コロナ禍の打撃を直に受ける中国携帯メーカー 海外市場で急速に勢い失う

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中国携帯メーカーが八方ふさがりの窮地に立たされている。

インドの週刊誌「India Today」によれば、同国は3月24日から全国75行政区でのロックダウン(都市封鎖)を実施しており、オフィス、企業、工業が完全閉鎖となっているほか、ほぼ全ての市民の外出が禁止されている。中国の携帯メーカーvivo、OPPO、シャオミ(小米科技)のインド工場も全面閉鎖となり、オフィスや実店舗も営業を停止している。

これらに加え、シャオミやredmeなどのオンラインブランドが頼みの綱としているインド最大手ECサイト「Flipkart」も一時的に運営を停止している。さらにEC大手アマゾンも食品や衛生用品など生活必需品の注文のみを受け付けており、携帯電話は当然ながらこの中に含まれていない。モディ首相は「インドがこの21日間をうまく乗り切れなければ、わが国は21年の遅れを取ることになる」と国民に警告した。

vivo、OPPO、シャオミは海外で何重もの打撃を受けている。インドだけでなく他地域の状況も予断を許さない状況だ。各メーカーの販売計画に組み込まれている中南米諸国も現在ではその多くがロックダウンの措置を講じており、短期的には規制が緩和される見通しはない。また大々的な参入を計画している欧州市場も、新型コロナウイルスの深刻な被害を受けている。無慈悲ともいえる感染拡大を目前にして、人間のできることは限られている。「都市封鎖がされていない地方に移るしかない」と某企業で海外業務を担当する従業員は語った。

英アマゾンのように通常どおりの配送を続けている状況においても、購買力の低下は顕著にみられる。IDCのレポートは、2020年上半期の世界のスマートフォン出荷台数は10.6%減となるとしている。また36Krが入手した情報によると、ある大手メーカーでは100万台分のオーダーがキャンセルされた。

本来であれば、海外での売上げは各メーカーの今年の最重要事項だったが、現在では立て続けに打撃を受けている。とりわけOPPO、vivo、シャオミは中国国内ではファーウェイに押され、海外の重要マーケットでも立ち往生の状況に陥り、オフラインの実店舗も閉鎖に追いやられている。

中国国内市場にはもう多くの伸びしろが残されていない。海外でのコロナ禍は、もう一方の進路が絶たれたことを意味する。もし海外市場が急速に正常化されないとなると、携帯メーカー各社はさらなる危機に直面するだろう。

先行き不透明な欧州市場

欧州進出は中国携帯メーカーにとってのコンセンサスであり、米国以外で実力をアピールできる重要な地域となっている。同地域を手中に収めることはメーカーにとって大きな一歩であり、真の意味で「ハイエンド」ブランドの仲間入りを果たしたことを意味する。

欧州市場はこれまでアップルとサムスンの独壇場であり、ファーウェイは十数年をかけてようやくトップ3の仲間入りを果たした。ピーク時には単一四半期に2000万台以上を欧州で出荷している。しかし、米国の制裁を受けて以降、ファーウェイの欧州での成長率は急降下しており、その分のシェアがサムスンとシャオミによって二分されている。

シャオミはこれまで欧州でのシェアを拡大してきたが、サムスンの一人勝ちを回避するため、欧州の主要通信事業者であるTelefonica、Vodafoneなどがシャオミとの提携を実施してきた。2018年には香港の大手通信事業者Hutchisonがシャオミとそのサブブランドredmiのスマートフォンをスペイン、オーストリア、イギリスなどの市場で販売し始めた。またスペイン最大の通信事業者Telefonicaは今年、シャオミのMi 9 Lite、Redmi Note 8Tおよび Mi Note 10 Proの発売をスタートしている。

とはいえ、シャオミの欧州でのこれまでの業績は月並みであり、2019年第2四半期に入って急速に2ケタ成長を果たし、第3四半期には73%増となり、破竹の勢いをみせている。

OPPOのグローバル販売総裁の呉強氏は囲み取材の際、欧州について繰り返し言及し、昨年の成長率が2倍に達したことを明らかにした。さらにドイツ、アイルランド、ベルギーなどの市場への参入も進めるという。

このように、シャオミとOPPOはいずれも欧州市場で野心をたぎらせていたが、新型コロナウイルスにより歯車が狂わされている。36Krの調査によれば、通信事業者が牛耳るオフライン市場はほぼ停滞状況に陥っており、アマゾンなどが扱うオンライン商品も生活用品に重きが置かれ、一部の国ではスマートフォンがすでに販売停止となっている。携帯メーカーは自社サイトで販売するほかない状態だ。

OPPOとシャオミは今年、ハイエンド機の販売に全力を注いできた。一般的に、欧州の携帯電話はローエンドモデルで200ユーロ(約2万4000円)、ミドルレンジで500ユーロ(約5万9000円)、ハイエンドで700ユーロ(約8万3000円)が境界線の価格だ。RenoとFindはOPPOの欧州での主力機種であり、Reno標準版の販売価格は当初499ユーロ(約5万9000円)、また最新のFind X2 Proの定価は一挙に1000ユーロ(約11万8000円)の大台を突破した。これまではファーウェイのMateシリーズを除き、こうした価格帯に達する機種はなかった。またシャオミのMi 10も3月27日に欧州で正式に発売が開始されており、Pro版の価格は999ユーロ(約11万8000円)と明確なハイエンド市場志向がうかがえる。

だが新型肺炎によりこのハイエンド戦略も勢いを削がれることになるだろう。世界最大級の携帯電話関連展示会であるMWC(モバイルワールドコングレス)の中止により、シャオミとOPPOは新機種発表の機会を失い、PR効果が大幅に低減した。シャオミは現在、欧州で依然としてコストパフォーマンスに優れるメーカーとして知られている。またOPPOの知名度はそもそも高くない。MWCが中止となったことで、欧州市場でのブランド力を高めたいという両社の目標は、実現からさらに遠のいたといえる。

勢い失うインドの携帯市場

さらに大きな打撃がインドからもたらされるだろう。インドは中国メーカーがこれまで重点的に投資を行ってきた地域であり、同国でのシャオミの出荷台数はかなり前に中国国内の出荷台数を超えている。またOPPOと同社サブブランド「Realme」の第4四半期の出荷台数は合計で900万台に達し、vivoもインド第3の携帯メーカーになっている。インドは世界有数の成長市場であり、利益率は中国には劣るものの、高い売上高をもたらしていた。

しかし、新型コロナウイルスにより、インドの成長に休止符が打たれるかもしれない。米調査会社カナリスの最新リポートによれば、インドのスマートフォン市場は最悪の場合、通年で4.2%の下落となる可能性がある。また最高でも成長率は前年比3.2%にとどまり、昨年の8%の成長率と比較すれば、楽観的に見ても今年のインド市場は活気を取り戻すことが難しいという。

打撃は全方位に及んでいる。OPPOとvivoはインド全土に広がる実店舗により地位を確かなものとしてきたが、数万店が閉鎖を余儀なくされた。一方でシャオミとOnePlus(ワンプラス)のプレッシャ-はそれより低いものの、自社の公式サイトでの販売に徹するほかなく、サードパーティーのECサイトでの販売がいつ再開されるかは未定だ。

多くの計画が頓挫しており、本来3月31日にインドで発売を予定していたシャオミのMi 10も発表会を延期した。OPPOやvivoの工場や世界最大級のEMS企業フォックスコンなどが大規模な操業停止をしており、今後の新製品の生産や販売に支障をきたすことは必至だ。もし中国国内から商品を工面するとすれば、高額な関税が課されることになる。

さらに、インドの現在の新型肺炎の拡大状況や社会状況も不明瞭であり、インドの感染者数は10日で5倍増え(注:記事執筆段階)、感染速度は明らかに加速している。防疫物資や検査設備が不十分なインドでは、現時点で感染症発生地域への渡航歴のある人や重症患者しかPCR検査を受けられていない。

その上、インドの医療資源の深刻な不足が人々をさらに不安にさせており、農村人口が7割を占める同国の病床数は28万床にも満たない。疫学専門家のRamanan Laxminarayan氏は取材に対し、インドは感染者が爆発的に増加するオーバーシュートを迎える可能性があり、3億人が感染する恐れもあるとの認識を示している。欧州に比べ、インドはより大きな不確実性を抱えている。

メーカーは売上げを求める一方で商品を販売する先がない。市場のグローバル化の中で、海外市場への依存が大きいほど今回の打撃を大きく受ける結果となっている。新型肺炎の蔓延が速やかに終息すれば、ビジネスが再び正常な軌道に乗り、中国メーカーも活気を取り戻すだろう。一方で終息が遅れれば、リストラやコストカットの措置が講じられる可能性がある。いずれにせよ、2020年は厳しい1年になるだろう。
(翻訳・神部明果)

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