ソフトバンク出資の格安DTC「Brandless」が廃業 低単価と品質問題があだに

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米格安ECプラットフォーム「Brandless(ブランドレス)」が事業の閉鎖を発表した。米テック系ニュースメディアProtocolが現地時間2月10日付で伝えた。Brandless側は、現社員の9割近くとなる70人のリストラを実施し、残る10人の社員は受領済みのオーダー処理に加え、「いかなる買収の申し出も検討する」としている。

2017年7月創業のBrandlessはDTC(消費者直販)ブランドを手がけるECプラットフォームであり、各種生活必需品を3ドル(約330円)均一で販売し、統一された簡易包装を特徴としていた。創業からちょうど1年が過ぎた2018年7月、同社はソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)から2億4000万ドル(約260億円)の出資を受けており、当時の市場価格は5億ドル(約550億円)超をつけた。

Protocolによれば、SVFが投資した企業の多くはリストラやコスト削減といった問題に直面しているが、「完全に営業を停止した」企業としては初のケースであり、ソフトバンク側もこれを認めている。

持続可能性に乏しいビジネスモデル

現在、Brandlessの公式サイトは下記の声明文を残すのみとなっている。

画像提供:Brandless

同社は今回の廃業に関し「我々はユーザーエクスペリエンスを新たな高みに押し上げましたが、DTC分野の激しい市場競争の結果、現在のビジネスモデルは持続可能性に欠けていることが明らかとなりました」との釈明を行っている。

確かにDTC分野の競争は熾烈だ。米国では2012年以降、DTC関連のスタートアップが400社以上も誕生したとのデータがある。そのうち頭角を現した「Allbirds」(シューズ)、「Warby Parker」(眼鏡)、「Casper」(寝具)などは短期間で急成長を果たし、投資家の注目を集めた。とはいえ、これらの企業はBrandlessの直接的なライバルではなく、同社は生活用品分野では一人勝ちの様相を呈していた。

しかし、2019年になると同社の状況は一変した。年初には一律3ドルという販売戦略を変更し、6ドル(約660円)や9ドル(約990円)のベビー用品やペット用品の販売を開始したほか、量販店を経由してオフラインでの販売にも注力していった。

米データ分析会社Second Measureのリポートによると、匿名でのカード消費記録の分析の結果、Brandlessの昨年5月の顧客数は前年同期比で26.5%の減少となっている。

その理由の一つとなったのが製品の品質問題だ。DTCブランドの多くが単一商品を売りにする一方、Brandlessは「生活必需品」という巨大で複雑な市場を選んでしまった。創業わずか1年の企業が350を超えるSKUを管理するにあたり、そのサプライチェーンの複雑さは押して測るべしといえる。

製品の出来が悪ければ、顧客はおのずと離れていく。米市場追跡企業Edison Trendsの2018年のリポートによると、Brandlessで1年に1度しか買い物をしていない顧客は7割を占め、2度買い物をした顧客は17%、また5回買い物をした顧客はわずか3%だった。このユーザー定着率はアマゾンに遠く及ばないものだ。Brandlessはかつてサブスクリプション制により定着率を引き上げようと試みたが、思わしい結果は得られなかった。

さらに、同社は3ドル戦略によりある程度の顧客をつかんだものの、結果的に客単価があまりに低くなり、重ねてリピート率も伸びず、顧客獲得コスト(CAC)をカバーできなかった。Edison Trendsのリポートでは、Brandlessの2018年の平均客単価はアマゾンと同水準の34~35ドル(約3700~3900円)だが、ウォルマートとは大きな差がついている。

昨年3月、Brandlessの共同創業者だったティナ・シャーキー氏がCEOを辞任した。同社の大株主であるSVFの意向をくんでの辞任だという情報もある。同氏に代わり、ウォルマート、ターゲット、LVMHグループなどの幹部を務めたジョン・リッテンハウス氏がCEOに就任したが、Brandlessの窮境を救うことはできず、同年末に辞任している。

報道によれば、SVFのBrandlessに対する出資には追加条件があり、2億4000万ドル全額が一度に出資されたわけではないという。同社の廃業は、SVFの出資金回収の見込みが絶たれたことを意味する。

Protocolは、Uberのダラ・コスロシャヒCEOが2月上旬の決算報告の後に述べた「企業の成長のために全力を注ぐ時代は過ぎ去った」との言葉を引用している。フォーブスもBrandlessを「買いかぶられた被害者」と形容した。ソフトバンクはこれまで巨額の資金を投じてこうした企業の急成長を後押してきたが、この手法はすでに通用しなくなっている。
(アイキャッチ写真はBrandlessより)
(翻訳・神部明果)

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