「エアコンの王」格力電器、新型コロナで空気清浄機など緊急生産、次はハイエンド医療へ

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中国大手家電メーカー「格力電器(GREE、グリー・エレクトリック・アプライアンシズ)」は、新型コロナウイルスの流行で大きく変わった。マスクや新型コロナウイルス対応空気清浄機の製造だけでは飽き足らず、ハイエンド医療参入を宣言したのだ。

3月17日、同社董事長兼総裁の董明珠氏が、格力電器本社で行われた公益目的のライブ配信番組に出演した。要旨は、同社がマスクと抗ウイルス空気清浄機の製造に着手した理由、同社がハイエンド医療機器に参入する理由、および今年見込まれる同社の業績不振の3点だ。

この空気清浄機は、董明珠氏のセルフメディア内に設けられたショップで販売されており、価格は1万2000元(約18万円)だ。商品説明には「空気中の新型コロナウイルス(COVID-19)を99%以上除去、ウイルスの空気感染を効果的に防ぎ、各種粒子状物質の除去にも有効」とある。

董総裁によれば、この空気清浄機を開発した当初の目的は、自社で働く社員の健康を守るためだった。格力は数年前にも抗ウイルス空気清浄機を開発している。新型コロナウイルスに特化した今回の空気清浄機の開発には2カ月を要したが、もし1カ月から1カ月半早く開発できていたら、医療スタッフがこれほど多く感染することはなかっただろうと、自身の考えを述べた。

「世界各地で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症に特効薬がない中、新型コロナウイルスを除去できる空気清浄機こそベストな選択だ」。董総裁は、医療機関や学校にこうした製品を配備すべきだと強調する。

董総裁のセルフメディアで公表された実験報告によると、武漢市内で新型コロナウイルス感染症の治療にあたる病院のCT室で空気を採取、それをこの空気清浄器で1時間浄化したところ、新型コロナウイルスの核酸含有量が大幅に減少し、ウイルスの数は1/10以下に減少した。これはCT室空気中のウイルスが99%以上除去されたことに相当するというのだ。

董総裁は家電メーカーであるはずの格力電器がマスクを製造した経緯も初めて明かす。当初、政府から要請された仕事はマスク生産設備の製造だった。しかし、同社の開発担当者には一切のノウハウがなく、製造機の実物さえ見たことがなかったため、白紙状態から開発を進める。結果的に製造機は完成したが、市場には粗悪品のマスクが多く出回っていることを知り、自社でマスクも製造することに決めたのだ。

3月9日、格力が自社生産したKN95マスクと医療用マスクの予約販売を始めると、ネットショップには予約が殺到した。KN95マスクの価格は1枚5.5元(約85円)で1箱275元(約4300円)、医療用マスクは1枚3元(約45円)で1箱150元(約2300円)、他のネットショップより圧倒的に安い。

董総裁氏はマスクと新型コロナウイルス向け空気清浄機に加え、医療機器の開発に10億元(約150億円)を投資すると発表する。同氏曰く「私は10億元を投げ打とうととしているが、これはどうしても必要なことなのだ」。

董総裁の語り口は率直だ。高い技術力を持つ格力にしてみれば、マスクやマスク製造機器、体温計などの開発に大した技術は必要なかった。しかし中国国内の医療機器、特に高い技術を必要とする医療機器は中核技術に欠け、進化の余地がかなりある。まだ明確な計画ではないが、新型コロナウイルスの流行がある程度沈静化したら、格力はハイエンド医療機器の開発部門を始動させる予定だと語った。

董総裁の話は格力の業績に及ぶ。「今年の業績は確実に下降する。なぜなら、2月の1カ月間はほぼ売り上げがなかったからだ」。しかし、同氏は今日の業績不振があってこそ社員は未来の業績向上へ備えるようになると考える。

格力の医療分野進出はここ1カ月、広く注目されてきた。董総裁氏は、格力が医療事業へ進出するのは事業拡張やチャンスを狙うためではなく、責任を担うためであると強調する。同氏は、新型コロナウイルス感染症流行で空騒ぎするなというのは難しく、誰も頼りにできないと言う。「一番大切なのは、一人一人が行動すること。他人に頼らず、積極的に進もう」と語った。
(翻訳・永野倫子)

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