勢い付く日本の投資家 インドに熱視線 5年間で5兆6000億円以上の投資も

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勢い付く日本の投資家 インドに熱視線 5年間で5兆6000億円以上の投資も

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日本の投資ファンドのインド企業に対する資金投下が進んでいる。インドメディア「Inc42」のデータ分析部門「DataLabs」のリポートによれば、インドのスタートアップは2014年から2019年上半期にかけて、日本の投資ファンドから510億ドル(約5兆6100億円)以上を調達したという。

前途有望な海外企業に資金を投じることは、日本の投資ファンドにとってウィンウィンのチャンスといえる。日本ではマイナス金利政策が導入されているため、金融機関に資金を寝かせておけばかえって目減りしてしまうからだ。

日本国内には投資価値のあるスタートアップ事業が多くはない。上記の期間中、日本の投資ファンドによる自国企業への出資額はわずか120億ドル(約1兆3200億円)にとどまった。日本国内市場は成熟傾向にあり、成長性とイノベーションに欠けている。起業エコシステムはすでにかなり前から停滞しており、若者たちは行く先の見えないスタートアップよりも、むしろ高収入が保証される大企業を選ぶ傾向が強い。

一方、今から6年前、インド企業がすでに日本のベンチャーキャピタル(VC)の注目を集めていた事実には大きな意外性を感じる。

インキュベーション事業などを手がける「BEENOS」の創業者である佐藤輝英氏は当時、インドのムンバイで決済関連企業「Citrus Pay」の共同創業者Satyen Kothari氏と面会し、投資の意向を伝えている。Kothari氏はこうした自社への評価に幾分驚いたものの、提示価格が低すぎたこともあり、申し入れを丁重に断ったという。

Kothari氏は当時をこう振り返る。「佐藤さんのその後の行動はとても『日本的』だった。多くの労力を割いて投資意向のある他の日本企業を探し出し、当社との橋渡しをしてくれた」

Citrus Payは2013年12月、BEENOSやデジタルガレージを含む日本のVC数社から出資を受けた初の企業となり、合計で約550万ドル(約6億500万円)を調達した。また同社が2017年に資産管理会社「Cube Wealth」を創業した際には、佐藤氏の管理するBEENEXTおよびあすかホールディングスがサポートを行った。

インドに眠る投資チャンス

インドのベンガルールにあるシェアサイクルスタートアップ「Yulu」の共同創業者Amit Gupta氏はKrASIAに対し、「日本のVCは資金の投資先を見つけ、ふさわしいリターンを得る必要がある。米国、中国、インドは大きな市場だが、米国と中国の市場における優れたスタートアップの競争は熾烈だ。一方でインドの起業エコシステムは現在も成長段階にある」と述べる。Yuluは2018年、シードラウンドで日本のモバイルゲーム関連企業アカツキのCVCであるAkatsuki Entertainment Technology Fund(AET Fund)を含む数社から700万ドル(約7億7000万円)を調達した。

インドのモディ首相と日本の安倍首相は、昨年6月初旬に大阪で開催されたG20サミットの会談で、インドのテクノロジースタートアップに投資するファンドに1億8700万ドル(約200億円)を出資する日印ファンドオブファンズの設立に合意した。そのうち8割の資金は、みずほ銀行、日本投資政策銀行、日本生命およびスズキ株式会社を主とするLPから、また残りの2割はインド側から提供されている。

Unicorn India VenturesのVC管理パートナーAnil Joshi氏はKrASIAに対し「経済成長は鈍化しているが、インドの各業界にはいずれも大きなチャンスがある。日本とインドの良好な関係性から考えると(日本企業には)インドで投資機会を模索する理由がある」と語った。Unicorn India Venturesは昨年、インドのデジタル銀行プラットフォーム「Open」がシリーズAで500万ドル(約5億5000万円)を調達した際も参加しており、同ラウンドにはBeenextやリクルートのCVCであるリクルートストラテジックパートナーズも出資した。

一般的に日本の投資会社は二つに大別される。一つはBEENEXT、インキュベイトファンド、リブライトパートナーズなどのVCで、主にニッチ市場のシードラウンドおよびシリーズAに投資する。もう一つは三菱自動車、三井物産、住友商事、トヨタ自動車などの投資部門であり、シリーズBまたはシリーズCでごく一部の業界に対する戦略投資を行っている。

上記のリブライトパートナーズのGP(ゼネラルパートナー)であるBrij Bhasin氏は、「日本のVCはインドの各業界において新たなビジネスモデルを探している」と述べている。

BEENEXTはインドにあるスタートアップ約20社に、またインキュベイトファンドは約10社に出資を行っている。またリブライトパートナーズは少なくとも創業期にあるスタートアップ12社に出資しており、投資分野は高度な技術や分析、ヘルスケア、モビリティ、ECなど複数分野にわたる。

「多くの企業は、これまで蓄積してきた資金をもとに、自社の長期目標と合致する分野に戦略投資を行う。こうした分野は企業の既存商品と高度にマッチしているか、企業が新たな事業として展開したい分野であるかのいずれかだ」とBhasin氏は語る。例を挙げると、上述したAET Fundはインドのゲームプラットフォーム「SuperGaming」や「MechMocha」、またキャラクターグッズ関連スタートアップ「PlanetSuperheroes」、オンライン教育プラットフォーム「Doubtnut」などに出資。また豊田通商はインドの中古車マーケットプレイス「Droom」やバスアプリサービス「Shuttle」に、日本生命はローン関連企業「Moneyview」や資産管理プラットフォーム「Scripbox」に出資している。

Bhasin氏によれば、VCの投資額は通常10~300万ドル(約1100万~3億3000万円)、大企業では一般的に300~500万ドル(約3億3000万~5億5000万円)に上るとのことだ。

異なる日中の投資スタイル

日本企業はシンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなどの東南アジア諸国ですでに事業を展開しているが、中国に匹敵する市場はインドを除いて存在しない。ただしインドと中国の間にはまだ5~7年のギャップがある。

過去2年間、日中のVCはアジア市場で激しい火花を散らしてきた。インドの研究機関Venture Intelligenceのデータによると、中国のVCは昨年1~9月、インドのスタートアップに22億ドル(約2400億円)以上を投資している。一方で2019年の日本のVCによる投資額は合計15億ドル(約1700億円)となっている。

インドのVCであるVenture Gurukoolの創業者Mahendra Swarup氏は「インドにやってくる中国の投資家は彼ら自身が創業者であり、自身が関心を持つ起業分野やリスクテイク能力に基づいた投資を行う。このため彼らの投資理念はかなり急進的だ」との考えを示す。「一方で日本のVCのほとんどは日本本土にある大企業で、中国の投資家とは違い保守的で、なおかつ選り好みが非常に激しい」

KrASIAの取材を受けた複数の投資家および企業家によれば、中国の投資家が熱い視線を送るスタートアップは、急成長しているか、あるいはそのビジネスモデルが中国ですでに成功しているかのどちらかであるという。一方で日本の投資家は長期的なパートナー関係の構築に努めるとのことだ。

インドのノンバンク系金融サービス企業「slice」の創業者Rajan Bajaj氏は「日本の投資家は信用を第一に求める。関係性の構築までに一定の期間を要するが、一度信頼を得られれば資金の提供に踏み切ってくれる」と述べる。創業から3年のsliceは主に若者向けのローンサービスを提供しており、日本の「Das Capital」や「M&S Partners」を含む4社のVCから出資を受けている。

中国の投資家は主として消費分野のITスタートアップを有望視する。こうした分野には短期間で大きな成長を遂げた過去の成功体験があるからだ。これに対し、日本の投資家はグローバル資本市場における自国の影響力および製造業や自動車業界の底堅い実力から、フィンテックやモビリティ分野のスタートアップに投資する傾向がある。とはいえ、日本の投資家はヘルステクノロジー、EC、物流、ゲームなどのテック分野も漏れなく網羅している。
(翻訳・神部明果)

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