米国で窮地のTikTokに救世主か、ディズニー動画事業トップが新CEO就任へ

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ショートムービーアプリ「TikTok」を運営する中国のバイトダンス(字節跳動)は先月19日、同社の新たなCOO兼TikTokグローバル事業部のCEOとして米ウォルト・ディズニー社の動画事業を統括してきた前SVPのケビン・A・メイヤー氏を抜擢した。同氏は今月1日付で着任している。

メイヤー氏はTikTokのほか、インド向けのSNSアプリHelo、音楽事業、ゲーム事業などを担当する。また企業開発、セールス、マーケティング、広報、セキュリティ、ガバナンスなどバイトダンス社の一部の海外業務を受け持つ。今回の人事はバイトダンス社の国内事業には一切影響しないという。

着任後、メイヤー氏がすぐさま着手すべき課題は二つある。一つは米上院議員らが今年3月、政府職員が業務で使用する全端末にTikTokのインストールを禁止する法案を提出した件への対応だ。上院議員のジョシュ・ホーリー氏はツイッター上で「TikTokの新任CEOの意見を聞くのが楽しみだ」と好戦的な投稿をしている。もう一つは、「2020年中にTikTokの事業化を達成する」という目標だ。中国のニュースメディア晩点(LatePost)の報道によると、売上高75億元(約1100億円)を目指しているという。メイヤー氏は将来的にTikTok以外にも、海外向けプロダクト全般を率いることになるだろう。

米国で布陣固めるTikTok

モバイルアプリのマーケティング調査を手がける米SensorTowerは今年4月に発表した報告書の中で、TikTokのダウンロード回数が累計20億回を突破したとしている。今年第1四半期だけでも3億回を超えており、世界中のアプリで最高値を記録した。

バイトダンスがこれまで海外事業で展開してきた製品リリース戦略はいずれも正解だったが、それでも万能というわけではない。

急速な成長は、米国の規制当局による圧力が強まる結果になった。前出のTikTokインストール禁止法案も然りだ。それ以前にも複数の米上院議員が国家の安全保障を理由にTikTokの持つ脅威を調査すべきと訴えていた。ホーリー上院議員は先月19日付のツイートで「TikTokはこれまで公聴会への参加は不可能だと主張してきた。経営幹部が全員中国在住だからだという。しかし6月からはメイヤー氏が米国内にいる。彼はこれまでの疑問に正面から答えなければならない」としている。

バイトダンスがさらなる前進を目指すなら、これは必ず超えるべき壁だ。

バイトダンスはTikTok事業において、メイヤー氏以外にもこれまで多くの幹部や従業員を米国で採用し、業務を展開すると同時にコンテンツの内容審査も進めている。昨年はYouTubeでクリエイターのリサーチや育成を統括してきたバネッサ・パパス氏を迎え、TikTok米国事業のGMに任命、プラットフォームの規約関連を一任している。今年1月にはマイクソロフトでコーポレート・バイスプレジデント(知的財産担当)を務めてきたエリック・アンダーソン氏をバイトダンスのグローバル法務顧問に、続く4月には動画配信サービスHuluでブランドマーケティングのVPを務めたニック・トラン氏を北米マーケティングのトップに就けた。

TikTokの急成長はフェイスブックの警戒心を煽ったようだ。昨年10月に流出したフェイスブックの社内会議の音声ではTikTokの急伸に言及されており、TikTokを同社のライバルと位置付けていることがわかった。自身が持つリソースをかき集めてTikTok同様のプロダクトをリリースし、ライバルの勢いを阻止しようとしていることもわかっている。フェイスブックもかつてTikTokと同じくデータの安全性やプライバシーを問題視されたことがあるが、フェイスブックを率いるマーク・ザッカーバーグ氏も、TikTokを率いるバイトダンスの張一鳴氏もこうした問題に対し、自社はテクノロジー企業でありメディア企業ではないとの立場を表明している。

張一鳴CEOは多くの時間を米国で過ごすようになっている。今年3月にバイトダンスが組織再編を行った際には「バイトダンスのグローバルCEOとして、今後は時間もパワーも欧米その他のマーケットに割いていく」と述べている。

将来はユーザーの半数超を海外在住者に

メイヤー氏はTikTokやHelo以外に音楽やゲーム事業も担当することになる。米ニューヨークタイムズによると、同氏はまずゲームおよび音楽事業の可能性に着目しており、TikTokのような具体的なアプリのリリースは急いでいないようだ。

Heloはインド向けにリリースされた現地語のSNSアプリで、「インド版ツイッター」といえる。しかし、インターネットの発展自体が遅れているインドでは、最初はテキスト・画像投稿サービス、次は動画投稿サービスといった順序を踏むことなく、一足飛びにショートムービーとテキストが共存するプラットフォームが世に出た。Heloのライバルはインド最大のSNS「Share Chat」で、昨年にシリーズDでツイッターなどから1億ドル(約110億円)の出資を受けている。

従来の「バイトダンス式」ならば大々的に資金を投入し、急速に1000万規模のDAU(デイリーアクティブユーザー)を獲得することが王道だ。しかし、インド市場でこの戦法がある程度の成果を示すのはユーザーデータの蓄積や影響力の拡大に留まる。インドでは広告市場そのものが未成熟なため、広告で「ガッツリ稼ぐ」というわけにはいかないのだ。

張CEOは2016年時点ですでに「グローバル化が将来のコア戦略の一つになる」としている。2017年にはショートムービーのコミュニティ「Flipagram」、チーターモバイル傘下のニュースアグリゲーター「News Republic」を買収。2018年には約10億ドル(約1100億円)でリップシンク動画アプリ「Musical.ly」を買収、TikTokに統合した。そのほかニュースアグリゲーター「今日頭条(Toutiao)」を「TopBuzz」として、ショートムービーアプリ「西瓜視頻(Xigua Video)」「抖音(Douyin)」「火山小視頻(Huoshan Short Video)」をそれぞれ「BuzzVideo」「TikTok」「VigoVideo」として海外でもリリースしている。

張CEOは将来的にバイトダンスのユーザーの半数以上が海外ユーザーになると予想しているが、これを実現するにはまだまだだ。同氏は今年3月、バイトダンスはすでに30の国、180の都市に拠点を構え、合計6万人以上の従業員を抱えるグローバル企業だと明かしている。年内には全世界の従業員数が10万人に達する予定だ。今年はより多くの海外向けプロダクトを世に出し、他社を買収するかインキュベートさせるかして自社のプロダクト布陣として取り込んでいくだろう。

その最前線を走るのがTikTokだが、その戦略はすでに変化してきており、製品リリースに替えて運営の質で事業を駆動させる方針を採っている。その一つの表れとして、昨年のバイトダンスは海外製品の投入ペースを緩めた。ダウンロード数20億を超えたTikTokにしても、製品の最適化を図り運営を洗練させることが現段階ではより賢い選択といえる。

新たにバイトダンスのCOOとして着任したケビン・A・メイヤー氏が対峙しているのは、米国で窮地に置かれるTikTokを救うことだけでなく、バイトダンスが温め続けているグローバル化の青写真を現実のものにするという課題だ。
(翻訳・愛玉)

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