ニューリテールの急先鋒 驚異的な出店ペースで拡大するスマートコンビニ「便利蜂」

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ニューリテールの急先鋒 驚異的な出店ペースで拡大するスマートコンビニ「便利蜂」

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アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏がEコマースなどの「オンライン」とリアル店舗をベースにした「オフライン」を融合した小売業の新業態「ニューリテール」を発表してから、すでに4年半がたつ。依然、主導権を握っているのは、次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」などの新業態を生み出してきた提唱者アリババだ。とはいえニューリテールを目指した小売業の中には投資に見合うだけの業績を挙げられないケースも多い。目下、「オンラインとオフラインの融合」というニューリテールの恩恵を受けているのはアリババ傘下の省力化されたスマートコンビニ「便利蜂(Bianlifeng)」などわずかだ。先頭を走る2社の戦略と展望を探る。

アリババグループは、ニューリテールのオペレーション体系を構築して業界に発信しており、台湾系の大型スーパー「大潤発(RT-MART)」や百貨店チェーン「銀泰百貨(Intime Department Store)」、スターバックスコーヒーなどが追随して導入に動いた。ただ現実はそれほど甘いものではなく、従来の伝統的な小売業態に逆戻りした企業も多い。ニューリテールで成功を収めるキーワードは、ターゲット顧客から直接反応を得ながら販売促進する「ダイレクトマーケティング」、「データ主導」、「オンラインとオフラインの融合」であり、そうした手法を活用している典型と言えるのが、盒馬鮮生と便利蜂、それにLuckin Coffee(瑞幸珈琲)など限られた企業だ。

驚異的な出店ペースで市場を侵食する便利蜂

華々しさはないものの着実に歩を進めているもう一つのニューリテール代表は、IT化によって従業員の数を極端に減らしたスマートコンビニの便利蜂だ。

盒馬が推し進める斬新なビジネスモデルが本当に通用するのかという懸念がつきまとうのに対して、便利蜂が参入したコンビニ業界にはほとんどそのリスクが存在しない。便利蜂の出資者で「斑馬資本(Zebra Capital)」創始者の庄辰超氏の言葉を借りれば、「コンビニ業態は東アジア地域ですでに実証されたビジネスモデルであり、テクノロジーの潮流に左右されることはない」という。一番の課題は、どれだけ規模を拡大できるかということだ。

庄氏が目指しているのは、コンビニブランドが異常なほど細分化している中国市場で、全国規模の大手コンビニチェーンを作り上げることだ。世界に眼を向けると、コンビニチェーン最大手のセブンイレブンは世界各地に6万店以上を展開しており、コンビニ業界の可能性は依然大きいと言える。

(写真は同社HPより)

便利蜂は一心不乱に新規出店を進めて目覚ましい成果を上げた。2016年年末に創業された同社は現在までに中国14都市で1500店以上を運営している。北京のシリコンバレーと言われるハイテク産業が集まる中関村エリアに第1号店をオープンさせてからわずか3年足らずのことだ。中国で店舗数最多を誇るファミリーマートが2500店をオープンさせるのに16年かかったことを考えると、便利蜂の驚異的な出店スピードがよく分かる。

3年間で1000店という当初の目標を前倒しで達成した便利蜂は、昨年末に今後3年間の目標店舗数を1万店に上方修正した。新型コロナウイルスの感染拡大により実店舗展開する小売業は打撃を受けており、当然ながら便利蜂のキャッシュフローや出店計画にも影響が及ぶと考えられる。それでも斑馬資本からのバックアップに加え、中国著名VC「高瓴資本(Hillhouse Capital)」やIT業界の巨頭、テンセントからの資金調達にも成功しており、コロナ禍に耐えうるだけの十分な体力を持っている。しかも、新型コロナ終息後に出店計画を加速することを、2020年の最重要戦略と位置づけているのだ。

同時に、大規模な店舗展開を支えるサプライチェーンの構築にも力を注いでいる。2月には供給拠点の建設用地として、天津市に3万平方メートルの土地を購入した。ここから分かるのは、北京・天津地区で少なくとも5000店を目標にしているということだ。今後はさらに華東地区(上海市、江蘇省、浙江省)、華南地区(深センや広東省を中心にした珠江デルタ地区)でも同様のサプライチェーン構築を進めていく。

とはいえ、便利蜂にとって最も重要なのは規模ではない。中国でコンビニを大規模展開する上でまず必要なのは、システムとアルゴリズムを活用して省力化を進めることだ。

現在、便利蜂では商品の発注、陳列、価格設定など多くのプロセスをスマート化しており、店舗スタッフはほとんどの場合システムに指示を出すだけでよい。スマート化することでスタッフの業務を簡略化し、研修時間も節約できる。これこそが便利蜂の驚異的な出店ペースを実現しているのだ。ただ、このシステムの開発費をどれほどの期間で回収できるかは未知数だ。広く浅く回収できるよう大規模出店を続けると同時に、店舗単独でいち早く黒字化できるよう効果的な出店を行うことが必要だ。

業界関係者によると、IT業界からコンビニ事業に参入したブランドの中には見境なく出店を進めるケースが多く、すぐに経営が成り立たなくなるのだという。便利蜂も大規模出店を進めるビジネスモデルではあるが、人の流れや売上高の試算といった出店に至るプロセスは業界内で最も慎重だ。このような方針が、業界で突出した開店成功率につながっているのだろう。

関連シリーズ:ニューリテールの急先鋒 アリババの「盒馬鮮生」 現実見据えつつ新たなビジネスモデルを模索

(翻訳・畠中裕子)

(編集・後藤)

原文はこちら

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