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アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏がEコマースなどの「オンライン」とリアル店舗をベースにした「オフライン」を融合した小売業の新業態「ニューリテール」を発表してから、すでに4年半がたつ。依然、主導権を握っているのは、次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」などの新業態を生み出してきた提唱者アリババだ。とはいえニューリテールを目指した小売業の中には投資に見合うだけの業績を挙げられないケースも多い。目下、「オンラインとオフラインの融合」というニューリテールの恩恵を受けているのはアリババ傘下の省力化されたスマートコンビニ「便利蜂(Bianlifeng)」などわずかだ。先頭を走る2社の戦略と展望を探る。
アリババグループは、ニューリテールのオペレーション体系を構築して業界に発信しており、台湾系の大型スーパー「大潤発(RT-MART)」や百貨店チェーン「銀泰百貨(Intime Department Store)」、スターバックスコーヒーなどが追随して導入に動いた。ただ現実はそれほど甘いものではなく、従来の伝統的な小売業態に逆戻りした企業も多い。ニューリテールで成功を収めるキーワードは、ターゲット顧客から直接反応を得ながら販売促進する「ダイレクトマーケティング」、「データ主導」、「オンラインとオフラインの融合」であり、そうした手法を活用している典型と言えるのが、盒馬鮮生と便利蜂、それにLuckin Coffee(瑞幸珈琲)など限られた企業だ。
新たなビジネスモデルを模索する盒馬鮮生
アリババのニューリテールを体現した盒馬鮮生は5年目に差し掛かり、成熟期を迎えている。この1年で組織上の調整を行い、安定度もいっそう増し加わった。
昨年には6つの新業態を相次いで打ち出しており、大型の盒馬鮮生と小型スーパー「盒馬mini(Hema mini)」をメインに、他の新業態をサブに据えた店舗体系を作り上げた。責任者の一人が明かしたところでは、将来的に盒馬miniの売上高が盒馬ブランド全体の半分を占めるまでになるという。しかし店舗面積や立地を考えると、盒馬miniは店舗数でも販売量でも大型店舗には遠く及ばない。盒馬miniだけで全体の売上高の50%をあげようとすればは、大型店舗をはるかに上回るペースで出店を進めるしかない。
だが実際は盒馬はより地に足のついた形で事業を展開していくことになりそうだ。短期間での黒字化は難しいため、まずはコストと業績のバランスを取ることに集中している。業態ごとのコストと効率に照らして店舗体系を見直したことで、事業の拡大は順調に進んでいる。2019年第4四半期から2020年春節(旧正月)直前までの3カ月余りの間に、盒馬は50店舗をオープンさせた。さらにニューリテール事業の財務報告を見ると、コスト抑制効果がしっかり数字に表れている。
成熟を続ける盒馬だが、利用者の方もますます多様化している。当初のメインターゲットだった新しいもの好きな大都市の若者は、今では新しいものに抵抗感がなくなっている。新型コロナウイルス肺炎の流行により中高年を取り込むチャンスも訪れているが、この層はもともと価格やサービスに対してシビアなため、当面の利用者が増えたとしても定着するかどうかは別問題だ。
このため、他に類を見ない商品やサービスを打ち出せるかが重要なポイントとなる。盒馬は引き続き商品の差別化を図り、「日日鮮」や「有機鮮」といった生鮮食品のプライベートブランド(PB)のラインナップを拡大していく考えだ。また、会員制システム「盒馬X」や配送サービスなどにも力を入れていく。
生鮮品はサプライチェーンに大きく依存するビジネスだ。盒馬鮮生CEOの侯毅氏はかつて「イノベーションで突出している盒馬鮮生だが、サプライチェーンなどのビジネス基盤はそれほど厚くない」と語った。そこで盒馬は直接仕入れを行う契約農業を推進し、農産地と直接提携することで、より多くの川上産業のビジネスと接点を持とうとしている。現在、盒馬の商品のうち、産地直送品が三分の一近くを占めている。アリババグループのデジタル農業事業部総裁でもある侯毅氏は、デジタル化によって農業を変革できると考えており、「将来的に新農業は巨大なブルーオーシャンになる」との見方を持っている。
アリババグループ内の布陣も、新たな化学反応を生み出そうとしている。盒馬を巡る直近の組織改革では、B2B事業グループ責任者の戴珊氏の管轄下に入ることが決まった。契約農業の模索を続ける一方で、B2B事業グループとの緊密な連携を保つことにより、農業のサプライチェーン強化にいっそうの弾みがつくことだろう。
関連シリーズ:ニューリテールの急先鋒 驚異的な出店ペースで拡大する無人コンビニ「便利蜂」
(翻訳・畠中裕子)
(編集・後藤)
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