バイトダンスが「Letsign」で電子契約市場に参入 アリババ、テンセントへの猛追なるか

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バイトダンスが「Letsign」で電子契約市場に参入 アリババ、テンセントへの猛追なるか

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テックジャイアントの戦いは電子契約市場にまで及んでおり、2000億元(約3兆円)以上の市場ボーナスを食い尽くそうとしている。

36Kr傘下のメディア「Tech星球」は4月下旬、バイトダンス(字節跳動)がオンライン契約プラットフォーム「電子牽(Letsign)」をローンチしたとの情報を独自入手した。「電子牽」は電子契約システムであり、分かりやすく言えば、暗号技術を通じ、電子文書に対して電子形式での署名を行うものであり、賃貸契約、提携契約、調達契約、労働契約などの業務に対してオンライン署名サービスを提供する。

公式サイトの「デジタル証明書申請契約」の情報によれば、同プロダクトは「北京矩陣分解科技有限公司」の開発による。また中国の企業情報サイト「企査査(Qichacha)」で検索すると、同社の実質的支配者は恐らくバイトダンスの張一鳴氏であることが分かる。

「電子契約は企業の事務手続におけるインフラだ。アリババは『e簽宝(esign)』に、テンセントは『法大大(Fadada.com)』に投資済みのほか、ニュースサービス企業『今日頭条(Toutiao)』は自社でシステムを立ち上げており、大手企業が続々と参入している。電子契約市場のポテンシャルの大きさをうかがわせる」。バイトダンスの参入に関し、買収されたある電子契約関連企業のCEOはこのように語った。

バイトダンス版の電子契約とは

Tech星球が電子牽を実際に体験してみると、現時点でウェブ上およびモバイル端末での使用が可能で、独立したアプリは存在しない。

ユーザーは公式サイト(www.letsign.com)でアカウントの登録を行うと、電子牽の操作バックエンドシステムにログインできる。実名認証が必要だが、「個人認証」または「企業認証」を選択できる。

画面トップまたは画面右側の「発起簽約」ボタンをクリックすると、契約書を発行する画面に進む。契約書の発行は、文書のアップロード、署名者側情報の入力、契約箇所の指定、発行者側の署名(任意)のステップに分かれている。

発行者側は記入済みの電子契約のリンクを相手側の携帯電話にショートメッセージで送信する。署名者側はリンクをクリックして実名認証などの一連のステップを踏むと、電子契約の署名が完了する。

注目すべきは、企業または個人事業主が電子契約に署名する際、企業法人または代理人の実名認証がなければ契約上の操作ができない点だ。

発行者側および招待された署名者側は、いずれも電子牽のバックエンドシステムにログインでき、「文書の管理」から関連する文書を閲覧できるようになっている。

テンセントとアリババは早々と業界に参入

中国・北京のコンサルティング会社「易観(Anlysys)」が昨年10月に発表した「中国電子契約市場テーマ分析2019」のリポートによれば、電子契約市場はまさに急成長の段階にある。2018~19年の成長率は129.9%に達しており、2021年には100億元(約1500億円)を突破すると見られている。

テックジャイアントともなれば、EC、広告、金融などの事業において複数の関連企業との契約が必要になる。デジタル化された電子契約は紙面の契約に比べ、スピードや安全性などの強みがずばぬけている。このため、大手企業が次々と電子契約事業に参入しているのだ。

2018年に開催されたアリババ主催のテックイベント「雲棲大会」において、「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」とe簽宝は「螞蟻ブロックチェーン契約」を共同で発表した。これはブロックチェーンを基層核心技術とし、新たな信用メカニズムを創出しようとするものだ。これに続き、アリババ傘下のアリババクラウド、企業向けコミュニケーションツール「釘釘(Dingding)」および「支付宝(Alipay)」がいずれもe簽宝と提携した。

e簽宝は翌年の2019年、アント・フィナンシャルの主導したシリーズCでの資金調達に成功した。これによりe簽宝はアリババ系列会社の仲間入りを果たしたことになる。また3月には、テンセントが投資した電子契約関連企業「法大大」もシリーズCで資金調達を実施。同社の昨年第1四半期のプラットフォームユーザー数は1億6000万人を超えており、1日平均署名件数は延べ2000万回を突破している。

注目すべき点として、今年1月31日~5月1日、法大大はバイトダンスのオフィスツール「飛書(FEISHU、海外版はLark)」と協業し、全国のユーザーに1000件分の電子契約利用権を提供し(2月は飛書の全企業ユーザーの使用料を無償化、3月1日~5月1日は各企業ユーザーにつき100件分の電子契約を無償化)、さらに法的保障サービスも実施した。

今後、バイトダンスが立ち上げた電子牽と法大大がどのような協業を進めるかは分からない。

バイトダンスのエコシステム内に存在する大量のコンテンツ制作者、および同社が現在力を入れている「抖音(Douyin、海外版はTikTok)」のMCN(マルチチャンネルネットワーク)とEC事業者は今後、電子牽を利用してバイトダンスとの契約を行うことも可能だ。飛書の電子契約業務も、企業ユーザーの業務契約の電子化を支援することになるだろう。

電子契約サービスには強い波及効果があり、ユーザーは電子契約を通じて相手側との間で事務的な契約締結を行うことで、ビジネスプロセス全体を簡略化できるだけでなく、ユーザーの使用習慣を育成することもできる。電子契約という概念を受け入れることは、トップ企業による独占状態をも意味するのだ。

人的資源・社会保障部弁公庁は今年3月4日、「雇用者と労働者が協議により合意している場合においては、電子形式による書面の労働契約の締結を採用することができる」との関連公告を出した。政策レベルでの支持により、電子契約市場全体がさらにオープンとなり、今後の見通しもさらに明るくなった。大手企業の同分野への参入も加速すると考えられる。

業務の電子化によるモデルチェンジが加速するにつれ、電子契約がビジネス上で常態化する傾向が強まるだろう。巨大なビジネスチャンスは多くの企業の業界参入を誘うと思われるが、新参者のバイトダンスは果たして電子牽で一発逆転できるだろうか。

※アイキャッチ画像はバイトダンス公式サイトによる

作者:Tech星球、陳橋輝

(翻訳・神部明果)

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