ネット通販大手「京東」が不動産販売事業に乗り出す、その本音は

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EC大手の中国「京東集団(JD.com)」が先月22日、いよいよ不動産事業に乗り出した。初物件の所在地は北京市房山区の中駿雲景台。50万平方メートルに及ぶ敷地に立ち並ぶヨーロピアンスタイルの18棟のマンションには1089軒が入居可能で、価格はすべて300万元(約4500万円)以下とお得だ。

オンラインによる不動産取引は今に始まった話ではない。昨年11月11日「独身の日」の特別セールでは、アリババも京東も競うように特価の物件を売り出した。またインターネットと無縁だった不動産業者も有名ライバーの人気にあやかりオンライン販売に参入してきた。

果たして何百万元もする不動産物件が、家電製品や日用品のようにECベースに乗るものなのだろうか。京東が今回不動産に手を出したのは、物件を売りたいというシンプルな理由だけなのだろうか。それとも別に意図があるのだろうか。

京東の本音

京東が不動産取引を始めたのは、6月18日の創業記念特別セールのための伏線だった。京東小売事業部の徐雷CEOは創業記念日を前に初めてライブでお目見えし、もともとの価格の61.8%(創業記念日の6月18日にかけている)で住宅を購入できる抽選会について発表した。

京東提供

京東は不動産販売にあたり、オンライン内見などの物件情報提供に加え、「京東のおすすめ物件」、特別優待、オンライン予約、手付金の無条件返還などのサービスを提供する。

とはいえ、不動産物件の販売は京東の真の目的ではないようだ。わずか10分のライブ出演の中で徐雷CEOはしっかりと宣伝を忘れていなかった。「家を手に入れたあなたは、きっとインテリアをどうしようかと考えていることでしょう。京東はお馴染みの家電だけでなく、家具やインテリアのお手伝いもします」。家が売れればそれに伴い、家電製品、家具、装飾など需要が生じるのは明らかだ。

不動産に関連する業務はすべて京東のプラットフォームを利用して行われるため、傘下のフィンテック企業「京東数字科技(JD Digits)」との連携が一層必要になる。資金管理を行うシステム「京東小金庫」を活用し、抵当・貸し付けの機能充実などが必須となるからだ。両者のコラボは互いにとって大きなメリットがある。

共同購入サービスの「京喜(Jingxi)」とお買い得商品を手間いらずで購入できるアプリ「京東極速版」がいずれも地方都市をターゲットにしていることで互いに潰し合ってしまっている状況下、今回の不動産事業への参入では改めて一級都市と二級都市の高所得層を取り込み、盛り返そうとする意図が明らかだ。

ユーザーを広げ高単価商品を販売

例年第1四半期はECの閑散期に当たるが、京東は今年に入って2500万人ものアクティブバイヤーを獲得した。3月時点における年間アクティブバイヤー数は3億8740万人となり、前年同期比24.8%増となった。しかし顧客数は増えたものの、一人当たりの消費額は減少を見ている。受取先の住所から分析すると、全ユーザーのうち6割以上を占める三級から六級都市(低所得層市場)のユーザーは価格に敏感で、高額商品には手を出さず、ECによる購買は低単価製品が多くなるため、GMV(流通取引総額)への貢献度は小さい。

データソース:京東、智氪研究院(2020年5月15日現在)

(2019年各四半期のGMVは年間GMVから推算)

京東はアクティブバイヤーを呼び戻して低所得層市場の活性化を図るとともに、高単価商品の購買欲をそそることで高所得層のバイヤーを獲得しようとしている。これは、新興EC「拼多多(Pinduoduo)」がアップルのスマホや乗用車を売り出すことにより一級、二級都市のユーザー開拓をしているのと同じ手法だ。京東の狙いは単に不動産を売りたいというだけのものではなかったようだ。

(翻訳・近藤)

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