ソニー、サムスン、ファーウェイ 自動車業界参入の勝者は誰か?

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ソニー、サムスン、ファーウェイ 自動車業界参入の勝者は誰か?

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テレビ、パソコン、スマートフォンに続き、車は人々の生活にとって重要なものとなった。1兆元(約15兆円)規模の市場を持つカーエレクトロニクス業界は、アップル、ファーウェイ、サムスン、シーメンスなどのコンシューマー・エレクトロニクス大手が競って参入を目指すブルーオーシャンだ。

ファーウェイの車載コンピューティング・プラットフォームおよびインテリジェント・ ドライビング・サブシステム・ソリューション「モバイルデータセンター(MDC)」、ノキアの車載ナビゲーションシステム「HERE Auto」、大手ドローンメーカー「DJI(大疆創新科技)」の自動運転車向けLiDARセンサー「Horizon」に始まり、サムスン、ソニー、TCLがリリースした車載インフォテインメント・システムに至るまで、人々にとってなじみの深いデジタル機器企業や電機メーカーが、自動車電子機器のサプライチェーンにおいて不可欠な役割を果たすようになってきた。

相次ぐ大手の参入

2016年、サムスングループは80億ドル(約8400億円)を出資して、米自動車部品メーカー「ハーマンインターナショナル」を買収し、カーエレクトロニクス分野(電気自動車部品や自動運転など)に進出した。これはサムスンにとって最大規模の買収案件で、この買収によってグローバルなカーエレクトロニクス市場におけるサムスンのシェアはLG電子を上回った。

ハーマンの成長見通し―車載インフォテインメント・システムとテレマティクス市場(ブルームバーグ提供)

これ以降、ますます多くのコンシューマー・エレクトロニクス大手が自動車電子部品のサプライヤーとして、将来性が見込まれる自動車業界へ参入するようになった。

家電業界の利益は縮小しつつあり、2014年シーメンスは全領域において家電から撤退すると発表し、自動化とデジタル化の領域に注力するようになった。現在、シーメンスはすでに「北汽新能源汽車(BAIC BJEV)」、BMW、アウディなど多くの自動車企業に製造のデジタル化ソリューションを提供している。北京の地下鉄10号線のCBTC(無線式列車制御)システムもシーメンスの提供だ。

今年1月に米ラスベガスで開催された世界最大のエレクトロニクス見本市「CES 2020」でソニーは、独自のイメージセンサーを搭載し自動運転に対応したプロトタイプの純電気自動車「VISION-S」を展示し、BMWやベンツなどの大手自動車企業を抑えて話題をさらった。多くの来場客が発売時期や価格を尋ねたが、ソニーグループの社長兼CEOの吉田憲一郎氏は「この車を発売する予定はない」と述べている。

VISION-S(ソニー公式サイト提供)

映像とセンシングソリューションで優位に立つソニーは、VISION-Sプロジェクトを通じて、エンターテインメント空間における技術とビジネスに関する可能性を検証したいと考えている。吉田氏は「過去10年間のメガトレンドはモバイルだった。これからはモビリティーだ」と語った。

DJIの子会社「Livox Technology」は、同等の性能を持つLiDARより大幅に価格が低い新製品の発売を発表した。LGは車載インフォテインメントプラットフォーム「webOS Auto」を初めて展示し、オランダの半導体サプライヤー「NXPセミコンダクターズ」はスマートコックピットを展示しており、カーエレクトロニクス分野は半導体ひいては科学技術にとって、次に注力すべき重要な領域となっている。

NXPスマートコックピット (中金公司(CICC)研究部提供)

自動車がモバイル機器になる

家電、パソコン、スマートフォンに続く産業チェーンの大規模発展のチャンスとして、自動車産業は大きな期待を寄せられている。

米・半導体企業クアルコムのCEOスティーブ・モレンコフ氏はインタビューに対し、「現在の自動車業界は2000年頃の携帯電話市場に似ており、多くの技術が出現し、それによって今までの業界の常識が覆されようとしている。当時、スマートフォンが発展した道のりがこれからの参考になるだろう」と述べた。

消費者向け電子機器と自動車電子製品のライフサイクル、モジュールと機能の比較
提供:清華自動車産業・技術戦略研究院(TASRI)、GAST

テスラを例にとってみよう。テスラの2019年第4四半期の決算報告からすると、ソフトウエアサービスへの継続的な課金は、今後最も重要なビジネスモデルになるだろう。これはアップルのクローズドループモデル(ユーザーを囲い込んでサービスを提供していくモデル)を踏襲している。2019年9月、テスラはOTA(Over the Air、無線ネットワークによる)アップデートで車載ソフトウェア「V10」を提供した。、このバージョンではゲームと動画視聴機能が導入されており、テスラの乗車体験は次第に「サードプレイス(自宅、職場とは異なる第三の場所)」に近づいてきた。

アップルのiPhoneの10年に及ぶ絶え間ない革新と同様に、テスラのOTAアップグレードと自動車のEE(電気・電子)アーキテクチャが自動車業界そのものを再定義し、多くの自動車企業がこの流れに追随している。

フォルクスワーゲンのCEOハーバート・ディエス氏は「自動車はIT史上最大のソフトウエア開発量を誇る製品になる。ソフトウエアが将来は自動車関連のイノベーションの90%を占め、自動車は最も重要なモバイル機器となり、『タイヤの上に載ったiPhone』になるだろう」と社内向けに述べている。2019年6月、フォルクスワーゲンは正式にCar.Software車載ソフトウエア開発部門を設立し、2025年までに車載ソフトウエアの自社研究・開発比率を10%から60%にまで引き上げ、自動車を機械製品から電子製品へと変貌させていく計画だ。

このようにコンシューマー・エレクトロニクス大手の参入により、自動車産業チェーンの川下から川上へ向けて変革が起これば、それは業界全体の再編にも繋がっていくだろう。
(翻訳・普洱)

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