新型コロナ流行を逆手に、滅菌包丁スタンドが中国でブレイク

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新型コロナ流行を逆手に、滅菌包丁スタンドが中国でブレイク

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中国の大手家電メーカーは価格戦争に突入し、ごく一部のヒット商品を除いて、利益の圧縮がますます進んでいる。そのような状況でも小型家電は比較的健闘しているニッチな領域だ。例えば、新興メーカーの「小熊電器(Bear Electric)」は小型家電シリーズによって若者の人気を集め、2019年に上場した。昨年の営業利益は、前年比31.92%増の26億9200万元(約410億円)で、純利益は前年比40.08%増の2億6000万元(約39億円)だ。

突如始まった新型コロナウイルスの流行は健康への関心を呼び起こし、さらに家庭で調理する機会が増えたため、「火鶏」というブランドの滅菌包丁スタンドが話題になっている。同ブランド名が、人気ソーシャルECの「小红書(RED)」や「抖音(Douyin、海外では「TikTok」)」などに頻繁に登場しているほか、「滅菌包丁スタンド」という言葉そのものが大手ECプラットフォームでトレンドワードになっている。

「火鶏」は昨年4月にローンチされたハイエンドからミドルレンジまでの若者をターゲットにした小型キッチン家電ブランドだ。現在、同ブランドには4種類の滅菌スタンド(ドイツ「ツヴィリング(ZWILLING)」社製ナイフとのコラボレーションモデルを含む)と1種類のIHクッキングヒーターがあり、価格は299~499元(約4500~7500円)となっている。新型コロナウイルスの流行を受け、滅菌包丁スタンドの月間売上量は、現在5万件を越えている。

「火鶏」の創業者は、中国キッチン家電大手「老板電器(Robam Appliances)」前CTO(最高技術責任者)の王強氏だ。王強氏は同社で創新研究院(イノベーションセンター)院長や設計総監を歴任、家電業界での経営管理経験は14年に及ぶ。共同創業者の王剣春氏はインターネット業界で6年、キッチン家電業界で8年の経験があり、金融システム開発の「恒生電子(Hundsun Technologies)」やオンライン決済サービス「支付宝(アリペイ)」のプロジェクトの経験があるほか、老板電器とそのスマートプロジェクトの担当もしてきた。もう一人の創業パートナー陳勇氏は、老板電器傘下の業務用食器棚メーカー「安泊櫥櫃(Amblem)」の前副社長で、老板電器でキーアカウント・マネジャーも務めていた。他の中核メンバーもみな、老板電器や「九陽(Joyoung)」、「蘇泊爾(SUPOR)」などの一流キッチン家電ブランドの出身だ。

従来家電をスマート化

滅菌包丁スタンドを製作することになった経緯は至って単純だ。友人から、木製の包丁スタンドは湿度が高い時期にカビや虫が発生して困ると聞いた時、家電業界で働いてきた王強氏は即座に、この手の問題はスマート家電で解決できると思った。

王強氏が調べてみると、販売されている包丁スタンドはみな木製で、スマート家電のものは見つからない。滅菌包丁スタンドなど前例がなく、開発を始めた当初、チームのモチベーションは低かった。技術的には、滅菌包丁スタンドを作るには、発熱体モジュールを組み込み、70〜75度の高温で乾燥させると共に紫外線照射などで滅菌すればいい。

滅菌包丁スタンドの発売開始は昨年4月で、検索件数は7月から徐々に増加し始めた。そして、突如やってきた新型コロナウイルス禍は、人々の健康意識を高め、滅菌包丁スタンドの販売量を押し上げた。最近になって「火鶏」の検索数や販売量は4〜5倍増加している。

王強氏は、キッチン家電のポジショニングを、若者世代が自宅キッチンでよく使う小型家電としている。このため、火鶏ブランドはキッチン周りに主力を置く。包丁や箸・カトラリーの滅菌スタンドのほか、今後はまな板用の滅菌スタンドも滅菌シリーズに加え、更に健康をコンセプトにした簡便な調理家電をリリースしていくつもりだという。

ターゲットはファミリー層

九陽、「小熊電器(BEAR ELECTRIC)」、蘇泊爾、「摩飛電器(Morphy Richards)」、「小宇青年」など、一般の小型家電ブランドが単身世帯をターゲットとしているのに対し、火鶏のターゲットはどちらかと言えばファミリー層だ。これは理解しがたいことではない。家族の方が単身世帯よりもキッチンを利用する頻度が高く、また主に調理を手掛ける女性のニーズは手軽さよりも健康や品質に向かっているからだ。

滅菌包丁スタンドは比較的新しいジャンルのため、消費者への周知も必要だ。火鶏は小红書や抖音などSNSプラットフォームをメインにインフルエンサーと協力してコンテンツを作成し、製品性能などを具体的なデータを使って商品説明をしている。

火鶏が滅菌包丁スタンドをローンチした後、類似商品が続々と登場した。市場競争について王強氏は、消費者ブランドには製品、チャネル、ブランドという3つの基盤が必要で、製品の性能自体が口コミやブランドを形成すると語る。老板電器で設計を担当してきた王強氏は、製品のディテールにもこだわる。例えば火鶏の滅菌包丁スタンドではフィルムの境界が見えないように、通常コストの6〜7倍かけて傾斜角度を2度調整した金型を作っている。こうした細かな差別化が品質と口コミの違いとなって表れ、各ディテールにこだわってこそ、堅固なブランドを確立できるのだ、と王強氏は語る。

火鶏は2019年のエンジェルラウンドで「亜傑基金(Asia America Multi-technology Association)」と「杭州熱電集団」から800万元(約1億2000万円)を調達している。
(翻訳・永野倫子)

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