ネット配車車両のリアウィンドウ広告に特化 屋外広告の巨大市場に切り込む新興企業

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

ネット配車車両のリアウィンドウ広告に特化 屋外広告の巨大市場に切り込む新興企業

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国における屋外広告の市場規模は2012年以降、安定的に成長しており、18年には1585億元(約2兆4000億円)、19年には1742億元(約2兆6000億円)に伸び、21年には2065億円(約3兆円)に達する見通しだ。調査会社「iiMedia Research」が明らかにした。

ネット配車サービスが運営する車両への広告掲出を手掛ける「杭州邁鋯科技(Maihao Keji)」は2017年に設立され、現在はライドシェア界大手の「曹操出行(Caocao Chuxing)」および「T3出行(T3 Mobility)」と戦略的提携を結び、両社が複数の都市で運営する車両に広告を掲出している。また、すでにエンジェルラウンドで「金庫資金(KYMCO Capital)」から資金を調達している。

T3出行の車両のリアウインドーに杭州邁鋯科技が掲出した広告

同社の広告主は日用品や不動産、電子商取引(EC)などの分野に集中しており、売上高の8割以上をこれらの広告主に依存している。今後は既存の広告主だけでなく、中小企業の広告出稿ニーズに注目していくとしている。また、広告業界に詳しい人材も抱えているため、広告業界における知識や経験、業界団体を利用するほか、広告による提携企業の募集などを通じて広告主を開拓していく方針を示している。

同社は現在、広告掲出を主な収益源としている。最高経営責任者の呉迪氏は、同社の製品は一般的な屋外広告と異なり、インターネット広告の特性を兼ね備えていると強調。広告ディスプレーを設置したネット予約車の台数が一定の規模に達すると、顧客行動と消費市場に関するデータが大量に蓄積され、業界分析・予測と広告主の方針決定に決定的な役割を果たすようになる。同社は時期を見て、企業へのコンサルティングやデータサービス、道路交通計画の管理など新分野にも進出する方針だという。

呉氏は、同社は一貫してスリーボックスカーに設置する広告ディスプレーの構造設計とコンテンツ開発に特化しており、すでに製品は世代交代を3回実施していると説明。全国300万台のネット予約車やタクシーでスリーボックスカーが採用されているため、同社が成長する余地は大きいと自信をのぞかせる。

タクシーなどに広告を掲出する交通広告媒体には、リアウインドー広告と車体広告の2種類がある。邁鋯科技と同様、リアウインドー広告に特化した企業「碧虎科技(BE TIGER)」は、2018年に約1億元(約15億円)を調達している。車体広告に特化した企業には「奔跑宝(BPB)」や「215伝媒」などがある。

呉CEOは、リアウインドー広告と車体広告には、それぞれの強みがあると分析する。車体広告の最大の長所は、終日広告を見てもらえることだ。ただし、一般的には3カ月からの契約となるため、広告主のニーズに素早く反応し、広告を迅速に交換できないという難点がある。杭州邁鋯科技は、デバイス開発という大きな強みを携えて、リアウインドー広告に進出した。呉CEOは、販売を手掛けていた調光フィルムが屋外広告媒体に応用できると考え、広告媒体事業を立ち上げたという。リアウインドー広告はコンテンツの形式も豊富で、位置情報サービスの利用も可能なため、一定の商圏に向けて的確な広告投入ができる上、コンテンツの交換も簡単だ。

従来のLEDを利用した車載広告は、設置するための部品が見た目などを損なう上、運転の死角ができやすく、安全面の問題もあった。邁鋯科技のウインドー広告は、関連機器がヘッドレストの内側に設置されるため、車両を改造する必要がなく、美観も損ねない。車種やスマート化の程度によって異なるが、設置コストは数千元(数万円)程度となっている。

広告業界は変化が激しい業界だ。ここ2年はマクロ経済の影響により「分衆伝媒(Focus Media)」など屋外広告業界大手の成長が鈍化している。しかし呉CEOは、屋外広告市場全体のパイは十分大きく、業界は2015年から18年にかけてのマイナス成長を経て、19年からは好調に転じていると指摘。都市のイメージアップのために看板などが撤去され、従来型の屋外広告媒体が一層少なくなる中、IT技術に基づく新たな媒体が台頭し、屋外広告市場のパイを取り合う形になるとの見方を示す。

今年に入って以降、景気後退と新型コロナウイルス感染症の影響により、媒体のターゲット設定にはより高い正確性が求められている。呉CEOは、同社は初心を忘れず流れに逆らわず、販売ネットワークの構築と広告製品の開発に注力していくとした上で、感染症流行の終息後には広告出稿が増えるはずだとの見通しを示した。邁鋯科技の広告ディスプレーを設置した車両は6月22日時点で645台。最初の事業拡大計画として、浙江省杭州市、江蘇省南京市、重慶市の3都市で約1万台への設置を目指している。同社は現在、設備投資と主要十数都市への進出計画に充てるため、シリーズAでの資金調達を進めている。呉CEOによると、同社は広告媒体および車両リソースを持つ戦略投資家を求めているという。
(翻訳・田村広子)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録