Intel Capital)」が投資に参加し、同社の株主となっている。

三菱商事とNTTは先ごろ、HERE社の株式の30%を取得すると発表した。なお、それまではHERE社の株式の7割を自動車関連企業が保有してきた。

モバイル地図の個人ユーザー数の伸びが鈍化したことで、自動車への地図搭載が次の成長分野となっている。自動車市場で中国の自動車メーカーのシェアが縮小傾向にある中、「江淮汽車(JAC Motors)」や「長城汽車(Great Wall Motor)」「上海汽車集団(Shanghai Automotive Industry)」「吉利汽車(Geely Automobile)」などは海外での投資と工場建設の規模を重点的に拡大していった。高徳地図が今回HERE社と提携した目的の一つには、自動車メーカーとの提携強化があるとみられる。

高徳地図は海外進出で、中国インターネット検索最大手の百度(バイドゥ)が手掛ける地図サービス「百度地図(Baidu Map)」に若干出遅れている。

百度地図は2017年に海外進出を果たし、海外の開発者向けにAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開。東南アジアではHEREのデータを利用している。また同社は昨年、オンライン旅行会社「携程(Trip.com Group)」と海外での共同配車機能をローンチした。同社のリポートによると、携程や生活 関連O2Oサービスの「美団点評(Meituan Dianping)」、SNSアプリの「陌陌(MOMO)」、旅行口コミサイトの「馬蜂窩(Mafengwo)」などの業界で開発者が同社の海外向けAPIを利用している。

海外進出を発表した高徳地図は今後、海外の消費者市場や自動車市場で百度地図とシェアを奪い合うに違いない。中国国内では休戦状態だった両社の競争が海外市場で再燃することになるだろう。
(翻訳・田村広子)

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