TikTok本土版「抖音」がライブコマース事業を強化、6兆円規模のブルーオーシャンに挑む

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中国証券大手「光大証券(Everbright Securities)」の集計によると、2019年の中国のライブコマースのGMV(流通取引総額)は4400億元(約6兆6000億円)で、うちアリババグループの「淘宝(タオバオ)」は2000億元(約3兆円)、ショートムービプラットフォームの「快手(kuaishou、海外版は「Kwai」)」は1500億元(約2兆2500億円)、同じくショートムービプラットフォームの「抖音(douyin、海外版は「TikTok」)」は400億元(約6000億円)だった。第3位の抖音と第2位の快手の差は大きく、抖音は差別化によって快手に離されまいとしている。

ライブコマースの成長は非常に速く、抖音には淘宝や快手のように時間をかけて人気配信者を育てる余裕はない。そこで同社は、著名な経営者に配信してもらうという戦略をとった。

抖音が求める配信者は

感染症の影響により、中国では数多くの大手会社の経営者が自らライブ配信を開始した。これはライブコマースのためだけではなく、動画プラットフォームである抖音にとってコンテンツをより豊かにするという意味合いもある。例えば、セコイア・キャピタル・チャイナのパートナーである沈南鹏氏とブラックストーン・グループの会長スティーブン・シュワルツマン氏の対談、ジャーナリスト出身の経営者羅振宇氏のおすすめ書籍の配信などは、これまでの抖音に欠けていたタイプのコンテンツだ。

経営者からすれば、抖音のようなプラットフォームでの配信において、重要なのは売り上げよりもマーケティング効果である。大手家電メーカー「格力電器(Gree Electric)」の会長董明珠氏の配信は、通信遅延などの問題もあり、売上高は23.25万元(約350万円)と振るわなかったが、視聴者が431.78万人もいたことで、マーケティングの専門家からは「実質2億元(約30億円)の宣伝効果がある」との声も出ている。

抖音は今後も有名人に配信してもらい、それと並行して一般の配信者のなかからポテンシャルのある人物を選定し育成することも続けるだろう。抖音の運営力をもってすれば、短期間でトップクラスの配信者を数名育成することも不可能ではない。

しかし、それだけで抖音がライブコマースにおいて快手を逆転できるとは限らない。これまでトラフィック中心のビジネスをやってきた抖音はサプライチェーンが弱く、この点での改善がなければライブコマースも難航するだろう。

抖音と快手のライブコマース競争の激化

抖音と快手の対決は、大きなものだけでも、アプリのユーザー数、ライブ配信の視聴者数、海外事業と3度起きている。今回のライブコマースでの対決は4度目になるだろう。

抖音はこれまで、自社でライブコマースを手掛けるのではなく、あくまでプラットフォームとしてトラフィックを提供することに注力してきた。その結果、快手のライブコマース戦略より1年遅れてしまったのである。経営者による配信、ライブコマースのインフルエンサーとの契約、サプライチェーンの整備などは、すべて2020年になってから始まった。

今回の戦略により、抖音と淘宝の関係が変わる可能性がある。あるメーカーの関係者は、抖音が自社のライブコマースを拡大させるために、配信中に淘宝のリンクを貼ることを制限するのではないかと懸念している。

抖音の戦略の変化は、ライバルだけではなく、出品をする各社にダイレクトに響くものである。そのため、同社のライブコマースにおける一挙手一投足に注目が集まっている。

総じて言えば、抖音の強みは効率の良さと運営力であり、人気配信者を育成するのは難しくないだろう。しかし、ライブコマースは配信者と視聴者の間により強い信頼関係を必要とし、これは一朝一夕にして形成できるものではない。そのため、抖音はSNS機能を強化するようになっている。しかし、SNS機能の点でも、快手は2017年からすでにライブコマースを見据えた強化を始めていたのである。

それでも、トラフィックで勝る抖音が、配信者、MCN(マルチチャンネルネットワーク)、販売者にとって魅力的なのは変わらない。それぞれに強みを持つ抖音と快手の対決は、2020年に多くの見どころを提供してくれるだろう。

(翻訳:小六)

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