画像認識自動損害査定や顔認証融資 金融業のAI活用が進む

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金融業には、リスク管理(リスクが複雑で詐欺が多い)、顧客獲得(接触頻度が少なく収益化が難しい)、サービス(モデルが重く顧客体験が劣る)、運営(効率が低くコストが高い)という4つのウイークポイントが存在する。

リスク管理では、一つ一つの取引に問題がないようにみえても、複数の取引をまとめると詐欺のリスクが生じる。金融業では全てのセクションにリスクがあるため、それを人だけで管理しようとすれば判断の誤りや遺漏が発生しやすくなる。

顧客獲得において、実店舗、電話・ショートメッセージ、オフラインセールスといった従来の金融マーケティング手法では標準化された商品を全ての顧客に提供していたが、このやり方はコストが高い上に顧客との接触回数が少なく、ユーザー体験も改善の余地が大きい。どのように顧客のニーズを理解し、顧客のロイヤルティと成約率を高めるかが難しい問題となっている。

サービスについては、消費者の行動とニーズが絶えず変化しているため、従来の金融サービスを様々なシーンに応じて再構築する必要がある。また、人口ボーナスが減っていく中、従来の人によるカスタマーサービスは、研修コストの高さ、人材流動性の大きさ、サービス効果のばらつきなどの問題を抱え、サービスの質と顧客体験に影響を及ぼす。

運営において、金融業には大量の人的作業がある上、単純な繰り返しが多いため、運営コストを下げて管理と運営の効率を上げることが急務となっている。例えば、中国保険最大手「中国平安集団(Ping An)」では、効率が1%上がれば利益が毎年100億元(約1500億円)以上増えるという。

どのようにITを活用して金融業のウイークポイントを解消するのかについて、プロである中国平安集団チーフサイエンティストの肖京氏に話を伺った。

ITを活用した金融業ウイークポイントの解消

製品やサービスの質と生産効率を上げるカギはスマート化だ。AI(人工知能)を使って生産プロセスを再構築すれば、効率、効果、ユーザー体験の向上およびリスクとコストの低減を実現できる。

「平安脳(Ping An Brain)」スマートエンジンの構造

経営のスマート化は中国平安集団の重要な戦略で、その第一歩として基盤となるビッグデータプラットフォームの構築に取り組んだ。中国平安集団は1年近くをかけて、1万7000を超える営業部門のデータを統合すると共に、スクリーニング、更新、品質管理、標準化、マスキングなどを自動で行うメカニズムを構築し、厳しい権限管理やプライバシー保護などのルールを確立。続いて自動車、企業、医療、教育、農業などの分野に関するナレッジグラフを再構築した。これはインターネットやハイテク業界と比べて、従来型の業界にとって最も大きな障壁になる。最後に改めて業務のニーズに着目し、技術を業務に適合させることで、主要事業の金融、医療、スマートシティを包括的にカバーするスマートソリューションを構築した。

AIの応用例

生体認証:顧客の顔、声紋、唇の動きなどが銀行と保険の口座開設時に行う録音や録画に応用され、担当者による顧客の誤認防止と本人確認に使われている。

小口融資:中国平安集団は840カ所余りの店舗を展開し、融資の際には各店舗がデフォルトリスクを判断していた。今では、顔認証と微表情分析による所要時間3分ほどのオンライン融資が可能となり、こうしたビッグデータを活用したリスク管理でデフォルト率も大きく下がった。

企業向け投資と与信:基礎データ、財務状態と評判、企業間の投資関係という3種類のデータをもとにナレッジグラフを作り、債券デフォルトモデルと投資リスク管理モデルを確立した。ほとんどの企業は6~9カ月前にリスク予測が可能となっている。

画像認識による自動損害査定:中国平安集団は、自動損害査定を大規模に展開する唯一の企業だ。自動車オーナー向けアプリ「好車主」を使って、事故の際に画像をアップロードすれば数分で損害賠償額が確定し、数千元(数万円)以下ならわずかな時間で全ての手続きが完了する。バックグラウンドには様々な車種や損害賠償に対応するナレッジグラフが必要となる。また、自動車保険は薄利な上に詐欺も多いが、詐欺防止システム導入後に数十億元(数百億円)のコストカットに成功した。

その他に、例えば大型訴訟では証拠が十分かをAIが判断している。また、中国平安集団は12万5000人のカスタマーサービススタッフを抱えていたが、一部サービスについてはアシスタントロボットが自動対応を行っている。
(翻訳・神戸三四郎)

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