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2018年から胸部デジタルX線(DR)検査機器の開発を手がける中国企業「視見科技(Imsight Technology)」は、新型コロナウイルスの感染爆発を受け、肺のCT画像診断を補助するAIシステムを開発した。膨大な画像読み込みによる深層学習で、ベテラン医師並みの読影能力を持たせ、2月に実施した試験では、99%以上という高精度の症例判別実績を上げた。AIを活用した画像診断領域では豊富なデータを読み込むことで、中国が世界の先端を走っている。
視見科技がAI活用による肺の画像診断プロジェクトを立ち上がったのは春節(旧正月)を前にした1月20日。春節期間中にアルゴリズムの原型を構築し、春節明けにデータトレーニングを開始。2月24日には早くも広東省深圳市の深圳第三人民医院で試験および精度検査を実施、3月17日に正式にシステムを市場に投入した。
AIなら10~20秒で読影できる
現在は深圳市内の2カ所の医療機関で胸部CTに導入されている。視見科技のAIシステムは新型コロナウイルスの感染疑い例を検出するとすぐに罹患部位を特定、必要な定量データ各種の分析を行う。1日当たりのべ600人分の画像を処理し、画像1点当たりわずか10~20秒で読影を完了するという。新型コロナウイルス関連の症例検出では99%以上という高精度を叩き出している。
AIは知見共有の遅れを解決する
臨床医学は経験が物を言う。画像診断科の医師は長年にわたり数多くの画像を読影することでようやく精度の高い診断を下せるようになるが、新型コロナウイルスなど突然パンデミックに至った新興感染症の場合は医師間で知見の共有するのが困難で、診断能力の向上に遅れが生じる。
AIの場合は膨大なデータを用いた迅速なトレーニングが可能で、画像の特徴を抽出し、読影経験をみるみる蓄積していく。短期間では実際の病例を多くは経験できない医師に対して診断の補助を行い、突発的な事態における知見共有不足を補えるのだ。AIシステムはより効率的でより正確なスクリーニング結果を提供することで、国全体における医療人材の不足やリソース分配の不均衡を解決できる。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、メディテック系の企業は大々的に事業化に舵を切った。本来であれば顧客へのアプローチも長い時間をかけて進められるものだが、検査需要の急増により、これらの企業が手がけるAI製品は短期間で実用化に進んでいる。遠隔医療、インターネット医院、AI検温システム、オンライン経由の医薬品配送などが一例だ。
AIを活用した画像診断領域で頂点に立つ中国
視見科技の肖翔COOは、中国における画像関連AIの成長速度は世界一だと述べている。そもそもの中国市場が大きいこと、つまり画像データの蓄積数が多いこと、データ量もデータ源も豊富であることがその第一の理由だ。さらにデータアノテーション(AIが学習しやすいようデータにパターン認識につながるタグを付ける作業)を行う医療人材やコストにおいて、中国は欧米より比較的優勢にあるというのが第二の理由だ。加えて中国の医用画像市場が約30%のペースで成長する反面、放射線科医師は年4%の増加に留まっており、医療の発展に不均衡が生じ、地域によっては深刻な需要を抱える状態となっているのが第三の理由だ。また多くの中国企業がスピーディーかつフレキシブルに動ける点、中国が国家戦略としてAIの発展に力を注いでいる点、政策による後押しがある点が理由として挙げられる。いずれも業界の発展に有利な条件となっているのだ。
公共医療分野全体に関していえば、AIが大規模に活用されるにはまだ道は遠い。
医用画像のAI製品は結節影を検出する肺CT関連に集中しており、その後胸部DRや骨折、脳卒中、マンモグラフィなどに拡大していったが、やはり最も広く活用され、機能的に最も成熟しているのが肺の診断だ。より多くの疾病に導入され、効果を高めるには改善の余地は大きい。また関連当局による認証体制や臨床における運用規定、医療保険の適用など、政策面での進展も当面は時間がかかりそうだ。
(翻訳・愛玉)
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