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ECビジネスをはじめ、ベトナムのマクロ経済が急成長の兆しを見せている。ベトナム統計総局のデータによれば、2018年のGDP成長率は過去10年間で最高となる7.08%を記録した。2012年から2018年までの6年間に、ベトナムのベンチャー企業は400社から3000社あまりへと急増している。
その勢いを後押しするようにベトナム政府も産業強化策を打ち出しており、10年以内に自国のユニコーン企業10社を育成することを目標にしている。とはいえ、地元企業が順調に成長するのは決して簡単なことではない。
東南アジアのユニコーン企業11社のうち、ベトナム企業は設立12年の「VGN」1社だけだ。同社は「ベトナム版テンセント(騰訊)」と呼ばれる通り、ゲームやSNS、オンライン決済、ECなどテンセントとよく似た事業展開を行っている。ユニコーン企業にまで成長できたのも、この多角的な事業経営によるところが大きい。
では、特定の事業分野に絞った企業から、ベトナム政府が期待するようなユニコーン企業の出現はあるのだろうか。
配車アプリやフードデリバリーは大手が台頭
世界的に見て最も有望視されている分野は、配車サービス、フードデリバリー、オンライン決済だ。しかしこの分野では、すでに多くの海外企業が幅をきかせている。ベトナムの現地企業がそこからシェアを奪うのは至難の業だ。
ベトナムで市場をリードしている配車アプリは、東南アジアで圧倒的シェアを誇る「Grab」だ。2014年にベトナムに進出したGrabは、2018年にUberの東南アジア事業を買収して一段と勢力を拡大してきた。さらに配車アプリの成功にあぐらをかくことなく、フードデリバリー事業「Grab Food」を立ち上げる。ベトナムのフードデリバリー市場において先駆者ではないものの、平均20分という驚異のデリバリースピードで一気にユーザーの心をつかんだ。
ベトナムの配車アプリには「Fast Go」があるが、その事業規模は資金の潤沢なGrabに遠く及ばず、市場シェアでも大きく引き離されている。フードデリバリーにおいても現地企業が奮闘したものの、「Lala」は運用開始後1年で撤退、「Vietnammm」も韓国のユニコーン企業に買収されるなど、Grabの絶対的地位は揺らぐことがなかった。
東南アジア各国の市場でたびたびGrabと激突しているインドネシアのユニコーン企業「Gojek」もベトナム市場に目をつけた。参入が遅かったGojekは地元の提携パートナーと共にベトナム向けの配車アプリ「Go-Viet」をリリース。運用開始からまもなく、ホーチミン市のバイクタクシー配車サービスでシェア3分の1を占めるほどに成長、それに続いてフードデリバリーサービス「Go Food」もスタートした。今後はベトナム市場のニーズに基づいて、ショッピングやハウスクリーニング、美容サービスなどを展開していくとのこと。
ベトナムの配車アプリ市場やフードデリバリー市場が膠着状態に突入する中、ベトナム最大の通信事業者「Viettel」が配車サービスプラットフォーム「MyGo」をリリースしたが、後発のベンチャー企業が市場に食い込める可能性は微々たるものだ。
ベトナム企業を後押しする政策
しかしSNSやモバイル決済などの分野では、ベトナム企業にも可能性が見える。
モバイル決済業界では、政府のサポートにより現地企業にも市場の一角が与えられている。ベトナムでは今も現金決済が主流で、現金以外の決済方法は大部分がキャッシュカードだという。このためバーコード決済や電子ウォレットなどは今後急成長が見込まれる。電子ウォレット事業にはベトナム国家銀行からの営業許可が必要なため、現地企業が圧倒的に有利だ。実際、同行の統計によると取引高上位5社のうち4社をベトナム企業が占めているということだ。
さらに政府はベトナムの起業家を保護するため、テック系スタートアップに対し、最初の4年間を免税にし、その後の9年間は50%の減税措置を適用するという政令を制定した。
とはいえベンチャー企業にとって、政策は一要素に過ぎない。最終的に成功するかどうかは、結局のところ起業家自身にかかっているのだ。これからの10年、ベトナムの起業家たちにとって飛躍の10年となるだろうか。
(翻訳・畠中裕子)
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