2020世界VCトレンド予測・アフリカ編 IT未開の地に中国投資家が熱視線

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2020世界VCトレンド予測・アフリカ編 IT未開の地に中国投資家が熱視線

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アーリーステージに特化した中国のVC(ベンチャーキャピタル)が、まもなく爆発的な成長期を迎えるであろうアフリカ市場を次の開拓地と見定めている。今年初め、36Krは中国のVC「戈壁創投(GOBI PARTNERS)」「清流資本(Crystal Stream Capital)」と共同で昨年のアフリカのベンチャー事情について振り返り、今年の展望を占った。

<2020年世界VCトレンド予測 インド編>

<2020世界VCトレンド予測・東南アジア編>

無限に広がる未開の地

13億という膨大な人口はそれだけでアフリカの強みだ。さらにアフリカ全体の経済も安定した成長に入っている。国連の最新の報告では、2019年のアフリカのGDPは3.4%の伸びで、今年は3.7%の伸びと予想されている。インターネットやスマートフォンが普及するにつれてアフリカ市場で起こるさまざまな現象からみるに、たとえ時間はかかっても将来的に劇的な成長期を迎えるのは既定路線だ。

アフリカ市場に見られるいくつかの趨勢について、以下にまとめた。

アフリカのVC市場

1)豊富な資金の流入が市場を後押し
比較的早期にアフリカへ進出したのは「Rocket Internet」「Y Combinator」「4DX Ventures」など欧米のプレーヤーだ。近年は「戈壁創投」「清流資本」「崑崙万維科技(Kunlun Tech)」「源碼資本(Source Code Capital)」など中国系VCも活発だ。スタートアップやVC専門の米メディア「CB Insights」の統計では、2018年末時点でアフリカのVCは51社を超えている。

アフリカ最大のVCで世界的投資会社パーテック・ベンチャーズのアフリカ支社にあたる「Partech Africa」は昨年1月末に1億4300万ドル(約160億円)を調達し、その額は前年の7000万ドル(約80億円)から倍増した。

2019年は間違いなくアフリカにとってマイルストーンとなった1年だ。VC市場全体で13億4000万ドル(約1500億円)を出資し、初めて10億ドル(約1100億円)の大台を突破したほか、出資案件は合計427件に上った。前年の7億2500万ドル(約800億円)からすると大々的な飛躍だ。

アフリカのスモールビジネスや起業家事情を伝えるメディア「WeeTracker」によると、この13億4000万ドルのうち、投資額で上位6%の案件が投資総額の83%を占めているという。

2)アフリカからの上場企業が登場
IPOによるイグジット達成案件も出始めている。昨年4月、ECプラットフォームを手がけるユニコーン「Jumia Technologies」がニューヨークに上場し、世界の主要証券取引所に上場した初のアフリカ企業となった。またアフリカ最大手となった中華系携帯電話メーカー「伝音控股(TRANSSION Holdings)」も昨年9月末、上海証券取引所の新興テック企業向け市場「科創板(Star Market)」に上場した。さらに有料衛星放送事業者「MultiChoice Group」も昨年2月、南ア・ヨハネスブルグのJSEに上場している。

こうした資金の大規模な流動がさらなる人材やリソースを呼び込み、そこから事業をスケールする流れを形成している。清流資本のマネージャー陶凱氏は「2019年はアフリカのテック企業創業元年だ」と述べた。

3)アフリカと密接に結び付く中国企業
中国の経済発展は製造業と貿易業からスタートした。中国が世界に台頭するに従い、中国の製造業は徐々にアフリカ移転を進め、多くの企業が製造拠点を同地に移した。かくして中国とアフリカの関係は緊密になっていたのだ。中国は過去、現地のインフラ建設に多額の支援を行うことでアフリカ進出を進めていったが、近年ではインターネット市場に機会を見出し、中国の技術、資本、スキームを続々と提供している。

中国を代表するテックジャイアントのアリババグループは2018年、発展途上国の零細企業向けに構築した電子貿易プラットフォーム「eWTP(ELECTRONIC WORLD TRADE PLATFORM)」をルワンダに進出させ、翌年11月にはエチオピアにも進出した。インターネット、物流など貿易関連のインフラを通じて中小企業の世界進出を支援し、越境ECの基礎作りを行っている。

フィンテック企業「Opay」も昨年11月、シリーズBで1億2000万ドル(約130億円)を調達したが、同社にも多くの中国資本が入っており、その事業スキームも中国企業を参考にしているという意味で一種のマイルストーンといえるだろう。

シリーズBでOpayに出資したのは生活関連O2Oサービス大手「美団点評(Meituan Dianping)」のほか、「IDGキャピタル」「セコイアキャピタルチャイナ(紅杉中国)」「高榕資本(Gaorong Capital)」「ベルテルスマンアジア投資基金(BAI)」「レッドポイント・ベンチャーズ・チャイナ(紅点中国)」「源碼資本(Source Code Capital)」「金沙江創投(GSR Ventures)」「龍珠資本(DragonBall Capital)」などの名が並ぶ。また、Opayは中国のテック大手が打ち立てた「スーパーアプリ」の概念を事業に取り入れている。

アフリカ最大手の携帯電話メーカーとなった伝音控股も中国IT企業の遺伝子を持つ。スタートは携帯電話メーカーだったものの、同社が構築したITプラットフォームは音楽関連、その他エンターテイメント関連、決済など多様な機能を備え、Opayと同様にプラットフォーマー型企業としてアフリカのデジタル化への基礎を固めた。将来的にあらゆるサービスをシームレスに取り入れる体制ができあがり、主に中国企業のアフリカ進出を支援していく構えだ。

アフリカの要注目分野

アフリカはVC市場全体がまだ黎明期にあり、インフラ自体も未整備のため、現段階ではインフラ建設市場に注目が集まっている。他の新興市場同様、金融、物流、サプライチェーンの効率を高め、コストを削減することが目下の課題だ。

1)フィンテック
広大なアフリカにおいて、金融サービスは立ち遅れている。銀行の支店網が行きわたっていないため、金融サービスの質も効率も望ましくない。全アフリカの13億人のうち、銀行口座を持たない人が66%以上を占めるという。そんな中、通信インフラが整い、モバイル端末が普及するにつれ、インターネットを活用したフィンテックサービスが大挙して市場を席捲しようとしている。

2007年にケニアで創業した「M-PESA」も、電子決済プラットフォームによってこうした課題を解決してきた企業だ。そのM-PESAを先駆けとして昨年にシリーズCで1億7000万ドル(約190億円)を調達した「Branch」も、2億ドル(約220億円)を調達した「Interswitch」もVISAが出資を主導しており、両社はアフリカのユニコーンとして一気にのし上がった。

2)物流とサプライチェーン
アフリカは金融同様、物流でも後れを取っている。物流市場が地域別に分散して互いに連携しておらず、道路インフラが未熟なこともあいまって、アフリカの物流コストは先進国の2~3倍かかるというのが現状だ。

陸運では貨物と車両のマッチングサービスやラストワンマイルを担う物流サービスが活況だ。都市間物流では「Kobo360」「Lori System」がIT化を取り入れて全物流プロセスの効率化を図っている。都市内物流ではナイジェリアの「Max.ng」、ケニアの「Sendy」などが急成長している。バイク輸送を起点に業務範囲を拡大中だ。

3)Eコマース
アフリカの人口構成は若年化しており、インターネットの普及率や生活費を押し上げている。Eコマース市場はブルーオーシャンだと見る向きがあるのはこれが理由だ。

高い配送コスト、ケニアやナイジェリア、エジプト、南アなどの「先進国」を除くとITインフラが未熟であること、教育水準が低いためにインターネットを使いこなせるユーザーが少ないこと、クレジット体系が存在しないこと(多くのEC利用者は出品者を信用せず商品受け取り後の支払いを希望するので取引効率が低い)などの要素が、Eコマース成長の足かせとなってきた。

しかし、インターネットがアフリカ内で広く普及し、インフラが整うに従い、Eコマース市場は多くの資金を得て爆発的に成長を始めるだろう。


(翻訳・愛玉)

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