「空飛ぶ車」の量産化でSF映画の未来世界は実現するか

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「空飛ぶ車」の量産化でSF映画の未来世界は実現するか

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自動運転車の本格的な実用化も実現しないうちに、空陸両用車「スカイカー(空飛ぶ車)」の量産が間もなく始まろうとしている。

スロバキアのスカイカー製造企業「AeroMobil(エアロモービル)」は昨年11月、第2回中国国際輸入博覧会に「AeroMobil4.0」を出展し、よほどのことがない限り年内に納車を開始する予定だと表明した。

スカイカーの量産化は世界的な傾向で、現在約20社が年内の納品を予定しており、各社ともに立体的な都市型モビリティーを提供することで、交通渋滞や環境汚染などの問題を緩和しようとしている。

米監査法人大手「Deloitte(デロイト )」のリポート「Elevating the Future of Mobility」より

北京首都国際空港から北京展覧館までは車で1時間。だが、スカイカーなら10分もかからない。上海から杭州までは少なくとも2時間かかるが「スカイタクシー」を利用できれば33分で到着する。スカイカーの登場で、郊外に生活の拠点を置き都市部で仕事をするという夢の暮らしが実現しそうだ。

スカイカー「Lilium jet」による上海から各都市への所要時間(「Lilium」公式サイトより)

1兆ドル市場の奪い合い

スカイカーは人類のモビリティースタイルを一新する可能性を秘めている。スカイカー市場は巨大なポテンシャルを持つブルーオーシャンだ。

米金融大手モルガン・スタンレーは、スカイカー業界は2030年までに3000億ドル(約31兆円)規模の市場を創出するが、当初は一部の地上・航空交通や公共交通からシェアを奪う形になると予測している。技術向上に伴い、多くの斬新な事業領域が切り開かれることで、40年には市場規模が1兆5000億ドル(約155兆円)に達すると見込んでいる。

モルガン・スタンレー公式サイトより

1兆ドル(約108兆円)規模のスカイカー市場争奪戦には、航空会社や航空機メーカーの他、インターネットを活用したモビリティーサービスを手掛ける企業や自動車メーカー、IT企業なども加わっている。

スカイカー市場参入企業一覧(上から「自動車メーカー」「IT企業」「モビリティーサービス企業」「航空機メーカー」)

中国の自動車メーカー「浙江吉利控股集団(Zhejiang Geely Group Holdings)」傘下の独「Volocopter(ボロコプター)」は昨年10月、シンガポールで電動垂直離陸機(eVTOL)の試験飛行を行った。同じく吉利の傘下にある米「Terrafugia(テラフージア)」は既に予約受注を開始しており、年内の納車を予定している。予定通り納車されれば、吉利はスカイカーを量産する世界初の企業となる。

その他の企業も、年内またはそれ以降の量産化を計画している。

トヨタ自動車は、2020年東京五輪開会式でスカイカーによる聖火点灯を目指す有志団体「CARTIVATOR(カーティベーター)」を支援。英航空機エンジン大手のロールスロイスは、年内にeVTOLをローンチすると明かしている。米配車サービス大手「Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)」も、年内に豪メルボルンでスカイカーの試乗サービスを開始する予定。米ボーイングと Google(グーグル)創設者のラリー・ペイジ氏が出資する「Kitty Hawk(キティホーク)」は、21年頃にスカイカー「Meet Cora」を実用化する見通しだ。

しかし、スカイカーは航空局の認可だけでなく、道路の安全管理に関する規定にも適合する必要がある。スカイカーオーナーは、自動車運転免許と飛行に関するライセンスの両方を取得しないと操縦を許されない可能性もある。

スカイカー市場拡大への課題

米監査法人大手「Deloitte(デロイト )」は、既に発表されているスカイカーは安全性と管理体制に問題がなければ年内にも大空に飛び立つだろうが、革命的なスカイカーの実現は2025年になるとの見通しを示している。

最初の課題となるのがバッテリーだ。エンジンを駆動させるバッテリーに革命的な改善がみられなければ、航続距離の限定やバッテリーの発熱という問題は解消されないだろう。

次に革命的な変化を待たねばならないのは、空中交通の管理制度とその体系だ。

中国では、広東省広州市に拠点を置き、小型無人機と自動操縦航空機を手掛ける「広州億航智能技術(EHang)」が、既に中国民用航空局により小型無人機試行地点での飛行を許可されている。米国では、Uberが低空を飛行する自動運転車の管制システムを構築するため、米航空宇宙局(NASA)と「Space Act Agreement(宇宙活動協定)」を締結している。

5人乗り電動垂直離陸機(eVTOL)「Lilium jet」(Lilium社公式サイトより)

だが、スカイカーが自由に航行できるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。

スイス金融大手のUBSが17年に行った調査では、インタビュー回答者の54%がパイロット不在の完全自動操縦の航空機には乗りたくないと答えている。

米航空宇宙・防衛産業企業「L3Harris Technologies」(旧L3 Technologies)のチーフエンジニア、アンドリュー・ネルソン氏は、eVTOLは全く新しい概念であるため、コンプライアンス認証および関連法規の整備に3〜5年かかるとの見通しを示した上で「米国ではeVTOLと自動運転技術の安全性を保証するため、さらに長いテスト期間とより低い事故率が求められる」と述べた。
(翻訳・田村広子)

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